集まる視線
ガラガラと馬車を走らせて、赤い光の尾を追いかける。
左へ右へ、真っ直ぐ行ったかと思ったらすぐに横道へ。本当にこれが近道なのかと疑いたくなるけど、よくよく考えてみれば人が少なくて馬車でもすいすい通れる。急がば回れ、ね。
「屋敷から一歩も動いていないみたいだねー。よし、このまま一気に行こうか、カリヤ」
「分かった」
短く言い放って、カリヤは速度をあげる。目的地がはっきりしたからか、光の尾との距離がどんどん縮んだ。
大通りへ出たとき、ピクリとサリヤが反応する。
「トットが屋敷から出た!」
「どこへ向かった!」
「……こっちに向かって来てる! ラッキー! フィルレイン、風でトットを拘束できるっ?」
「できるけど、目視できないと頑丈なのはできねーぞ。人目あるから俺が飛ぶのは無しな」
「よしっ、それなら僕らの上を通るようにルートを確保するよ!」
サリヤが杖で宙に何かを描く。私には見えないけれど、きっと魔法式を書いているのね。
「導け」
こつんっと魔法式を杖で叩くと、今度は先程よりも薄い赤色の球体ができた。光の尾を引かずに、もやもやと浮いている。ふよふよと気ままに浮いて、さっきの赤い光の尾とは別の方向へと動き出す。
「こっちの球を追いかければ、先回りできる」
悪い笑顔で笑うサリヤ。これまた難易度の高い魔法なんだけど、トットちゃんを捕まえるためにどれだけ本気になったのかがうかがい知れるわー……。
ふよふよと頼りなげに右往左往する球体。たぶん、先の魔法と連動しているのね。真正面からぶつかるようにしているのかしら。
サリヤとフィルがふっと上を向く。
「近いな」
「頼める?」
「了解」
馬車を近くに止めて、路地裏に入る。目視すればいいわけだけら、距離も角度も関係ない。
「来たぞ!」
大通りにある馬車から空を見上げていたカリヤが叫ぶ。
それと同時に赤色の光に追いかけられるトットちゃんが見えて。
『しつこいんじゃぁぁぁぁー!!』
「せーの」
フィルがくるんと指で円を描くように動かしたと同時に、緑の魔方陣が浮かぶ。優しい光の魔方陣が澄んだ音を立てて割れると、ひゅうっと勢いのよい風が生まれてトットちゃんにまとわりついた。
『なんじゃいこれは!!』
うまく飛べなくなったのか、ぽてっと地面に落下。うん、私は見たよ。地面が風でちょっとばかし抉れたの。どれだけ強いのよ。もはやちょっとした竜巻じゃない。中の台風の目にトットちゃんをいれてるような感じ。
路地裏からフィルが魔法を使ったけれど、トットちゃんが落ちたのは大通り。ざわざわと人が集まってくる。
「なんだこれは」
「あらお人形さんじゃない」
「わぁー、風だぁ」
「触ったらいけませんよ」
「ほいっと」
フィルがパタンと手を叩くと風が圧縮して縄のようになる。うん、風だからね。迂闊にさわると密度の高い風にミンチにされそうだわ。
トットちゃんもそれを理解してか、観念したように動かなくなった。
因みにトットちゃんをとらえた瞬間、サリヤが追跡魔法を二つとも解いて、フィルの風の上からトットちゃんが本性になって通り抜けるのを防ぐための結界を張ったからね。本性に戻る手も使えません。
さーて、なんだかんだとトットちゃんを捕まえることもできたので今度こそ頑丈な鳥籠につっこんでからさらに馬車に突っ込む。今回は結界を張るのも忘れずに。
フィルとサリヤも馬車へと乗り込んで、馬車は出立した。ちなみに私とアーシアさんは馬車の中で待機してたから、外へは出ていません。
いろんな人の視線を集めながらも馬車は動き出した。うーん、それにしてもこれ、視線集めすぎじゃないかしら……居心地悪い……。
ちらりと窓の外を見る。トットちゃん確保の現場からはちょっと離れたから、もう目撃者いないと思うんだけれど……
「あらやだ綺麗な髪!」
「ちょっとやだぁ、男前がいるわぁ」
「あれって騎士のカリヤ様じゃない!」
「じゃあ隣のはサリヤ様?」
「何言ってるの、カリヤ様と双子なんだからあそこまで似てないってことは無いでしょう」
「えっ、じゃあ隣のイケメンは誰!?」
きゃー!と黄色い視線。あー、これは御者台に座ってる二人の……二人の……二人の…………。
「あだっ! ニカ、いきなり殴んなよ!!」
「フィルなんかよりもお父さんの方がかっこいいんだからぁっ」
「はあ!? 意味が分からないんですけど!?」
ふんだ、フィルなんか綺麗な女の人の視線に汚されればいいのよ!あの中の何人が、男同士のラブロマンスを想像しているのでしょうね!!




