メリーさん泣く 2戦目
読んでくれてありがとうございます!!
俺は腕を組み今か今かと待っている。
何を待っているかって?そんなん決まってるでしょ。
「早くここに攻め込んでこいよ……いいよこいよあくしろあくしろ……ってファー?!お前そこから来るのかよ!!what the fuck!!」
そう、俺はW○Tという戦車のマルチ対戦ゲームやっていた。
俺は基本的にガン待ちの姿勢で不用意に突っ込んできた敵を屠ることにこの上ない快感を得るので、大体いやらしいところに陣取っている。ただこの方法にも弱点はある。相手が速度重視で既に抜けていた場合挟みうちにされてしまうのだ。いやらしい場所ということは、それは人がよく使う場所。つまりある程度の速度以上でその場所まで向かわなければいい的でしかない。
俺は基本的にギリギリでそこに間に合うように計算され尽くされた戦車を利用している。軽すぎては砲弾のダメージが低すぎて同じ軽量系の戦車にしかダメージを与えられないし、逆に攻撃重視でいけば足が重すぎてこのような戦い方は無理。どっちもなんて欲張りセットは基本的にはできない。
しかし俺はそれを実現させた。
というのは言い過ぎだな。
正確にはある程度早くてある程度の攻撃力のある戦車にカスタマイズしたのだ。よく言えば万能型、悪く言えば器用貧乏と非常に使いどころが難しいカスタムだ。まず間違いなくやってはいけない失敗例の一つだ。だがしかし、それもこうして特定の場所でのガン待ちプレイに使うのならば結構な力を発揮できるのだ!
正に俺のためだけにあるようなカスタムである。
とは言え、ガン待ちプレイの弱点のもう一つ目である、既にその場所を相手が警戒していた場合なんかは最悪だ。装甲はできるだけ薄くしてるから軽戦車系統の豆鉄砲でもいいダメージ入っちゃうし、巨砲で狙い撃ちされたりすればワンパンだ。あくまで相手が警戒していない場合に限るので、やはりあまり好んで使う人はいないだろう。いてもやられなれてしまった俺くらいのものだ。あ、言っとくが俺はマゾじゃないからな。割り切れるだけだからな!
「あぁ〜今回はだめかぁ〜。そろそろ別の場所を探すかなぁ……あぁー腹減ったな。てもう午前4時かどうりで空が白んできてるわけですわ……カップ麺あったな、食お」
俺は空腹で胃液が上がってきそうな不快感を堪えながら、キッチンの収納棚からシーフードヌードルを取り出す。そしてポットのお湯を内側のガイドラインまで入れ、蓋をしその上に箸を置く。
放置時間は3分。
しかし俺は硬麺派なので2分半で蓋を外し、一気に麺を啜る。
するとシーフードの香ばしい香りと歯ごたえのある麺がマッチし俺の食欲を更にそそる。俺は無言でそのまま一心不乱に麺を啜り続けた。
「ふぅ……やっぱ麺は熱い内にだな。美味かった」
そんな風に食べてればものの数分で完食である。
俺は若干の物足りなさは感じつつもまたPCに向かいいつもの転職サイトを開こうと−−。
「うっ……グスッ、ねぇー……ねぇえー……無視、しないでよぉ……ここから出してよぉ……お家、はないけど、お家帰りたいよぉ……目の前で見せつけられるようにご飯食べられて辛いよぉ……おうどん食べたいよぉ……うぅ……」
麗しい声が隣から聞こえてきた。
俺は顔を声のした方へと向ける。
そこには金髪蒼眼の美少女が涙を流し泣いていた。
場所は勿論俺の部屋だ。
この字面だけ見れば最高においしいシチュエーションだと言える。
ほら、想像してみたまえ。
目の前にパツキンで蒼眼の世界で一番の美少女と言っても過言ではない女の子が目の前におるんやで?しかもそれが頬を薄っすらと赤らめさせて涙を流して上目遣いで懇願してくる……最高に興奮しません?俺は結構グッときますよ。そこでイケメン主人公なら優しく抱きしめ、必殺技の頭ナデナデして仕方ないなとか言っちゃってるんですよ。こりゃもう美少女即落ちですわ、チョロインの完成ですわー。
まぁ懇願の内容が結構怪しいですけどね。主に事案的な意味で。これ間違いなくお巡りさんきちゃう感じのあれだよね、うん。
まぁまぁ兎に角、いい展開やろ?
