もうこの話題やだ
「で、次はどうするんだ?」
「そうねー。先に服買いましょうか」
「かさばらね?」
「平気よ。カントリー商会に配達頼むから」
カントリー商会は食材の配達だけじゃなくて、契約店での買い物なら普通に配達もしてくれる。荷物をたくさん持って移動しなくていいのは本当助かるわぁ。
とりあえずフィルの服よね。確か裏通りにお母さんが村のおば様方と噂していた服屋さんがあったはず。あそこなら古着も売ってて安いのも多いらしいから、まとめ買いしても問題ないでしょう。
カントリー商会から出て、大通りを歩く。整備された石畳はとても歩きやすい。適当な所で裏通りに入って小道を進む。確か役人の屋敷の裏手あたりだったっけ。
「思ったんだけどさ、ニカ。あんたってモテるんだな」
「……はいっ?」
突然のその質問は何。スーデンさんといいフィルといい、今日はいったい何なの。
「さっきの話。求婚されるくらいモテるんだなぁと。しかもスーデン殿があんたの事高評価していたし。その割には俺に対しては最初から遠慮がなかったよなーと。モテるニカさん、俺にも少しくらい優しくしてもらえませんかね?」
何を言い出すかと思いきや……。自分の保身ですか。フィルって死なないのに保身はするのね。まぁ、ナイフ投げたり宝石投げたりしたのはさすがに悪かったと思ってはいるけど……あ、今思うと結構酷いことしてるわ自分。
「フィルっていじめがいのある顔してるからついつい」
「やるなよ。一応あんたより年上なんだから敬えよ」
「ほら最初に持ったイメージって変えにくいじゃない?」
最初のやりとりからしてアレだったし? 十分いじめがいがあるじゃないですか。……じゃなくて。
私がモテる話だったね。勘違いして貰っては困る。私がモテるわけじゃない。あれは全て心配の裏返し。私みたいな嫌な女に恋愛感情持つなんて相当の物好きくらいよ。
「最近物騒だから。誰も自分の親しい人をよく知らない場所へ送り出したくないのよ」
「スーデン殿とかはな。求婚のはどう説明すんの?」
「アレンのは……競争相手が居なくなって張り合いが無くなるからでしょう。それに仮にもリコリス家だし……」
最後の方は声がだんだんとしぼんでいった。まあ、後半のことはアレンの家の事情が絡むから万が一にもあり得ない気がするし。……でも本当にそうなのかな。もしかしたら万が一にも……いやいやいや、無いわー。絶対にない。あのライバル心ばかりのお子ちゃまが私に恋愛感情を持つなんて百年早いわ。アレンが私を心から好いてくれるはずなんて絶対に有り得ない。
「そんなことより! フィルの服! もうすぐ着くわ」
さっさっと買う物買いましょう。くだらない話はここまでです。何が悲しくてフィルと恋バナしないといけないのよ。恋バナするなら可愛い女友達を見繕うわよ。エンティーカの女子レベルなめんな。王都の貴族の令嬢並に可愛い子だっているんだぞ。
もー、フィルなんか知らない。置いてっちゃうわよ。
ずんずんと歩を進めるけど、フィルの方が歩幅が広くてあっという間に追いつかれる。こーゆーところ嫌い。ひょいひょい追いつくところ。空気読んで斜め後ろ十八歩くらいの所から着いて来れないのかしら。
「……」
「……」
なんか二人で徒競走みたいになってきた。私がフィルに追いつかれるのが嫌で速度を速めると、当然のようにフィルも早めるし。それでますます私も速度あげると。あ、ヤバい、これは無限ループだ。
そういえわけで、服屋に着く頃には私はすっかり肩で息をしていた。あーもー、すんごい疲れた。
なのになんでフィルは涼しい顔で息一つ乱れてないのよ。何それズルい。




