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0.5

 この世界には、神が存在する。火の神、水の神、風の神など様々な神が存在する。その恩恵受けているサファリドーロ大陸。

 ここはその大陸にある街、ランドル。自然に囲まれ海が近い街。


 ある晴れた日の朝、街の中にある喫茶店のほほん。そのドアが開き、中から一人の少年が現れた。

 子供しては顔が整っていて綺麗な短い黒い髪と黒い瞳。白い長袖のワイシャツに黒いジャケットを羽織り、黒い長ズボンをはいていた。

 少年の名はトウヤ・サオミ、このお店の息子である。トウヤは、箒を手に外の掃除を始めようとしていた。


「ん?」


 お店の入り口から少し離れた所に汚れた布を被せた大きな籠があった。トウヤは顔をしかめる。「誰だよ、こんな所にごみ置いたのは」と、ブツブツ言いながら籠を被せていた布を取った。籠の中を見たトウヤは目を見開いた。


 トウヤは布を籠に被せ、籠を抱えて急いでお店に戻った。




 トウヤはドアを行きよいよく開け、店内に入っていく。力が強くてドアが壁にぶつかる。

 店内は、ドアから見て右側にカウンター席で椅子が五つ、左側にはテーブル席が間隔を開けて五つ置いている。


「……トウヤ、開けるのに力強すぎ。扉、壊すつもりか」


 そう声を掛けたのはトウヤと瓜二つで、同じ服を着ている少年がカウンターを拭いていた。

 少年の名はトウマ・サオミ、彼もこのお店の息子であり、トウヤ・サオミの双子の兄である。


 トウヤは、抱えていた籠を机の上に置いてトウマに問いかけた。


「父さんは!?」 

「父さんなら、上でご飯「オーイ、おまえら」


 そう言いながら二階から男性が降りて来た。男性は、二人によく似ているが肩ぐらいある黒い髪を背中で一つし、眠たそうな黒い瞳、二人と同じような服を着て黒いエプロンを巻いていた。

