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 暑い時期が終わり、少しずつ寒くなっていく中、


「「ゴホッゴホッ」」


 兄さん達が風邪をひきました。






 学校の帰りに偶然雨が降りその中で濡れながら(遊びにながら)帰って来たのが原因で、まぁ、遊んでいたのはトウヤ兄さんだげでトウマ兄さんはそれに付き合わされてしまったのだ。そして案の定、


「「ゴホッゴホッ」」


 二人とも風邪をひきました。今はヤガラシ先生の所に御厄介になっています。


「たく、お前らは」

「ごめん父さん。ゴホッゴホッ」

「トウマは悪くない。俺が悪いんだ、ゴホッゴホッ」

「そう思ってるならさっさと治せ。説教はその後だ」

「「ゴホッゴホッ、はい」」


 お父さんは呆れているが兄さん達をとても心配しているのだ。帰って来た兄さん達を急いでお風呂に行かせベッドに押し込んだのだが、次の日には熱が出だしたので急いで此処までつれてきたのだ。幼い私を一人に出来ないから一緒。


「ホッホッホ、元気過ぎると大変じゃなブラドよ」

「本当に。押し掛けて申し訳ないです」

「よいよい、気にしておらんよ。それにフミちゃんもおることやし少し診ておこうか?」

「はい、よろしくお願いします」

「はい。フミちゃん」

「はーい」


 ヤガラシ先生に呼ばれた私は先生について行き隣の部屋へやって来た。


「はい、そこに座って」


 言われた通りに椅子に座り、ヤガラシ先生が私の前に座る。


「それじゃあ診察するなから、はい、目を閉じてね」

「はい」


 言われた通りに目を閉じ、ヤガラシ先生が「鼻から息を吸ってー、口から吐いてー」の指示通りにしていく。すると胸の辺りが少し温かくなっていく。


 今しているのは魔力診断。この世界の人々は魔力を持っていて赤ちゃんの時に診察して量を見ている。殆どの人は自分にあっただけの量を持っているが、私の場合、普通の子供に比べてとても多いらしい。ただ魔力が多いだけと侮ってはいけない。魔力が多いと体が保てなくなり暴走して消滅してしまうらいし……。コワっ。魔力が少なくても、体が弱く病気にかかりやすくなり怪我もし易くなるらしい。こっちもコワっ。だからこれから悪くならないように時々診察して貰っている。どうしてこんなことが起こるのかは不明で、改善方法も見つかっていないらしい。


 ヤガラシ先生の指示を繰り返していたら胸の辺りの温かさが消えていく。


「はい、もういいよ」


 ふー、やっと終わった。今日も長かった。魔力を診るのは時間がかかるから面倒い。


「うむ、異常はないし安定してるね。よかったよかった」

「あい!! ありがとうございます!」

「ホッホッホ。どういたしまして」


 診断を終えた私達はお父さん達がいる部屋へ戻った。


「どうでした?」

「なに、心配いらんよ」


 その言葉を聞いたお父さんは、ホッとした顔をした。


「よかった」

「そう簡単に暴走は起きんよ」

「そうですが……」

「今は様子を見ようぞ」

「……はい」

「さて、残るはこの二人じゃが……。実は薬を切らしてして今手元にないのじゃ」


 …………なぬ?


「商人が来ているのでは?」

「それが何かの手違いで今日は来てないんだよ」


 今日はこないの。でもこのままにしとくのも……。

 兄さん達が普通の風邪だったから良かったものの、魔風病と言う風邪に似た病気があるのだ。この病気は症状は風邪と同じだが体から魔力が抜けていき十日後には死んでしまうという恐ろしい病気。そしてごく稀に風邪が魔風病に変わってしまうケースもあるそうだ。兄さん達の風邪が魔風病にならない事は検査で分かっているから安心安心。検査の方法は『インベス』と言う魔法を使う。私を診察した時もこの魔法を使ったのだ。この魔法は魔法を使う人にとって使えて当たり前らしい。魔法で治すことも出来るが結構お金がかかる。


「どうしようかのー。材料ならここでも採れるとは思うがワシは二人を見ておかんとな」

「俺が「今日は大事な客がくるんじゃろ?」……そうでした」


 二人は動けない。……ならば!!