けどね、彼女の姿を見ながらこの言葉を聞けばイメージはまた変わると思うんですよ。あー後こうなった顛末も聞くことによってこの美少女に対するイメージはガラッと変わるはずである。実際俺現場にいるけどグッとこないもん。
美少女ことメリーさんは、壁に埋まっている。
胸から下が壁に埋まっており、片手にはバール、そして涙目でさっきの徒然だ。
まずこの時点で普通じゃないって思うでしょ?思うよね?思わない人なんていないよね?もし思わない人がいたとしたらそいつは危険人物だ、即座に取り押さえ警察に突き出すことをお勧めする。
で、更にだ。
このメリーさんは俺を殺そうとしてこうなった。
まぁみんな察してると思うけど、こいつはあの有名な都市伝説メリーさんその人だ。
たまたま俺がこいつにロックオンされ、電話を掛けてきたんだ。
そこで俺はまだ死にたくないので取り敢えずウィキで調べることにした。そしたら流石ウィキ先生。色んな対処法が載ってたわけですよ。ただまぁ都市伝説なんて眉唾もんの話だしそれが本当にメリーさんに効果があるかなんてわからない。でも、ウィキ先生は正しいという絶対的な信頼があるのだ。少なくとも俺はその正しさに救われてきた。だから俺は今回もウィキ先生を信じ、そしてそれが正しいことであるということを証明するべくその対処法を試したのだ。結果メリーさんはこうして壁に埋まったのである。
よって対処法その①は正しいということが証明され俺は安心すると同時にやはりウィキ先生は絶対であると再度胸に刻み込んだ。
メリーさんは始めの方はまだ抵抗していた。
『ふ、ふふん!こんなの簡単に抜け出せるんだからねっ!あなたの助けなんかなくても自力で何とかしてみせるわ!!』
『ほぉ?じゃ頑張って』
『その余裕がいつまで続くかしらねっ!見てなさいよ!!』
と元気いっぱいだったのだが。
『ね、ねぇ。なんか足がスースーするっていうか……足が地面に付かないんだけど……』
『ん?あぁ、俺んとこ角部屋だからとなり空中。多分外から見ればお前のパンツ丸見えだと思うぞ。まぁスカートの場合はだけどな』
『思いっきりスカートよ!!通りでスースーすると思ったわ−−って、嘘!!?ちょっえっまっ、あの、ふぇ……ふぇええええええええええええええええええええええええええええ!!!!!』
と、自分の痴態を知り情けない叫び声を上げて、羞恥の涙を流した。
ある程度時間が経ち落ち着いてからは。
『殺す!絶対に殺す!!もうお嫁にいけないっ!!汚された!あたし汚された!!人間ごときに汚された!!だからその原因であるあなたを殺してあたしも死んでやるっ!!!』
『いやだから、俺、メンヘラはちょっと……』
『だからメンヘラじゃないもんっ!!』
『あ、俺の友達にメンヘラでもおkってやついたからそこいけよ。喜んでお前のこと嫁にすると思うぞ』
『メンヘラじゃないからっ!!てかそもそもここから移動できないんですけどっ!!』
と再度元気になり、ふんぬーっと可愛らしい掛け声とともに頑張っていた。
数時間後。
『あ、あの……なんでこんな酷いことするんですか?あた、あたし何かしましたか?』
『ん?そりゃ俺のこと殺すって言うてたじゃん?俺としてはまだ死にたくないわけですし、危険人物を何の条件もなしに野放しにできるわけないじゃん』
『なっ……つまりはあなたっ……!あたしをこのままにしてあんなことやこんなことをして屈服させるつもりなのね!!エロ同人みたいに……!!』
『しねぇよ。てかエロ同人はわかるんだ』
『そりゃそうよ。あたし、コミケでとあるサークルで売り子やったことあるからねっ!その時に販売したのが「壁尻」っていうシリーズよ!!あたしみたいに壁にはまって動けなくなった女の子にえっちぃ悪戯しちゃうの!!だからわかるわっ!あなたその同人誌みたいにあたしにいかがわしいことするつもりなんだわ!!あたしったら美少女だし、今だって物凄い無防備だもの。後ろからちょめちょめされちゃうんだわっ……!あたしが「いやっ!やめてぇぇ!!」て泣き叫んでも「ぐへへへへ、いい尻だな。おじさん撫でまわしてぺろぺろしちゃるけんのぉ、デュフ、デュフフフフヌカコポォ』って感じで!!あたしはこんなところで純潔を散らすことになるんだわっ!!』
『しねぇっつてんだろ!!つかなんだよ!俺はおじさんて歳じゃねぇぞ?!お兄さんだぞ!!ぴっちぴちだぞおい!!しかもデュフフ笑いしねぇしヌカコポォてどうやって笑ったらそうなるんだよ!!!』
『え?違うの??』
『違わい!!心底意外そうな顔で小首かしげるなっ!!可愛いなおい!そのしぐさ!!』
『か、可愛いだなんて……本当のことだけど照れるわ……♪』
メリーさんはいやんいやんと両手を頬に当て嬉しそうに首を振っている。
その仕草は元の美少女も相まってかなりの破壊力を持っていたのだが、彼女の手にはバールが握られたままなので俺は辛うじて耐えることができた。
何をって?
