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F*ther  作者: 采火
本編

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妖精が隠す秘密の入り口

フィルがいない今のうちにと思って、グレイシアの部屋のクローゼットの奥をごそごそとあさる。クローゼットの奥には衣装に紛れて小さな小箱が、クローゼットの底に埋まっている。手探りでその小箱とクローゼットの段差を見つけ出して、小箱の蓋を開ける。ほんのわずかな段差だから、注意深くしないと逃してしまう。

んー、もうちょっと奥かしら? でもそこまで奥でもないのよね……あ、あった。さわさわし続けてようやく見つける。さてここから大変。

これ、段差がほとんど無いからクローゼットの底と小箱の蓋が一体化してるのよね……。つまり取り出しにくいのよ。それをどうやって取り出すかなんだけど……。

前は風を箱の中へと送り込んで内側から蓋を押し上げてた。でも今はそんな方法で開けれるはずもないし。それならどうするかっていうと。


「えい」


ダァンッと予め見繕っていたナイフを突き刺してみた。貫通には至らなかったけれど、それでもぐりぐりとナイフをそこに突き刺してみればはずれにくくなる。そうやってはずれなくなったナイフごと小箱の蓋を開けてやる。

いやまぁ、力業なのは百も承知です。でも魔力のない私は物理に頼らざるを得ないというね。……まぁ、この隠し箱はもう使えないでしょうけど。

こんな分かりにくい場所に置いてあるものは、とても大切で危険なもの。


「あんまり他人には知られたくないものだからね」


中に入っていたのは鍵だった。それも魔法の鍵。鍵穴の形だけじゃなくて、加わってる属性の微妙な差異までもが認証の対象になっている特殊な鍵。

それを持って部屋を出る。それから外へ出て、庭の小さな水場へと向かう。暗くて見えはしないけれど、水差しを持つ妖精のレリーフから水が出ている造りの水場。そこから庭のあちこちに通る側溝へと流れていっている……はずなんだけど。


「あー……ここもか」


うん、予想はしてたよ。ここの水場はルギィが管理して井戸から水を引いてたから。だから水がないのも予想のうち。

鍵をレリーフの水差しに問答無用で突っ込む。これはこれで水が止まっていて正解かも。ここを使うときは毎回ルギィに水を止めてもらってたし。

カチリと音がしたあと、レリーフの水差しが淡く青色に発光した。よし、これで開いた。

レリーフの下を見る。濡れた石が水を受け止めているはずだったけれど、そこには魔方陣が浮かび上がっていて。


「せーのっ」


ぴょんっと魔方陣に飛びのると、くらりと目の前が眩んだ。

ずいぶん久しぶりの感覚からか、それとも魔力がないせいだから魔力酔いでも起こしたか、どちらかわかんないけれど、突然わき上がる吐き気に思わずうずくまる。……うう、気持ち悪い。

うー、さすがにこれはやめた方が良かったかしら。いやでも、ルギィのためなんだから我慢我慢……。

吐き気が治まったから立ち上がる。そうすればそこはもう、妖精のレリーフのある庭ではなかった。

ぼんやりと明るく見えるのはランプでも蝋燭でもない。自分自身で光る石だったり花だったり。他に見えるのは剥製の生き物だったり。冷たかったり暑かったり、場所によって温度差があるのは自然に育つはずのない植物の苗だったり種だったり。

ここはグレイシアのガラクタ置き場。

扱い方に注意しないと、死ぬことさえあるかもしれないガラクタの倉庫。

場所的には屋敷の地下のさらにその下の層。地下一階よりも広い。でもその危険性から地下一階からのここへの入り口は完全に抹消したから、ここへの道は魔方陣からの移動しかない。それも魔方陣の移動は地脈の流れに殉じる必要があるから、あの妖精のレリーフからしか移動できない。そのための厳重な鍵のかけ方。

さて、どうして私がこんな危険な場所に来たのかというと。


「あれってどこに置いたっけ……」


普通に探し物があるからです、はい。ルギィを助けることのできそうな。

いくつか候補があるから、実際にどれを使えば良いのか分かんないんだけれど……いや違うのよ? わたしは今完璧にルギィの容態を把握してるとは言えないから正しい処方がどうなるのか分かんないっていうだけで、だいたいの見当はついてるのよ? 本当よ?


「えーと……、ラベル37と81……あ、あと92も」


一つ一つ丁寧に木箱や瓶に貼られているラベルを確認して、目当てのものを見つけていく。一つの木箱と二つの瓶を抱えた私は、部屋の中にひとつだけある机にそれを置いて、ラベルに書いてある細かい文字を読む。

中身の説明を確認してみたら、私の記憶と相違無いものだったから良し。

さて、外に出てから次の作業に移りましょうか。

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