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3/7

始まり

8/8加筆

8/13改行&誤字修正

VRに慣れるための作ったばかりのキャラでチュートリアルをしていると5:00を迎えサービス開始のアナウンスと共に体全体をなんとも言葉にできない浮遊感が襲う。


「このゲームは職業や背の高さ、性別などの様々な要素を元にランダムに各地のレベルの低い最初の街へと飛ばされ、そこからあなたの物語は始まることになります。では、皆様の健闘をお祈りしております。」


真琴にとっては聞き慣れた、しかし酷く懐かしい言葉を聞きながら今回はどこだろうな、新しく追加された街だといいなと思っていた。



ーーーーーーーーーーーーーーーーー



目の前が黒に染まり、だんだん晴れていくとそこは夕暮れに染まる田舎の農村の光景があった。

(確か村の名前は…)

真琴にとってそれは見覚えのある街、いや村であった。時刻設定は午後5時前後、現実世界とリンクしているようだ。周りを見ると数百人はいるだろう個性豊かなプレイヤー達が続々と現れてきている。そんな中極一部のプレイヤーは動き出す。真琴もそれにのり動き出し覚えている限りの知識を尽くしてレベル上げへと繰り出すのだった。しかしその内心は


(人、多い…酔う…)


と言うものだった。


真琴が場を離れてしばらくしてある1人の女性プレイヤーが運営からのメッセージに気付き悲鳴をあげ、数百人のプレイヤーが混乱に陥っていたのだがこの時真琴は知るよしもなかった。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「おお!ありがとうございました!」


(とりあえず……終わりかな?)


村の中心地から少し離れたNPCにクエスト終了報告をした真琴をクエスト達成のファンファーレとレベルアップのファンファーレが続けて祝福する。

ここまでに真琴は最初の村でのクエストを覚えている限り全て終えていた。見ると当たりは既に真っ暗であり、周りにプレイヤーは見当たらない。視界の端にポツンと表示された時刻はAM3:19と示していた。それを確認すると同時に疲労感が襲ってくる。集中し過ぎて知らないうちにかなり時間が経っていた。

ちなみに真琴は現在家に1人である。双子の妹と弟がいるのだが修学旅行に、父親は単身赴任中であり、母親も出張でしばらくいないと聞いていた。そのためこんな遅くまでゲームを出来ていた訳なのだが、いくらゲーム中毒者で深夜が得意とは言え明日に響く。いや、実際真琴はいつもこのくらいまでやっているためいつもとかわらないのだが。

真琴が違和感を感じたのはその時だった。

ログアウトしようと周りを見渡す。プレイヤーが1人もいないのだ。いくら村の中心地ではないとはいえサービス初日にプレイヤーが1人もいないなんてことはまずありえない。しかも、VRで初のMMORPGと言われれば次の日まで休日をとってやり込むプレイヤーがいてもおかしくなかった。

真琴はその違和感を胸に抱えたすっきりとしないままログアウトしようとする。だがそこで真琴を予想外の事態が襲う。メニューを呼び出し、ログアウトボタンを押したところで「この操作は実行できません」と表示されたのだ。


「…はっ?」


思わず素っ頓狂な声がでる。二度目を試してみても表示されたのは冷酷な宣言だった。

そこで真琴は自分のおかれた状況に気付き思考能力が停止した。そんな中でもゆっくりと事態を理解し、冷静になろうとする。しかし冷静になろうとすればするほど事態の重さに気づいていく。

そこで何かを思い出したかのように自然と下を向いていた顔をあげた真琴はあたりを見渡す。さっきとかわらずプレイヤーの姿はなくNPCの姿だけがチラホラと確認できる。

真琴は走り出す、プレイヤーを探して。村の中心、最初に現れた場所を目指して。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




村の中心には人が、プレイヤーが集まっていた。どうやら真琴だけがログアウト出来ない、という状況ではなさそうだった。

しかし、深夜3時を過ぎても最初と同じだけのプレイヤーがいるのは明らかに異常だった。そして、あちこちで話し合うプレイヤーや座り込んで意気消沈しているプレイヤーがいる。

真琴は一番近くにいた話し合っていた若い男性三人組に近寄って行く。


「すいません、いったい何が、何が起きてるんですか?」


男達三人は真琴の存在に気付くと振り返り、呆れたような顔をした。真琴はその顔を見て、申し訳なさが込み上げてきたが男達の返答を待った。背の高さのため見上げるような、上目遣いのような感じになってしまっていた。

すると、男の内一人が目をそらしながらボソリと呟いた。


「……えっと、なんだ、まだ運営からのメッセージ見てないやつがいたのか」


真琴は感謝の言葉を言い、お辞儀をして男達から距離をとるように離れた。そして、運営からのメッセージを確認した途端まるで氷漬けされたように動けなくなり体の感覚が遠のいてしまったのだった。



『プレイヤーの諸君。この度WEを購入して遊んで頂けることを光栄に思う。さて君たちは、現実に不満を感じていないか?いや、不満を感じていないものなどいないだろう。だから我々は提供する事にした。世界という名のこの仮想世界を。君たちプレイヤー、3万6822人はこれからゲームをクリアするまで現実世界に戻ることは無い。もし、この世界で死亡したらその瞬間今現実の体に装着されているヘッドギア型ゲーム機から高出力の電圧が流れ脳を焼き切るだろう。また無理に外そうとしても同じ事が起こるだろう。それについては安心してくれ。既に全国ニュースによって全ての人に知らされている。君達は安心してゲームを攻略してくれたまえ。尚これに伴いGMコールや外部との接触をする全ての機能は無効となる。このゲームは現実であり遊びである。では、楽しんでくれたまえ』


その文章は事実上の死刑宣告とも言えるものだった。

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