そりゃこう抱きしめたくなる衝動をだよ。
てかこいつ俗世に飲まれすぎだろ。
都市伝説様なんだよな?本当にこいつメリーさんなのだろうか。疑わしくなってきた。つっても壁に埋まる人間なんているわけないので、事実なんだろうけど。
更に数時間、メリーさんと俺の問答は続いた。
途中ポーカーをやって遊んだりもした。勿論勝ったのは俺だ。イカサマしまくって徹底的にいじめてやったら泣いちゃってなぐさめるのが大変だったけど。
そんなこんなで結局俺は徹夜をし、メリーさんと一つ屋根の下で過ごした。ここだけ聞くと美少女と密室で二人きりなんてうらやまけしからん状況なんだろうけど、俺はこれでも結構緊張していた。女の子で二人きりだからじゃないぞ。いつ襲われるかわからないことに対する緊張だ。つまりずっと警戒していたのだ。
が、本当にこいつは抜け出せないようだ。あれからことあるごとにたきつけてみたのだが、決まって息を荒くして脱力してしまう。メリーさんの下半身は一向に壁から抜け出せないままだった。
なので俺は安心し、こうして一人ゲームを楽しみ、目の前で食事をとり、メリーさんに見せつけることで心を折ろうとした。そんで俺に危害を加えないようにしてとっととお帰りいただく所存である。
いやさ、なんだかんだでこいつ美少女だからさ、俺が着替えたりする時に壁から生えた美少女がガン見してるってどんな変態プレイだよっていう。俺は着替えを見られて興奮する性癖はないし、それ以前に常によくわからん誰かに見られながら生活するって耐えられないんだよね。しかもこいつが生えてるのベッドんとこの壁だから、こいつがいると寝るに寝れん。こいつのバールの範囲がちょうどベッドの枕元あたりだし、寝ている間にゴスッとやられてチーンという結果は嫌だしな。
だから俺はこのメリーさんはにおとなしく帰ってもらいたいのだ。
「あのぉ……あたし、なんでも言うこと聞くから……ここから、出してください……お願いしますぅー……」
かかったな。
ついにメリーさんは俺の拷問に耐えきれず折れた。
鉄は熱いうちに叩け、俺はすかさず言葉を返す。
「ん?今何でもするって言ったよね?」
「はいぃ……なんでもしますぅ……あ、でも、その、えっちぃのはやめて欲しいです……あたしヴァージンブレイクはロマンチックな夜景の見えるホテルで優しく愛を囁かれながらって決めてるんです。なのでえっちぃのはNGです……あ、でも無理やりっていうのも……それはそれでありかも……?」
「いやしないから。状況的に考えればおいしいのかもだし、据え膳なんだろうけど食わないから」
「据え膳食わぬは男の恥?」
「時と場合による」
「絶好のチャンス?」
「……お前は何がしたいんだよ」
「べべべべべ、別にあなたに処女をささげたいとか思ってないんだからねっ!なによりあたしとあなたは出会って数時間の関係だからそーゆーのは早いと思うわっ!!…………あぅ、おなかすいた……」
メリーさんは赤面し言葉をまくしたてたかと思ったらそのまま力尽きたようにうなだれた。今回は可愛らしい手からバールを手放している。
にしてもこのメリーさん、やっぱ変な子だわ。
人間じゃないから元から不思議な存在なんだけど、それにしても彼女の人間性?内面?が変な子そのままだ。普通ここまで饒舌になれるものかね。俺なら無理だね。当たり障りのない会話して終了って感じ。自分のこととか早々相手にぶつけれないでしょ。
メリーさんは最初からストレートだ。
俺を殺すってのもそうだし、聞いてもいないことをぺちゃくちゃと話、自爆していく。感情の起伏が激しいというか表情豊かというか。
まぁ俺個人としては裏表のない子って嫌いじゃないし、寧ろ好感が持てる。しかも相手はめちゃくちゃ、世界一レベルでの超絶美少女だ。その相乗効果というのは凄まじい。ぶっちゃけこの俺でさえメリーさんにちょっと好意的になっている。少なくとも嫌いではない。ただ、感情がよく暴走するせいか面倒くさい。