「はい!!」


 ここは自分が行くしかないっしょ! と言うより一回森に入ってみたかったんだよねぇ。右手を高らかに上げて行きたいアピール。


「いってくる!!」

「駄目だ」


 ……うん、分かってた。即答させるのは。


「森は危険だ。フミナだけには行かせられない」

「わたしももおにいしゃん、たすけたい!」

「その気持ちは分かるが駄目だ」

「いく!」

「駄目だ」

「いくの!!」

「駄目なものは駄目だ」

「まぁまぁ、落ち着きなさい二人とも」


 ヤガラシ先生が私達の間に入っってきた。


「ブラドよ。君が心配するのはわかるが此処はフミちゃんに任してみたらどうだい?」

「先生!!」

「大丈夫じゃろう。此処に住むモンスターはまだ大人しいほうじゃ。それにフミちゃんは賢い。森の過ごし方を教えたらきっと守ってくれるさ。ギルドに頼んだにしろ速くても明日に材料が届くだろう。でもそれでは遅すぎる。もしもの時はきっと、森の住人達が守ってくれるだろう。だからこそ、此処はフミちゃんに任してみようじゃないか」


 ヤガラシ先生の説得してくれている。良いぞ先生! もっと言って! 


「それにのブラド、一度は一人でお遣いをさせとかないとなのぉ」

「ぐっ、それはそうですが場所が……」

「なぁフミちゃん、“お遣い”、行きたいじゃろ?」

「うん!! おつかい! おつかい!」


 先生ナイス! お遣いで通したらきっとお父さんも折れるはず!!


「ほらほら、フミちゃんも行きたがっておるし、な?」

「…………」


 お父さん、物凄く苦ーい顔をいてため息を漏らした。これは!


「フミナ。ちゃんと、お父さんの言うことを守ってくれるな?」

「うん!! まもる!」

「……ホントのホントに?」

「ほんとのほんとに!」

「……ハァ、分かった」

「わーい!!」


 やったやった! 森に入れるー!


「じぁあ、ワシは必要な材料のリストを作ろうかの。済まないが説明、頼めるかの?」

「はい。分かりました」


 よし!! お父さんの言いつけを守って森へ出発だー!











 前世で大人気になっていた子供が一人でお遣いする姿をテレビスタッフさんがカメラ片手に温かく見守る番組の主題歌を鼻歌しながら、私は森の中を歩いている。


 お父さんからの許可がおり、ヤガラシ先生から貰ったメモと植物図鑑を片手に頭に麦わら帽子をかぶり、背中にはウサちゃんリュック。あ、これは前にガーゼントさんから貰ったリュックです。服装は喫茶店スタイルからお出掛けスタイルに変更。リュックの中身は植物を入れるための瓶とお昼ご飯にと持たせて貰ったサンドイッチ、それともしも怪我をした時に塗る薬が入っている。そして歩く度にチリン、とウサちゃんリュックに付けた鈴が鳴る。この鈴はお父さんが森に入る前に付けた貰った。これがあるとあまりモンスターが寄ってこないらいし。


「あ、あった!」


 今探していたのはアセアフェン草。白に赤の斑点模様をした不思議な薬草。植物図鑑で確認をし、必要な量を瓶に入れていく。植物図鑑曰くこの薬草は熱を下げる効果があるらしい。ふむふむ、なるほど。植物図鑑便利ー。風邪薬の材料であるノスチペ草(咳止め)、リーブメラ草(炎症を鎮める)、ネサラム草(炎症を抑える)は回収出来た。

 よし、後はドラインクロル草だげ。えーとドラインクロル草は鼻水や咳を和らげる効果があり、日の当たる所て育つって書いてあるな。でも此処は森の中、日差しがあまり入らない。もっと奥に行ったらあるかもしれないが、あまり奥に入るなって言われたしなぁ。……仕方ない。


「いこう!」


 此処にないなら探しに行かなければ! 森の奥にレッゴー!!





「ここ、どこ?」


 はい、迷子です。日の当たる場所に生えてた薬草を調べては、違ったら奥へ奥へ入ってしまって此処が何処かわからないです。もう道なんて分かんない。どうしよう、このまま帰れないことになったら……。


「……ぐすっ」


 いかん、最悪なことを考えてしまう。涙を止めないと。袖で目元を拭いていると、ガサッ、と草がすれる音。まさか……。

 ガサガサと草をかき分けながら出てきたのは、全身緑色で角張った顔にピンと伸びた耳、飛び出た鼻に吊り上がった黄色い眼、私より少し小さい体には汚れてボロボロの布を服のように着こなし、腰には武器みたいにな物を身に付けた生き物。その生き物を見た瞬間、サァっと血の気が引いていく。


 私の前に現れたのはゲームに出てくるお馴染みのモンスター、ゴブリンが居た。

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