表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
F*ther  作者: 采火
本編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

37/153

話し合おう

 罠かもしれない。騙されているだけかもしれない。でも、アーシアさんの話を聞いた私には、魔法使いと騎士がこそこそとやっている事に対する興味しかない。何をやっているのか知りたいじゃない。危ない話だと思ったらそれこそ死ぬ気で逃亡すればいい。いっそ、窓から飛び降りても良いかな。


「アーシアさん、魔法使いの部屋はどこ?」

「ニカちゃん?」

「協力する。貴方が知りたがってること、私が聞き出してくるわ」


 アーシアさんが目を丸くする。


「やめて! ニカちゃんがそんな事しなくてもいいのよ!?」

「もともと、あいつらは私に用があるんだから、今逃げてもまた捕まっちゃうかもしれない。それなら、今のうちに話つけるよ」


 階段を登りに行こうとする私を、アーシアさんは引き止める。


「危ないわ! 今の彼らが何をするか、私にはもう分かんないの」

「それなら一緒にいてください。私を守ってください。私一人なら出来ても、アーシアさんの目の前では出来ないことだってあるでしょ? 何を言われようと私の側にいて、私を守ってください」


 懇願するように、ぎゅっとメイド服の袖を引っ張る。この人はあの二人のために王都から来た。怒られてもめげずにやってきた。信用できるのかは分からないし、本当かどうかも分からない。それでもいいや。逃げるだけなのもつまらないし。


「案内してください」


 もう一度、真っ直ぐにアーシアさんを見つめて、お願いする。アーシアさんは頬に手をついて、吐息をもらした。


「ニカちゃんは強いのね。私も腹を括った方が良いのかしら……」


 その様子は諦念のようで。でも瞳にはゆるぎない強い意志が垣間見えて。だからこそ直感が信用できると告げてる。アーシアさんは、この屋敷において私の味方になってくれる。


「分かったわ、ニカちゃん。約束する。貴女を絶対にお家に返してあげるから、安心してサリヤと話して」


 にっこりと笑うアーシアさんにほっとする。

 なんでだろうね、私、アーシアさんが自分に似てると思ったの。話し方とか雰囲気とか既視感がある。でも私は、歪曲した自分よりも、真っ直ぐなアーシアさんが好ましいの。絶望してやさぐれて、時の経過をゆるゆると過ごしてる私にはなくて、アーシアさんなら持っているはずのもの。私はそれを大切にして欲しい。

 アーシアさんは良い人。私なんかを気にかけてくれたお礼に、少しでも心痛を減らしてあげたいな。


「さ、行きましょう。階段で転ばないでね?」


 茶目っ気たっぷりに笑うアーシアさん。背の低い私の手を引いて歩き出す。かっこいいなぁ。一度決めたら行動に迷いがなくて。私は迷って答えを決められなくて結局は自分を傷つけてばかり。

 アーシアさんのように生きられたら、良かったのに。


「アーシアさんは、あいつらと幼なじみ?」

「そうよ。騎士のカリヤが弟で、魔法使いのサリヤが兄。双子の二人の世話係が私の母だったの。昔は仲が良かったんだけど、今ではこのザマよ。私は二人から何も教えてもらえないただのメイドなの」


 悲しそうに笑う顔を見て、視線のやり場に困った。こういう、感傷に浸る人の雰囲気は少しだけ居心地が悪い。

 もしかしてフィルもそうだったのかな。私とルギィのケンカの後の雰囲気が気まずいから、私が明らかに落ち込んでいたせいかもしれないけど、居心地が悪かったから仲良くしろって言ったのかな。

 それだったらフィルには悪いことをしちゃったかも。誰も、雰囲気が悪いままでいたくないものね。私も、ルギィと気まずいままなのは嫌。


「ありがとう、アーシアさん」

「私こそ、ニカちゃんが申し出てくれたおかげで、状況が進展するんだもの。お礼を言いたいわ」


 違うの、そうじゃなくて。

 私がルギィと向き合うための背中を押してくれたから。あなたのひたむきな思いが、私にも伝わったから。

 帰ったら、ルギィと腹を割って話し合う。そのための方法を探すわ。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