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F*ther  作者: 采火
本編

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38/153

ちょっと壮大だった

「改めまして、僕はサリヤ・マッキー。そこの騎士が双子の弟のカリヤ・マッキー。君が懐いたメイドがアーシア・ラウス。君の名前を教えてくれないかな?」


 にこにこと笑う魔法使い。アーシアさんの臨席は快く受け入れてもらえたから、ひどいことはないはず。名乗るくらいならいいよね?


「ニカ・フラメルです。それで魔法使い様、私に何の用なんですか」

「魔法使いとか他人行儀だなー。そこまで警戒心むき出しじゃなくても。まー、でもカリヤの強行手段のせいで信用がないんだろうね。よし、お詫びとして名前呼びを許可しよう。呼び捨ても可。カリヤに関しても僕が許可してあげる。やったねー、貴族と仲良しだ」


 ペラペラと淀みなく言うあたり、この人ってだいぶ口が軽いのかな。軽すぎて不気味だけれど。じゃ、お言葉に甘えて。


「サリヤ、私はそこの騎士のせいで人を待たせてるの。用件を早く済ませて」

「わー、とたんに態度が変わったねー? なら早速本題に入ろうか」


 テーブルを挟んでソファーに腰掛ける私とサリヤ。私の後ろにアーシアさんが、サリヤの後ろにカリヤがいる。サリヤが本題に入ると言ったとき、僅かにカリヤの表情が動いた気がしたんだけど、気のせいかしら。


「僕らがこの町に来た理由は何だと思う?」

「普通に人事異動とかじゃないの?」


 アーシアさんからどんな様子だったかは聞いたけれど、理由まではね。アーシアさんが聞きたいのもきっとそこ。


「そうだけど、僕はわざわざ嘆願書まで出してこの町への移動を願ったんだ。僕とカリヤが探してた探し物がここにあるみたいだったからね」


 探し物。わざわざここまで来るには、彼らにとって相当価値のある物のはず。でも、エンティーカにそんな価値のある物があったっけ。


「それの手がかりをね、この町に来た初日に見つけたんだよねー」


 欲しかったおもちゃを見つけた子供のように、サリヤは笑う。カリヤは後ろで、ジッとこちらの反応をうかがってる。下手に私が反応を示したら、カリヤが何かに感づくかもしれないわね。

 何を言われようが、絶対に反応なんかしてやんない。そんな心意気で感情を平静に保つ。


「この町に昔いた魔法使いの精霊。あれがここに居るって事は、炎の魔獣・ペルーダの封印が未だ息づいてる証拠なんじゃないかなーって」


 ペルーダ?


「ペルーダって神話の?」

「そう。神話の魔獣」


 四つ脚で地を這い、蛇の頭と尾をしなやかにつたわせ、緑の皮膚には長い(たてがみ)を纏わせて、亀の甲羅と毒の棘を持つという邪悪な竜。口から火を吐きだしながら大地を焦がしていくそれは、神話の生物。

 魔獣というのは神話の時代からいる魔力持ちの獣たちのこと。精霊は現象から生まれるけれど、彼らは生物。子を生むことで次代に繋げていく。

 時代が進むに連れて、魔獣の純粋種は減っていった。そして神話の時代の魔獣はもはやこの世にいないとされる。

 それが、神話の名前を冠する魔獣が、今この町にいるというの?


「あははー、驚いてる驚いてる」

「ちょっ、笑い事じゃないわよ!? 何それ、ほっといて良いの!? ていうか実在するの!?」

「良くないに決まってるじゃん。だから僕たちが来たんだよ。僕たちの家に伝わる歴史書から見つけてきたことだから半信半疑なんだけどね。封印の存在と状態の確認、それが僕たちの目的だ」


 何を言われても表情を変えない心意気、は、意味がなかった。まさかこんな素っ頓狂なことを言われるとは思わなかったもの。

昔から住んでいてもそんなこと、聞いたことがない。


「ペルーダの封印の記録は約三十年周期。僕らの家とペルーダを封印している精霊で行われる。その精霊だと思われるやつと、この町に来たとき会ったから、信憑性も増したんだよねー」


 封印している精霊。その言葉が引っかかる。この町でその精霊を見たって……この町にいる、この町の近郊にいる精霊は、私の知る限り彼一人。もしかしたら他にもいるかもしれないけれど、今の私に確かめる術はなくて。もし彼らの言うことが本当なら……でもちょっと待って。彼はそんな事、私に一度も話したことはないわ。


「事は一刻を争うんだよね。前回の封印、その精霊に契約者が居たときなんだけどさ、封印する直前に亡くなってるらしいんだよ。しかも僕らの家も衰退してて、祖父母の時代から一代とんで僕が出るまで魔獣に封印を施せるレベルの魔法使いがいなくってね。その契約者に任せる手筈になってたらしいんだよね。魔獣の存在は秘匿にしないと悪い輩がでるかもで他の魔法使いに託せなかったらしいから。で、僕らの父母も死んでてさ。僕らがその記録見つけなきゃ、記録すらも葬り去られるところだったんだよ」


 その契約者ってまさか。まさかまさかまさか?


「風を纏い水辺に遊ぶ精霊とその契約者。精霊の名前は記録に残ってないけど、当時の精霊持ちで封印の前後に亡くなってる魔法使いっていったらただ一人なんだよねー。庶民もよく知る魔法医学の大成者、魔法使いの憧れ永久魔力機関のテーマ研究者。その名も伝説に等しい魔法使い・グレイシア〜」


 なんかそんな気はしてたけど、やたらと仰々しい言い方で人の名前呼ばないでくれるかしらっ!?


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