朝食で仲直り
昨日はそのままフィルに部屋に押し込められたので、シーツを取り替えたばかりのベッドに潜って眠った。朝を迎えて、いつまでもうじうじしてられないので、起き出して朝ご飯を作りに行くことにした。ルギィに対するもやもやも、自分に対するもやもやも、全部心の中にぎゅっと仕舞い込んで。
朝ご飯は何にしよう。確か、パンと卵があったよね。キャベツもあるし。んー……あ、ハムもあったかな。
よし、ハムエッグとキャベツのサラダで良いかな。キャベツは食べやすいように温野菜にしよう。あー、早く買い物行って食材を買い足したい。肉類が明らかに足りないし、小麦粉もないしでは本当、やりにくい。
「おはよう」
「おはよー。すぐに朝ご飯できるよ」
フィルも起きてきてテーブルにつく。よし、ハムエッグできた。キャベツも茹でたし、パンも温めた。あ、ドレッシング用意しなくちゃ。
オリーブオイルと酢と塩、胡椒、砂糖。これを混ぜたら、はいできた、フレンチドレッシング。これをキャベツにかけておしまい。
「はい、朝ご飯。ルギィの分もあるから、後で伝えてあげて」
「ほいほい」
テーブルに朝食をおいて、頂きます。二人とも静かに黙々と食べる。ちょっと気まずいかな、昨日の後だとさすがに。どうもね、ここ最近の私は情緒不安定っぽいからなぁ。うん、一昨日のナイフ投げはさすがに反省してるよ? ちょっと短絡的すぎたかなーって。
ふと視線を上げて気付く。フィル、昨日と同じ服?
「フィル、貴方ってその服、昨日と同じよね」
言ってから気付いたんだけど、一昨日もその前も同じ服じゃなかった?
「だいぶ汚れてるじゃないの。着替えてきなさいよ。出かける前に洗濯しておくから」
「無理。これ、俺の一張羅だから。旅してると着替えなんてなかなか持てないんだよ」
えー、でもさすがに、その埃まみれの服で買い物に行くのはなぁ……。不衛生というかなんというか。でも服持っていないって言うし……。とりあえず、買う物リストにフィルの着替えを追加ね。さて今日の分の服はどうしよう。
「仕方ない、ルギィに借りるしかないか……」
昨日の今日だからあまり会いたくないんだけどなぁ。
「ルギィって服持ってんのか?」
「グレイシアが趣味でルギィ用に作った服が幾つかあるよ。彼女の私室にあるはずなんだけど」
「へぇ。食べ終わったら聞いてみるわ」
うん、是非ともそうしてください。
そういえば、ルギィには着せ替え用の……もとい、着替えが幾つかあるはずなのに、なんで露出狂扱いされてるんだろう。解せない。
それに、その着替えを着れば私にも存在が簡単に分かるのに。精霊の触れるものは精霊が魔力を通さない限り、魔力を持たない人にも見えるんだからさ。昨日みたいにカーテン使う必要もなくなるし。ルギィ、何考えてるんだろう。
「さーて。そう決まったら、さっさっと朝食食って準備するか」
「そうね。ちゃんと買う物書き出しておいてよ? どうやって町を回るか考えるから」
フィルが返事をしてから、また二人は沈黙。黙々と食事を続ける。
うん、卵は半熟にちゃんとなっててハムも香ばしい。キャベツのフレンチドレッシングも程良い口触り。家ではお母さんのお手伝いとかしてたから、料理レシピには困らない。私のお母さんて料理上手なのよ本当。お父さんてば、そんなお母さんをどこから見つけてきたのかしら。
お母さんは私が死んでからお父さんと出会った人らしいし。私の料理力はそのお母さんから受け継ぎました。グレイシア時代のお味は悲惨なものだったから、めったに料理をしなかったし。ていうかいろんな人に止められたし。
そういえば昨日の夕食、ルギィはすんなりと持って行ったよね。前世の私を知ってるのによく持って行ったよなぁ。もしかして私が分かんないだけで、ものすごく嫌な顔はしてたとか?
変わっているのは私? それともルギィ?
今の私には、分かんない。