普段こんな会話をすることなんてないから新鮮ではあるけれど必要以上に体力が持って行かれる気がする。まぁ一応一徹してるからそれも原因なんだろうけどね。
「とにかく俺がお前に出したい条件はえっちなことじゃない」
「う、嘘よ……男の人は女の子を見たら見境なく発情しちゃうって同人誌に書いてあったわ!」
「それは性犯罪者か何かだろ。普通は自制できるんだよ。てか自制するんだよ。じゃなくて、そういうのはいいから。話が進まん」
「あたし美少女だからついついあなたが我慢できなくなってしまう気持ちはわかるわ……だからここは狼に噛まれたと思って現実を受け入れるわ……さようならあたしの純潔……」
「だからしねぇつってんだろ!お前、一生壁に埋めるぞ!」
「いやだぁ!許してぇ!!あたし壁から出たいですぅ!!このまま壁と一体化なんてやだぁ!!ぬりかべなんてやだよぉお!!」
「だったら話聞け」
「はい、聞きます!聞きますですぅ!!」
俺は頭痛を覚え眉間をつまむように指を当てる。
本当話進まねぇなこいつ……。
美少女じゃなかったら頬を引っ叩いてるとこだ。
俺は少し語調を強く言うとメリーさんは涙を滝のように流しながら返答する。首ももの凄い勢いで横にふっていてそのまま取れてしまうんじゃないかとちょっと心配になるくらいだ。
「ごほんっ。じゃあお前をそこから助ける条件だが……」
「えっちぃことは――」
「あっ?」
「なななな、なんでもないですぅ!!」
たくこいつは……。
なに。そんなにレイプ願望とかあるわけ?男としてはヤれる=ヤろうだけどさ。どう考えてもこいつに手を出すのはアウトなんですよ、えぇ。だって見えてる地雷だよ?これ只さんが目の前で待ち構えてるのよ?そのままゴーしちゃったら爆死ですよ爆死。絶対面倒なことになる。だから俺はこいつに手を出す気はさらさらない。そんな気分にもならんし、寧ろ怒りが込み上げてくるレベルだわ。美少女だから許されるっていうのは二次元に限るわ。イケメンでもこんだけうざかったら女性は辟易もんでしょ。
俺は怒りで口元がぴくぴくさせながらギロリとメリーさんを睨む。するとメリーさんははひぃ!!と情けない声を上げながら涙目でフリーズした。
どうやら今度こそ俺の話を聞いてくれるようだ。
「条件は、俺に危害を加えない事だ。助けてやったらそのまま殺されるとかたまったもんじゃねぇからな。だからそのバールは床に置け」
「加えません、はい!!」
メリーさんはビシッと敬礼すると手に持っていたバールを床に置いた。俺はすかさずそのバールを拾い俺の後ろに隠す。
取りあえずこれで目に見える凶器というのはなくなった。もしかしたらサイコキネシス的な目に見えない攻撃というのもあるかもしれないが、後は約束を守ってもらえるよう信じるしかない。
「いいか?絶対だからな。絶対俺に危害を加えるなよ。超常的な攻撃もなしだからな。ふりじゃないぞ。マジだぞ」
「はい約束しますぅ!約束しますから早く助けてください!早くしないと外に人出ちゃいますぅ!パンツ見られちゃいますぅう!!恥ずか死しちゃいますぅう!!」
「よしっ。じゃあお前をそっから助けてやろう」
さて、そうは言ったが……どうすっかなぁ。壁に埋まった人間、人間じゃないか。どちらにしろそういった方を助けるってどうやんの?壁に穴開けて救出?敷金オーバーで更に金掛かりそうだな。それは嫌だ。じゃあどうするか。
俺はジーッとメリーさんを見る。
相変わらずの美少女だ……じゃなくて。
あぁー……、メリーさんて幽霊的な存在だったりするのかな。ほら、メリーさんって元々は捨てられた人形の怨念で主人の元に戻ってきて復讐するってやつだろ。つまり見た目が人形でなきゃおかしいわけだ。それが今や見た目は完全に人間。つまり元の人形から肉体変化をしているということになる。てことはだ、このメリーさんは肉体変化ができるということになる。
「なぁ」
「な、なんでせう……」
「お前って霊体化みたいなのできるの?壁すり抜けたりとか」
「できるわ……普段は」
「普段は?」