 男性の名はブラド・サオミ、このお店の店長であり二人の父親である。


「朝飯出来たぞ。食べたら店開けるぞ」

「父さん!」


 トウヤはブラドに近寄りブラドの手を引き、机の所まで連れて行く。


「どうした? そんなに慌てて?」

「いいから!」


 ブラドは机に目を向けると、トウヤが持って来た大きな籠があった。


「トウヤ、あれは何だ?」

「そういえば、何だよあれ?」


 トウマも机に近づき、汚れた布を被せた大きな籠を見た。


「ど、どうしよう、これ!?」


 そう言いながらトウヤは、布を取った。


「っ、!」

「な!」



 布を取った籠の中には────汚れた布に巻かれて眠っている赤ん坊がいた。


「おい! どうしたんだよこれ!?」

「店の前に置いてあったんだよ! 俺だってどうしたらいいのか分からないから連れて来たんだよ!」


 トウマとトウヤが言い争いをしている中、ブラドは目を見開いたままでいたが、ハッと我に返り二人に指示を出す。


「トウマ! 通信石を持って来てくれ! トウヤ! 二階からお湯で濡らしたタオルと綺麗な乾いたタオルを持って来てくれ!」

「「っ、わかった!」」


 二人は、言い争いをやめ、指示されたものを取りにいった。ブラドは、赤ん坊に巻いてある布を取り怪我があるか確認をした。

 どうやら怪我はないのでブラドはホッと胸をなで下ろした。


「父さん! 通信石持って来たよ!」


 トウマは、バレーボール程の大きさの透明な石をもってきた。

 通信石、それは魔力を溜めた石を通信出来るように作った魔石。遠くにいる人と連絡することが出来る。


「ヤガラシ先生に繋いでくれ」

「わかった!」


 トウヤがヤガラシ先生に繋いでいる間、ドタドタと音を立てながらトウヤが二階から降りてきた。


「持ってきたよ!」


 そう言いながらトウヤの手には濡れたタオルと綺麗な乾いたタオルがあった。


「ありがとう。乾いた方は机の上に広げてくれ」

「わかった!」


 ブラドは濡れたタオルをトウヤから受け取り、赤ん坊の顔や体を拭いていく。赤ん坊は少し顔をしかめ、体を動かしたりしていたが、またすぐに眠りに就いた。


「父さん! 繋がったよ!」


 ブラドはトウヤが引いたタオルの上に赤ん坊を置き、赤ん坊の体にタオルを巻いた。

 トウマはブラドに通信石を近づける。そこには一人の男性が映っていた。

 男性の顔はふっくらして少しシワがあり、寝癖みたいに飛び跳ねた白い髪、翡翠の瞳に眼鏡を掛けた人間が映っていた。

 名をヤガラシ・アメダス、この街で医者をしている。


「どうしたんだ? こんな朝早くに? トウマは急いでいたようだが」

「すいません。すぐに看て貰いたい子がいて」


 ブラドは、トウマから通信石を受け取り赤ん坊に向けた。ヤガラシは目を見開き「おやおや」と、言葉を発した。


「どうしたんだい、その子は?」

「トウヤが見つけたんです。怪我はないですが、一応、先生に看て貰おうかと」

「ふむ」


 ヤガラシは赤ん坊を見る。


「ここからじゃあよく見えんな。済まぬがこっちに連れてきてくれないか? 鍵は開けておくから、入ってきなさい」

「わかりました。すいません、迷惑をかけてしまって」

「構わんさ。待ってるよ」


 そう言うと通信石を切り、ブラドはトウマとトウヤに目を向ける。


「お前達は店に「「俺も行く!!」」


 ブラドは、トウマとトウヤを見る。二人がついてくるとは予想がついていた。トウマとトウヤの目はブラドをジッと見つめていた。


「お前達が付いて来ても何もすることがないぞ」

「そうだけど!」

「俺達だって心配なんだよ!」


 ブラドは一つ、ため息を吐いた。こうなった二人には何を言っても聞かないことは、ブラドはよく知っている。


「……わかった。だが、邪魔はするなよ。大人しく待っているんだぞ」

「「わかった!」」


「……あ! 箒、置きっ放しだった!」


 トウヤが思い出したように言うと、急いで外に出て行く。それを見てブラドとトウマは顔を見合わせて笑った。

 ブラドは赤ん坊が入った籠を持ち、二人はトウヤに続いて外に出る。トウヤは急いで箒を手にし、お店に戻って行くのと入れ違いでブラドとトウマは外に出た。ブラドは鍵をトウマに渡し、箒を片付け戻って来たトウヤを確認し、トウマはお店に鍵を掛けた。


「よし、行こう」

「「うん!!」」


 ブラド達はヤガラシの待つ家に急いだ。





「この子なんですが」

「うむ」


 ヤガラシの家に着いたブラド達は、籠の中に寝ている赤ん坊をベッドの上に寝かし、ヤガラシに見て貰う。


「まだ首が据わっていないようだな」

「えぇ、俺も驚きました」

「巻いてあるタオルは変えたのかい?」

「はい、汚れていたので。後この子、女の子です」

「……そうか」


 ヤガラシは、赤ん坊の胸元に手をかざした。瞬間、手が白く光出し、赤ん坊に病気がないか診察していく。その姿をブラド達は見守っていた。




「……うむ。大きな病気は無さそうだ」


 一通り診察し、ヤガラシは結果を言うとブラド達はホッと胸をなで下ろし、トウマとトウヤは赤ん坊に近づき、ブラドはヤガラシの話を聴いていた。


「病気もなく健康だよ。……ただ」

「なにか?」


 ヤガラシは難しい顔をして、ブラドを部屋の外へ連れていった。



 トウマとトウヤは、赤ん坊に話かけていた。


「病気、なくてよかった」

「ホント。心配したんたぞ、この」


 トウヤは眠っている赤ん坊の頬をつつく。


「お! プニプニ!」

「やめろよ。寝ているのに」

「トウマもやろうよ」

「……やらない」

「やりたいって思ったくせに。ほら!」

「お、おい!」


 トウヤはトウマの手を持ち、赤ん坊の頬に当てた。


「……ホントだ」

「だろう!」


 トウマとトウヤが赤ん坊の頬をつついて遊んでいると、隣の部屋からブラドとヤガラシが戻って来た。


「……なにしてるんだ?」

「ホッホッホ。楽しそうだなー」

「あ! 父さん! ヤガラシ先生!」

「見てみて、赤ちゃんのほっぺたプニプニだよ!」


 二人して赤ん坊の頬をつついているのでブラドは額に手を添えて呆れ、ヤガラシは笑った。


「おまえら……」

「まぁまぁいいじゃないか、許してあげなよ」




「さて、赤ん坊をどうしょうか? どこかいい親を見つけて預けるか」

「え!」

「えー!」


 ヤガラシの提案にトウマとトウヤは、声を上げる。ブラドは二人を見て、考えていたことをヤガラシに伝えた。


「俺が引き取ります」

「だがのー」

「このまま誰かに預けるのは心配です。それにうちにいたのはなにかの縁だと思いますし」

「うーむ」


  ブラドはトウマとトウヤに目を向け、問いかける。


「俺はその子を引き取ろうと思っている。……構わないか?」


 トウマとトウヤが顔を見合わせて笑い、ブラドを見て答えた。


「うん! 俺も子育て、手伝うよ!」

「俺も俺も!」


 その言葉を聞いたブラドは、二人の頭を髪が乱れるほど撫でまわす。二人は「痛い!」「力強すぎ!」などと文句を言うが、ブラドは自分の気が済むまで撫で続けた。

 そのやり取りを見ていたヤガラシは、彼らなら赤ん坊を任せられると確信した。新しい親を見つけるには、時間が掛かる。それにもし、親が見つからなければ孤児院に預けなければならない。それだけは避けたかった。


「……分かった。その子は君たちに任せよう」

「ありがとうございます」

「「ありがとう、先生!!」」


「それじゃ、名前を決めてくれ」

「それなら決めてあります」

「はやっ!」

「父さん、いつの間に!」


 ブラドは、赤ん坊を引き取ると決めた時に名前を決めていたのだ。


「どんなの、どんなの!?」

「落ち着きなよ」

「だって! 俺達の妹の名前だぞ!」

「そうだけど、少しは落ち着かないと」

「お前は落ち着きすぎだ!」






「それじゃ言うぞ。俺達の新しい家族の名前は────」





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