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 ゴブリン──ゲーム、RPGに出てくる雑魚キャラクター。


 お父さんの話を聞かずに森に入っていたらそんな考えが頭を横切り、確実にテンション上げながら近づいていた。


『いいかフミナ。もしモンスターに逢っても絶対に近付くな』

『どーして?』

『ここのは他の所と違って無闇やたらと襲ったりはしない。そいつらが決めている所まで近付かない限りは、な。だが、近付きすぎて敵だと思われたら……』

『……ゴクッ』

『喰われてしまう』

『えっ』

『そんなことが昔あったらいぞ。だから、絶対に、ぜーたっいに近付かないこと』

『あ、あい!!』


 そんな会話を森に入る前にして、初めてゴブリンに逢ったときに改めて感じた。この世界は、前世ではゲームだったかもしれない。でも今は、私にとって現実なのだと。



            *



 ……どーしよー。お父さんにはもし逢ったら目を合わすなって言われてたのに……目が合っちゃってます。そりゃもうガッツリと。さらに後から二体のゴブリンが現れまして……。落ち着け私。ちゃんと出逢った時の対処法も言われただろ。

 一歩、一歩と少しずつ下がっていく。ゴブリンと目を合わせたままで。


 逢ったときの対処法その一、目が合った場合絶対に反らさずゆっくりと後ろに下がって距離をとる。


 一歩ずつ下がっていき背中に何かが当たった。多分木に当たったんだろう。ゴブリンとの距離が開いたからよしとしょう。持っていた植物図鑑を抱き締め、ゴクリと唾を飲み込む。


 逢ったときの対処法その二、距離が大分開いたらその場で止まり相手が去るのをじっと待つ。この時、自分から目をそらさないこと。


 じーっとゴブリン達を見つめる。後から来た二体は一度こっちを見たがすぐに離れていく。最初に目が合ったゴブリンは、私をじーっと見ていたが興味を無くしたのか、目をそらし離れていく。ほっ、よかった。

 ……ん、待てよ? この森に住んでいるのならドラインクロル草がどこにあるのか知っているのでは。……よし!


「ま、まって!」


 覚悟を決めゴブリン達を呼び止める。ゴブリン達は言葉に反応して振り返る。聞こえた! 走ってゴブリン達に近付こうしたのだか、


「ぶっ!」


 転けました。そりゃあもうどこかのアニメ見たく顔面から。転けた拍子に帽子が脱げ、風に持っていかれた。……痛い。でもここで泣いたらゴブリン達が逃げてしまうかもしれないから泣かない。涙目になりながら、立ち上がりゴブリン達に近づく。

 ゴブリン達が自分達が持つ武器(二体は棍棒、一体は弓)に手を掛けようとしたところで立ち止まる。これ以上近付こうしたら確実に餌になってしまう。手に持っていた植物図鑑を開いてドラインクロル草のページを開く。


「こ、このやくちょうのあるばちょ、ちりませんか? おにいちゃんがかぜひいちゃって、やくちょうをさがちていまちゅ。ばちょをちっているのでしたらゃ、お、おちえてくだちゃい!!」


 そのページをゴブリン達に見せたまま深々と頭の下げた。ゴブリン達が知っているかはわからない。怒らせて食べれてしまうかもしれない。恐いし、体が震えてる。自分でも自殺行為だとわかっている。でも、兄さん達を助けたい。

 頭を下げたまま待っていると、ゴブリン達の話し合いが始まった。グオグオとモンスターらしい声で話しているので、何言ってるのかわからない。すると図鑑を引っ張る感じがしたのでとっさに離しす。頭は下げたまま。ゴブリン達の声が聞こえなくなったため心配になってきた。……もしかして知らない?

 心配になりながら待っていると、トントンと肩を叩かれた。ゆっくり頭を上げるとゴブリンがドアップがあった。


「ふわっ!」


 びっくりしたー。目の前に居たから二、三歩下がってしまったよ。こえーよ! 目の前に居たゴブリンが前に居たゴブリン達と合流し、私を見て顎をくいっと動かした。これは……。


「ついてこい、と?」


 察したと判断したのか、ゴブリン達は進んでいく。ちょ、ちょいまち! はやっ! 急いでついて行かな置いて行かれる! 走って行こうとしたら足がもつれて転けかけた。っと、あっぶねー。また顔面からいくところだった。気合を入れさぁ行こう、としたのだが……。


 いつの間にかゴブリンに俵持ちで担がれておりましす。……あっれーなんでー。その状態のままスピードを上げていく。


「いーやー!」


 コワイコワイコワイ!! スピードめっちゃ出てる! 誰か助けてー!!

 恐いのが勝ちながらも、そのまま目をつぶりスピードと振動に耐えながら覚悟を決める。えぇい、女は度胸! どこへでも連れてけ!!



 走り抜ける度に葉っぱかすれる音が聞こえ、坂を登っているような感じがする。目を閉じたまま、この状態になれ少し楽しんでいたときにピタリと止まった。どうやら目的地に着いたらしい。

 担がれた私は降ろされる。……降ろす時は丁寧だな。ちゃんと足から降ろして立たせてくれた。……不安だ。不安しかない。私の言葉が分かって連れて来てくれたのか、私を食べる為に寝床に連れて来たのか。前者だったら良いんだけど、後者だったら……。あ、つんだ。

 私がビクついていると、肩をトンとされる。ビクっ!! って体がなっしまったのは許して。そのままビクビクしてたらまた、トントンされた。ここまで来んだし……よし、目を開けよう。ゆっくり目を開けてみる。うわ眩しっ。


「うわぁー」


 目の前に広がるのは太陽に照らされ、美しい青い花が咲く花畑があった。

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