お茶目をすればこうなる
どうせこんな辺鄙な場所に訪ねて来る人なんていないから、そのまま庭にでる。お日様が温かくて、お昼寝したらきっと気持ちいいんだろうなぁ。
「それで、猫の位置は特定できる?」
庭に出て早々に聞いてみる。相手は小さいから、無闇に探すのも大変だしね。
フィルの魔具だから、当然フィルの魔力が宿ってるはず。一定量あれば、魔力感知できるもの。
だけどフィルは首を横に振った。
「無理。猫の魔力が仮想生命分しかないから難しい」
「どういうこと?」
「あんたの能力アップに溜めておいた魔力をほとんど使って、残りの魔力は生命維持分の僅かな魔力しかないってこと」
あら? でも独立した生命体を作るには相当な魔力を使ったはずよ。仮にも命を与える行為がそんなちっぽけな魔力で済むはずない。
「その量だけで維持できる物なの?」
「分からねーけど、そうとしか言えねー。しかも、あんたのネコ耳尻尾になってる魔力の方が大きくて、魔力感知が鈍くなってる」
うわぁ、なんて面倒な。これじゃ、探すの大変じゃないの。
「一回分だけしか溜められなかったの?」
「石が小さいからな。後でいじって、仮想生命分を改竄してもう一回分入れられるようにするつもりだったんだよ」
「ふぅん?」
まぁ妥当よね。変化系の魔法使うなら先に容を作って魔力にベクトル付けた方が早いもの。
ということは手がかりゼロで探すことになるのね。しかもこの広い屋敷の中ですぐに見つかるわけないわよね……あー、大変だわ。
「二手に別れましょうか。これ、今日中に見つかるかしら……」
「俺、裏見てくる」
「私は表ね」
そう言って別れる。
さて、どうやって探しましょうねぇ。ちまちま薬草の下とか花壇の下とか覗いてみる? それとも罠を仕掛けてみる?
「でもやっぱりまずはこれよねっ」
ふっふっふっ。
手近な木を一本見繕って、駆け寄ってみる。あの石だって猫だもの。高いところに上りたがるかもしれないわよね?
「という理由で性能を拝見しましょう」
ちょっと楽しそうよね。私、木登りってしたことないから、ちょうど良いわ。
さ、どうしましょう。背伸びして手を伸ばしてようやく触れられる木の太い枝を見つめる。そこまで上りたいのだけれど……。
猫って自分より少しくらい背の高い所なら軽々と飛び乗るわよね。ジャンプすれば届く? 猫の能力は跳躍力と考えて良いのかしら。
とりあえずぴょんぴょんと跳ねてみる。んー、何か違うなー。思った通りに跳ばないなー。
一回跳ぶのを止めてみる。猫の跳ぶのをよくよく思い出してみよう。
健やかなすらりとした体躯、柔らかな物腰、しなやかな四肢。全身を使って、跳ぶ。
「ひぁっ」
わわっ、びっくりした!! 跳べた!! 跳んだっていうか、気づいたら枝に乗ってたって感じだけどっ!!
集中すればできるって事ね。んー、もうちょっと慣れておきたいな。よし、もう一つ上の枝を目指そう。
「せーのっ」
よしっ、行けたっ。
ふふ、何か楽しくなってきたわね……てうぁ。
…………………………降りること考えてなかった。
むぅ。役人の屋敷じゃいざとなったら二階から飛び降りる事も考えてみたけど、冷静になってみるんだ私。この高さ、私は無事に降りられる訳がないでしょう。
えっえっ、どうしようコレ。あちゃー、柄にもなくハシャげばこうなるとかバカみたい。
「誰か来ないかな……いや、来て困るの私か。こんなマヌケな姿見られるとか耐えられない……!」
思わず顔を両手で抑えれば。
「……ニカ?」
えっ、いやっ、ちょっ、本当に誰か来たっ!? 誰よこんな大変なときに声かけるバカはっ!? って、あ。
足滑らせたぁぁぁぁぁ!!?
「きゃぁぁぁぁぁ!!」
「えっ、あ、おいっ!!?」
下にいた人物が私を抱き止めようとしてくれるけど、残念ながら支えきれなくて一緒に倒れ込みました。
いたた……。ケガは無いからありがたいけど、私と一緒になって倒れ込むとか、どんだけ頼りないの……て、あぁ、なるほど。
「ニカっ! お前何してんだよあんな所でっ!」
「ごめんなさいアレン。助けてくれてありがと」
どうやって入ってきたのか分からないけれど、私の下敷きになってくれたのはアレンでした。




