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F*ther  作者: 采火
本編

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さっさと夕食を済ませちゃって

「お待たせいたしました。夕食の支度が整いましたので、どうぞこちらへ」


ごろごろとフィルと二人でベッドに転がって怠けていると、約束通りに夕食に呼ばれた。アーシアさんじゃないメイドさんだ。残念、アーシアさんが来ることを期待していたのにな。


「こちらになります」


二人で同じ部屋にいると思っていなかったんでしょうね、メイドさんはちょっと驚いたような目をしてからすぐにすました顔に戻ったのを私は見逃さなかったよ。

ベッドから起き上がってパタパタと軽く身だしなみを整えてから部屋を出る。フィルは服に皺がついていても気にしてなかったけど、私が気になるから。まぁ、仕方ないので襟ぐらいは正させる。

招かれた部屋はちょっと他の部屋よりも大きめの扉が拵えてあった。装飾もすごい。メイドさんがぐっと開けた。


「やっほー、お腹すいっちゃたから早く早くー」

「遅い」


中で待ってたのはサリヤとカリヤ。二人とも魔法使いと騎士としての服はやめて、ラフな格好になっていた。

こうして改めてみると、二人ともそっくりね。さすがは双子。でも、サリヤは前髪を下ろしているけど、カリヤは前髪をあげているから区別はつきやすい。後、口調ね。これは大きいわ。

他の使用人に混ざってアーシアさんが給仕してる。こちらに気づいて、どうぞと椅子を引いてくれた。


「ではでは全員揃ったので、まずは乾杯」


冷たい水の入ったグラスを掲げる。まぁ、水の入ったグラスを掲げてるのは私とサリヤだけど。フィルとカリヤは紫色の液体が入ってるから、たぶんワインだよね。

グラスを置いてテーブルを見る。丸くて白いふかふかのロールパン。とうもろこしの冷スープ。トマトとスイートコーンと玉ねぎのスライスをバジルで和えたマリネ。食べやすいように薄くスライスされたお肉は独特のくさみがあって一瞬でラム肉だと分かった。前菜を食べたあとに口に運べば特性のタレが甘味と酸味を加えているので甘酸っぱく感じた。

貴族の夕食にしては素朴でアットホームな感じが強いけど、変に凝った食事よりは断然こっちの方がいいわ。ほんの数日とはいえ、道中の食事は一応保存食中心だったし。私は病み上がりだし。これくらいの量と濃さでちょうどいい。

お腹を空かせてたのか、全員が黙々と食事を続ける。しばらくはナイフとフォークが皿に当たる音だけが響いた。

その中で最初にナイフとフォークを置いたのは私だった。大の大人よりも食べる量が少ないしね。

グラスの水を少し飲んで一息。アーシアさんがそれに気づいてお皿を下げつつ、紅茶を用意してくれる。もちろん、ミルクと砂糖もつけてね。目があったとき、分かってるわと片目を瞑ってくれたのはご愛嬌。

紅茶を一杯飲み干す頃には、全員が食べ終わってお茶の準備が整った。そこでようやく、サリヤもアーシアさん以外の使用人を下がらせる。


「はぁー、やっとくつろげるー」

「まだだサリヤ。くつろぐには早い」

「分かってるってー。でもやることは一つだからね。はい、これ」


さりやが無造作にぽいっと何かを投げる。どこから出したのかはともかく、フィルがうまくキャッチしたそれを覗くと、鍵だった。

サリヤが紅茶を飲みつつ、話す。


「書斎の奥にある部屋の鍵。書庫になってるんだけど、その一番奥の棚のどこかに炎の魔力の宿ってる本がある。それに魔力を流したら隠し扉が現れる。その隠し扉の中に、歴代のマッキー家の魔法使いの記録があるから」


……え。


「ちょ、そんな大事なこと、あっさりと教えちゃっていいの?」

「だって、情報は共有しないとでしょー? 話すよりもこっちの方が正しく伝えられると思って」

「ふーん……分かった。その記録はニカも読んで大丈夫か?」

「大丈夫だけど……魔法の知識あるの?」

「ニカは勘がいいからな」


それだけで納得したのか、サリヤはそれ以上追及してこなかった。……気づいていないのかしら。フィル、あなたわざと話しそらしたでしょう。

別に、私に魔法学の知識があるくらい話しても問題ないと思うけれど。わざわざ言うことでもないし良いかしら。


「僕らは一通りあそこの資料には目を通してあるよ。あとは君たちの意見を聞かせて欲しいかな」

「分かった。早い方がいいだろうから、早速行ってみても良いか?」

「どうぞー」


サリヤがひらひらと手を振るけれど、そこですかさずカリヤが牽制に鋭く睨んでくる。えー、何?


「明日、私たちは家にいないがおかしな真似をするなよ」

「協定関係結んでるのにまだ信用してねーの?」

「ま、カリヤだから。それじゃ、僕ら明日早いからお先に失礼。アーシア、彼らの世話は任せたよー」

「かしこまりました」


サリヤとカリヤが椅子から立ち上がって部屋を出ていく。それを見送って、私はアーシアさんを振り返った。


「明日何かあるの?」

「明後日のことで少々、先方に呼ばれているそうよ」

「ふぅん……?」


グレイシアも貴族の晩餐会やら舞踏会やらに散々誘われたけれど、前日になにか打ち合わせをすることなんてなかった。それほど先方にとってマッキー兄弟……呼ばれていたのはサリヤだったかしら。彼が重要ってこと?


「ニカ、気がすんだら行くぞ。さっさと資料読んで面倒ごとを長引かさないようにしねーと」

「え、ええ。分かってるわよ」


私たちも椅子から立ち上がる。

アーシアさんに案内してもらって、書斎まで。

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