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F*ther  作者: 采火
本編
9/153

本のタイトル

 さて、図書館に着きました。

 図書館は煉瓦造りの三階建てで、書庫となっているのは二階。一階は事務室とか休憩スペースになってて、三階には空き部屋が幾つか。この空き部屋で時々催し物があったりする。

 借りてた本を二階のカウンターで返した後、次の読み物を物色しに行く。とりあえずさっき返した本の続きは借りようっと。『屋根裏部屋のアイスバーグ』って本がなかなかに面白かったのよねー。シリーズ幾つまで出ているのかしら。


「お姉ちゃーん、これなんて読むの?」


 ユートも一冊、本を持ってくる。んー、なになに。


「……『朝帰りの学校』? こんな本あったっけ」

「新刊コーナーにあったー」


 ふぅん。ちょっと見せて、と本を受け取って中を覗いてみる。サイズは児童文学っぽいけれど……


「に゛ゃっ!?」


 何コレ何コレはぁ!? 何でこんなのが混じってんのよ! 学園もののエロ小説じゃない! てゆーか、ユート何持ってきてんのよ!?


「お姉ちゃん、それかりたらよんでー」


 読むかあああああ!!?

 ユート君、文字が読めないって時には残酷だってことをそろそろ学ぼうかって言いたいけどきっとわかんないよね、うん!


「借りません返しましょうもっと別の面白そうな本を持っておいで」

「? はーい」


 目線をあわせて訴えるとユートは快く返事をして返しに行った。

 ふぅ、と一つため息。図書館なので騒ぐわけにはいかないし、内容も内容なので全力で叫ぶのを堪えた疲労がずっしりと方に来る。ここの図書館て指向が変わったのかしら、あんなモノ置くなんて。


「児童文学にエロ本混ぜないでよもぉ…」


 図書館が変なのではなくて、作者が変なのかしら。

 とかなんとか、ぶつぶつと文句を言いながら、図書のある一画へ移動する。

 物語のコーナーから離れて学術書のコーナーへ。元々、生まれ変わる前の私は学者肌だったからね。こういうのを読むのは好きなのだけれど、本を借りることはない。学校にも通っていない私が学術書なんて読むのは変だからね。

 ──特に魔法学は。

 私は魔法学書の棚へ足を向ける。魔法学書といっても、魔法使いが私的に書いた研究書の写しがほとんど。一般向けに書かれる物だから、閲覧自由だし。ただし写本なので持ち出しは限られた人のみだけど。

 それでも十分、今の魔法がどれほど進んでいるかは分かるのでそこそこ活用している。


「何か新しいのあるかしら」


 学術書は読む人が少ないので、入荷したらすぐに本棚へ配置されてしまう。新刊コーナーでのお披露目はされないのだ。


「……『白き鋼の錬金術』…『東大陸・気候予測の占星術』………『マンドラゴラの効率栽培の仕方』……あ、これ」


 目に付いた本を一冊手に取る。


「……『煉獄の色の貴石』」


 茶色の皮の表紙の本。見たことのないタイトルだからきっと新刊。

 ……読みたいけど、めちゃくちゃ読みたいけど、今読んだら中途半端になっちゃうかな。でもでも、ユートも本を選ぶの時間かかりそうだし。

 むー、と悩みに悩んだ末、


「いいや、読んじゃえ」


 ペタリとその場に座り込む。魔法使いのいないこの町で、この棚に来るのは私のような物好きぐらいだから、多少お行儀が悪くとも迷惑はかからないでしょう。本を床に広げてページを繰る。一ページ目から引き込まれて夢中で文字を追う。

 繰る、繰る、繰る。

 ただひたすら没頭して読む。四分の一を読んだくらいで、ある仮説が立つ。もしかしてこの本……


「うきゃっ!?」

「うっわ!?」


 突然、私の背中に誰かが蹴躓いた。私も巻き込まれて、蹴躓いた奴の下敷きになってしまう。なんなのよもう!


「おーもーいー!!」

「あ、すまねえ……て、あんたさっきの」

「なんなのよー……あ」


 私に蹴躓いたのはなんと。

 あらー、さっきの広場のロリコンさんではないですか。


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