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F*ther  作者: 采火
本編

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71/153

炎の聖域にいるもの

「まず、端的に話すと、ルギィから流れる魔力の先にあったものは何かの封印堰だった。エンティーカよりも東にあるヴェニス山脈。あそこの山の一つに死火山がある。火山地帯、死火山を含めて炎と親和性の高いモノが集まるのは知ってるか?」

「知ってるわ」


火山地帯は炎の流動が激しいから、炎から生まれた精霊はそういう場所を好んでさすらってくる。もっともそういう場所に常駐しているような子たちは、皆大概、気象が激しいのだけれど。


「活火山は分かりやすいな。炎がうごめいてるから。じゃあ死火山の場合、どうして集まるんだ? 炎がうごめかなくなってしまったというのに、どうして集まる」

「もともと炎の流動が起きていた場所だから、そこで生まれる精霊も少なくない。そういった精霊のなかには魔力が少なくて生まれた場所を聖域として定め、動けない子がいるから」

「よく知ってるな」


当然でしょ。これくらい魔法学では初歩中の初歩じゃないの。

死火山は炎の流動がなくなっただけであって、魔力の流れは消えていない。また長い年月をかけて、魔力を蓄積して炎の流動を再び巻き起こそうとする。

精霊が生まれるほどの事象や魔力がなくても、時間の概念なんてない精霊にとっては関係ない。生まれ落ちた精霊は死火山の周りで流れるわずかな魔力をもらって、そっと命を繋ぐ。

それに、死火山になった場所には緑が萌える。炎と親和性の高い精霊だけじゃなくて、大地と親和性の高い精霊がやって来るようにもなる。そうなれば、魔力の流れは炎の色と大地の色と複雑に絡み合っていく。

そうして自然界は強くなる。


「その聖域を作る主の話は?」

「……現実的ではないけれど、知ってる」


ちょっと思い出すのに時間がかかったけれど、大丈夫。なんとか思い出した。

普通、聖域には一つに一体の精霊がいる。精霊は純粋な魔力の塊であるから、自分以外の存在を補うほどの余裕は持ち合わせれない。その上自分を補うための空間である聖域は彼らの回りに自動的に発生するから、他の精霊を弾こうと作用する。

それこそ、聖域を作る必要もないほど強い純粋体の精霊か、魔力の親和性が一つに絞られない精霊か、はたまた親和性が高いだけの精霊じゃないものか。そういったものじゃないと、聖域を広げて他を聖域の中に入れて守ることなんてわざわざしない。


「……あれ?」


現代において精霊じゃないもので、魔力との親和性の高いものなんてそうそういない。お伽噺でもそう。古代専門の魔法学者の中には魔獸という、精霊ではないのに魔力との親和性の高い存在を否定する人もいるけれど、よくよく考えたら最後の主張は当てはまるのが魔獸くらいしかいなくなる。というか、この聖域の主の話は神話から来るものが多くて、大概は魔獣が主となって聖域を作っていて……。

ルギィが話したがらなくて、フィルが確かめようとしてあのカリヤの元へ行こうとしたこと。それから、ルギィから流れる魔力の先でカリヤと会ったこと。これは、偶然?

必然として考えた瞬間に浮かび上がった考えに、思わず青ざめる。


「まさか、ペルーダ……?」

「可能性が高い。封印堰は聖域ごと封印する術だ。俺が見たのはとてつもなく大きな封印堰だった。山の中抉ってるんじゃねーのかっていうくらいの」

「そんな……! 何かの間違いとかではなくて? 聖域を作れるほどの精霊ではなくて?」


まだ、まだペルーダとは断定するには早い。だって聖域を作れるのは魔獣だけじゃない。


「可能性は低い。あの辺りには大きい力を持つ精霊はいないらしいし、封印堰は炎の聖域の上から耐炎の結界を張ってさらに不自然にならないように大地と炎の魔力で練られた幻術がかかっていた。耐炎の結界からはルギィの魔力を感じられたけど、表にある術は違う。あれはサリヤの魔力に近かった」


そして狙ったかのようにカリヤがいた。だから訊きに行ったの?

私が話したペルーダの話の信憑性を確認するために。


「フィル。私にできることは何かある?」

「今のところはない。そもそもルギィのいう通り、魔力のないニカが関わると危険だし」

「……そうね」


本当にペルーダが関わっているのなら、私にはなにもできない。例えグレイシアの魔法道具が使えたとしても、戦力外に変わりはない。


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