プロローグ【戻れない世界】
加筆や修正をしてどんどんいい作品に仕上げて行きたいと思ってます。よろしくお願いします。
目の前と左右両方から刃こぼれしたぼろぼろの剣が迫る。それを一歩後ろに下がることでかわす。すると背中は壁に当たり後がないことを知ると冷や汗が流れた。
三本の剣は当たることなく振り抜かれ、石材の地面に当たり、キィンと言う高い音を狭くない洞窟のなかに響かせる。それにより、剣の持ち主の人型のイヌ、名前の表示でいえばコボルト達は反動で動けなくなりこちらのほうを恨めしそうに睨んでいる。
チャンスだ。
三匹の体力は既にレッドーゾーンを超え、残り僅かだ。とどめをさすために引き金を引いた。
ドン!
音は一つだが玉は三発発射され、それぞれの胸を貫いていた。間もなくコボルト達は無数のポリゴンの欠片となり消えていく。
悴んだ指を軽く振りメニューを呼び出し時間を確認するとちょうど午後6時を指していた。この季節だともう外は真っ暗だろう。
「今日も生き残った」
その呟きは誰にも聞こえることなく消えていった。
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2023年8月8日
「なぁ、WEまたやらないか?」
始まりは真夏のあの暑い日に届いたメッセージだった。
WE、正式名称「World of the End」は時代を超え、家庭用ゲーム機では機種を超え7年続いてきた老舗MMORPGだ。
PCのスペックが良くなるとそれに合わせアップデート、アップグレードを繰り返してきた。もはやサービス開始時のシステムやマップすら大幅に変えてしまった異例中の異例のMMORPGタイトルだ。それでも人気が衰えないのは運営の努力と変わってもなおプレイヤーに指示されるシステムのお陰だろう。
そんなゲームが遂に最近話題のVRジャンルに参入すると言うのだ。WE発売元のアークシステムからMMORPGだけを専門として扱うSuspendisse mundiと言う子会社が立ち上がったことによってWF運営も自由に動けるようになり、この度晴れてVRに挑戦することになったのだ。今まで成功を遂げていたWEだからこそ注目され、脚光を浴びた。VRMMORPGというジャンルの先駆者となることを期待されていたのだ。
そんなWEを2年前に辞めていた。原因理由は様々だが、ギルドの解散と言うのが一番の理由だった。7人という1パーティギリギリのメンバーで構成されたのギルドだった。そんなギルドでギルドメンバーが次々引退していき、残り3人となったところで、リアルに集中しようと言う話が出た。そしてその3人も引退しギルドを畳むことになった。
それでもギルド時代の繋がりは消えず、SNSでグループが作られ年に一度必ずオフ会をするほどの仲は保っていた。
2年ぶりにと言うことと全員がVRに興味を持っていたことでこの提案に全員が賛同した。
そして、その年の9月14日にVRバージョンのサービスが始まることになっていた。VRバージョンはこれまで出来ていたデータの引き継ぎは出来ない仕様になっていたため全員が0から始めることとなる。そこでまた誰かが言った。
「どうせ全員が最初からやるならてっぺん目指そうよ」
と。