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F*ther  作者: 采火
本編

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86/153

追いかけるもの

ガタゴトと馬車は走り続けて、馬車の窓から王城が見えるほどの場所まで来た。でも王城まで一直線って訳じゃないから、馬車の左側の窓限定だけれどね。

屋根の合間に見える城の塔は、今も昔も変わりない。きっと魔法使いが未だに朽ちることのないようにと魔法をかけているのね。グレイシアが生きていたときはそうだった。

馬車の走る位置から、そろそろあれが見える頃だろうと思って、窓の外の景色を見つめる。

……まだ、……まだ、──今。

民家の屋根の合間に見える綺麗な青色の屋根。あれがグレイシアの別荘。ふふ、屋根の色はそのままなのね。

今は誰が住んでいるか知らない。あれは国から貰ったものだから、グレイシアが死んだ後、再び国に召しあげられて、また別の人物の手に渡ってしまっているんじゃないかしら。寂しいけれど、そういう仕組みだからね、国というものは。

再び民家の屋根に隠れてしまったから、窓の外を見るのをやめる。いつまでも未練たらしく見ていても、ね。


「熱心に外を見ていたけれど、面白いものでもあったのかしら?」

「……綺麗な青色の屋根が」


アーシアさんの質問に、すんなりと言葉が飛び出た。


「あー、あの屋根って目立つよねー。今は確かどこぞの子爵に与えられたらしいんだけれど、その前はグレイシアの別荘だったんだってー」


へぇー、とフィルがサリヤの解説に頷いたので私も関心を持ったそぶりで頷く。


「それにしてもよくもまぁ、ピンポイントで見つけたな、ニカ。あんた、つくづくグレイシアの縁があるんじゃね?」

「今のは偶然よ。お父さんがグレイシアさんと仲が良かったんだから自然と接点が増えるとそう思えてくるだけじゃないの?」

「そんなもんか?」

「そんなもんよ」


錯覚よ、錯覚。

そう言ってフィルを引き下がらせる。フィルも特に追求してこなかったから、この話はここで終わりになった。

更に馬車は足早に進んで、西地区に差し掛かった頃、サリヤがおもむろに立ち上がった。馬車の揺れで体勢を崩しながらだけれど。


「この距離なら……」


サリヤが呟きつつ、杖を構える。あら、魔法を使うつもりなのかしら。


「捕捉せよ」


サリヤがぼそりと呟きながら杖をコツンと馬車の床に打つ。杖を打った場所に赤く発光する魔方陣が浮き出て、もう一度杖で今度は魔方陣を打つように叩くと、魔方陣が瞬く間に集束して球体になった。ふよふよと光の尾を引いて浮き上がる。


「目標! 炎と安心の精霊トット! 魔力残痕確保、追跡開始ー!」


杖でトットちゃんの脱け殻人形をつついてから、赤く浮く球体を小突く。すいーっと球体が外へ出ていった。

これ、追跡魔法ね。複雑な過程を省略してあるけど。サリヤが自分用に魔方陣をいじったのね。


「ふっふっふっ、この距離なら追跡できはず……!これでトットが屋敷から移動しても追い付ける……!」

「なぁ、その魔法ってサリヤのオリジナル?」


フィルの問いに、サリヤはうんと頷いた。


「そうだよ。ほとんどトット用に改変してある魔法だから対象が移動しても道のりでの最短ルートを教えてくれる。王都の地形を式として組み込んであるから、王都のこの辺り一帯でしか使えないけど」


うっそ……地形ごと式として変換してたの?よくやるわぁ……。

追跡魔法って、魔力の残痕をたどるための魔法なのよね。だから結局、人の足を使うのよ。しかも敷かれた道順でいかないと対象までたどり着けない。どんなに遠回りでも対象の通った道筋全てを自分で歩かないといけないの。

サリヤの魔法はその上を行く。魔力の残痕を全てさらって、それからその到達地点への最短ルートを作り上げる。しかも到達地点は変動式。リアルタイムで変わるゴールを目指して、微調整しながら道のりを走るものなのよ。

この魔法を短縮するには相当の試行錯誤が必要だったはず。そもそも地形の魔法式化が難しいからね。いったい、どれ程の時間を費やしたのやら。


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