普段はってことはいつもは霊体化して壁すり抜けができるってわけだ。何それのぞきし放題やんけ、裏山。
「いつもならできるのよ。でも何故か今回は霊体化できなくて……できたらとっくに壁から抜け出してぶちころがしてるわ……」
「ほう」
マジかー。俺精一杯ジト目でメリーさんを睨みつけたけど内心マジびびりっすわー。
俺結構危なかったんだな……。アレか、うちのアパート退魔の素材とか使われてんのかね。いや退魔だったらそもそもこいつがうちに来ることはないか。
「いやいやいや!過去の話よ過去の話!今は約束通り何も危害を加えないわ!本当よ!信じてっ!」
「あぁはいはい……兎に角なんかわからんが本当に自力で抜け出せないと」
「そうなの!だからあたしを助けて!約束したじゃない!!お願いしますぅ!!」
「わかったわかった……じゃあよいしょっと」
「ふぇ?」
俺は立ち上がりメリーさんの両手をガシッと握った。メリーさんは顔を真っ赤にして情けない声をあげている。ていうか「ふぇ?」てなんだよ。現実でんな風に声あげる人初めて見たぞ。あ、てかそもそも人間じゃないか。
メリーさんは顔を赤くしながらも何をするの?と不安そうにこちらを見ている。
美少女がうるうると瞳を潤ませるその姿は正に天使……って、ハッ!!
あぶねぇあぶねぇ……こいつのあまりの美少女っぷりに惹きこまれるところだった。なんて魔性なんだこいつは。自称ガードの固い男の俺がこんなに簡単にやられそうになるとは、世のオタク達は即死だな。
さて、気を取り直して。
どうやってこいつをここから出すかだったな。
壁を破壊するというのは論外だ。ならばやることは一つ。
そうだ引っ張ろう。
「じゃこのままいくからなー」
「え?え?このままいくって何を?て、え、あのまさか……!!」
メリーさんはどうやら俺が何をするのか理解し、真っ赤だった顔をすぐに真っ青にさせた。信号みたいで面白いな。
「え、嘘!?引っ張るの!そんな原始的な方法で……!」
「古来より問題を解決するのは単純な方法と言われていてだな」
「あたし聞いたことないよ!!?」
「それはお前が無知だからだ。無知は罪だぞ」
「嘘よ!!てかヤバいって!!すっぽりはまっちゃってるのに引っ張るって無茶だわ!!骨格とかおかしくなっちゃうわよ!!」
「へきへきへーきだって、安心しろよ。ちゃちゃちゃっとやって終わりっ!すっげぇよ、簡単だから」
「寧ろ不安しかないわよぉ!!」
「んじゃいくぞー。せーのっ」
「ぎゃああ!!!怖いぃいいい!!!」
俺はギャーギャー喚くメリーさんを無視し、思いっきり引っ張ってやった。するとどうだろう。スポッとでも擬音が付きそうなぐらいの勢いで簡単引っこ抜けた。もうそりゃびっくりするくらい。
で、思った以上に簡単に引っこ抜けたもんだから、過剰な力が後ろ方向に働き、俺は勢いよく背中から床に激突した。
めっちゃ痛いんですけど……。
でも何だろ。なんか温かいものが口にあたってるんですがががががががががががががががががががg。
「んむぅっ!???!!!!!!!???!!?!?」
うん、はい。
お約束?お約束ですね。こんなマンガみたいなお約束ってあるんですね。
俺はメリーさんと熱い口づけをしていた。
「んむぅうう!!んむむぅぅううううう!!んむ!んむむむっむむむぅぅうううう!!!??」
メリーさんはきっとこう言っている。
「あたしのファーストキス!もうお嫁にいけないよぉぉぉ!!」と。
俺にはわかる。俺にはわかるんだ。
これは俺が意図してやったものではないし、心の底から申し訳ないと思っている。男にとってあんまり気にらないことだが、女性はこういうのはとても気にすると思うんだ。だから俺は悪いと思っている、マジで。
だがね、メリーさんよ。
そー、んむんむ言ってると唇がいい感じに動いて気持ちいいんですよね、はい。
あぁもう、メリーさんめっちゃ涙流してる……。
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