ネコ耳萌えー?
私にこんな無礼を働いたバカ猫を探して部屋中を探してみるけれど、いつの間にか猫は消えていて、行方知れずになっていた。
うー、どうにかフィルと会いたいけど、この恰好で会うのはなぁ。
もう一度、耳を触ってみる。触ってる感覚も触られてる感覚もある。かといって直に頭頂にくっついているわけではないようで、指一本分くらい隙間を空けて浮遊してる。尻尾も同じ。一応、服に穴を空ける必要がなくて良かったけどさ。
こんな恥ずかしい姿を人の目に晒すのもなぁ。すんごいマニアックな感じだし……。
「フィルなら解呪法知ってるんだろうけどなぁ」
たぶん、あのバカ猫に魔法かけたのはフィルだろうしね。解呪の一つや二つ知ってるでしょ。
でもこの恰好を見られるのにはやっぱり抵抗あるしなぁ……
「ニカー! こっちに青くてちびくて石の猫来なかったか!?」
うーわー、噂をすればなんとやら。
ノック無しで女子の部屋に入ってくる常識知らずが一人、いらっしゃった。
「出てけ」
「ひでぇっ」
半眼で言ってやる。それにこの部屋にはその猫、もういないし。
「ニカも手伝ってくれよー」
「なんで私が貴方の後始末を手伝わないといけないのよ」
「そんな事、言うなよ……て、あ」
フィルがふと何かに気づいて、目を丸くした後、顔を真っ赤にした。え、何その反応。
「おまっ、その恰好っ」
「貴方の猫にやられたのよ。人前に出たくないから貴方一人で探しなさい」
つんっと言ってやると、フィルが片手で顔を隠した。
「あー……萌え?」
「死ね」
「ちがっ、俺じゃなくてっ! そーゆー趣味の輩がいたら面倒だなって話でっ」
「本心は?」
「わりと目の保養でグッジョブ石猫」
「死ね」
とりあえずフィルにはドレッサーにおいて置いたヘアーコームの尖ってる方を向けて投げておく。ちっ、うまくキャッチされてしまった。
「落ち着けって!」
「お巡りさーん、ここに変態がいまーす」
「そのネタまだやるのかって言いたいけどやっぱ今のそのトーンはマジでヤバい感じがするので謝ります、すんませんでしたあぁぁ!」
人の趣味に口出しする気は無いけど、今の発言は人としてどうなのよって思ったわー。
「謝るくらいなら誠意を見せなさい」
「誠意?」
「さっさと猫を探しに行きなさい」
「……あのー、それについてご相談が」
ちょっと目を逸らして、なんなの一体。
「えーとなー」
「なんなの早く言いなさいよ」
「……そのー、ニカも探すの手伝ってくれね?」
「あ、分かった。フィルは死にたいのね? 社会的に。それならそうと早く言ってくれればいいのに。ネコ耳作って差し上げましょうか?」
「なにそれ怖ぇ! 俺、町に出れなくなる……じゃなくて! ちゃんと理由あるから聞けって!」
理由ー?
あるなら早く話してほしいものねぇ。
「あの石猫の本当の能力は身体能力の強化。猫の身体能力を得られるんだよ。それで、ニカも手伝って欲しいなーって」
そういえば、グレイシアのレシピにそんなのあったなぁ。確か負傷した動物の治療用に作った魔具なんだけど。
それを基にしているとしたら身体能力の強化……というより転写かしら。ある物の能力を引き出して別の物が使う。
……それをフィルは人用に改造したの?
「何のためにそんな物作ったのよ」
「……言わなきゃ駄目か?」
「ふふふ、フィルには変態の称号がお似合いね」
「すんませんまじでやめてくださいあんたの護身用だからそんな不名誉な称号をつけないで下さいお願いします!」
土下座でもするのかってくらいの勢いでフィルはまくし立てる。あ、本当に土下座し始めた。
──じゃなくて。フィルの言葉が少し引っかかった。私の護身用って何。
「ネコ耳付けて何から守るのよ」
「いやそれまだ調整中だったし!」
フィルは必死に取り繕うけれど、説明を求めているのはそこじゃなくて。
じーっとジト目で見続ければ、フィルはばつの悪そうに目を泳がせた。
「猫の身体能力を得られるから、身軽になれるんだよ。この間みたいに何かあったとき用の対策にならねーかなーと思ってさ」
ああ、そういう事。
事情は分かったけど、さすがにコレは無いわ。うん、マジでない。こんなので外を出歩く訳にも行かないし。
ルギィの結界で敷地外には出れないはずだから、サクッと探して元に戻るとしますか。




