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F*ther  作者: 采火
本編

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24/153

宝石の原石って岩っぽい

 それにしてもだいぶ埃が積もってるわね。ルギィもさすがにここまでは掃除しなかったのかな。まぁ、探し物は掃除しながら探していくことにしましょうか。


「いっそのこと、フィルが使い易いように配置換えでもする? 二階に持って行った方が便利でしょ」


 提案してみたけど、返事がない。あれ、さっきまですぐ隣の棚の中身を確認してたのに。

 後ろを振り向けば、フィルが長テーブルに色々と並べてる所だった。


「どうしたの? 銀見つかった?」

「いや、まだ。石の整理してる。グレイシアって案外大ざっぱなんだな。そこの棚の石入れの名札、『赤い石・大』『青い石・大』『無色の石・大』だったぞ。試しに青いのの中身出してみたらサファイアやらアクアマリンやらが雑多に出てきやがった。大って書いてある通り大きい石だし、数が少なくて良かったけどさ」

「あははは……」


 すみません実は今私が在庫確認している奴『赤い石・小中』でざっと三十はあります。ルビーにガーネットにローズクォーツ。色々詰め込まれてます。


「思った以上に宝石の(たぐい)多いな。いくらするんだこれ」

「あんまりしてないわよ。きちんと宝石になってる物もあるけど、小さいサイズのうち幾つかは原石だもの。加工する分のお金は浮いてる」


 そう、棚に納められている小さな石の殆どは原石。研究に使うのは磨かれる前の物。ここから使いたい形に自分で加工するの。大きい宝石は研究には使わない特別な用途があって、すでに加工されてるだけ。

 これは宝石の棚だけど、使い勝手の良い鉱石は向こうの木箱に入れてあるはず。後で忘れずチェックしなくちゃね。


「うーん……」

「どうしたの?」

「いや、こんな高価なもの勝手に使っていいのかと」


 あら。

 その一言に一瞬だけ胸が弾む。どうしてかな、お母さんから役人が盗ろうとしていたっていう話を聞いたからかな。フィルのその何気ない謙虚さがとても嬉しい。グレイシアだからと特別視した感じもないからかな、好感が持てた。ふふ、フィル、今のは高評価よ。


「グレイシアは亡くなってる人だし、ルギィから許可貰えたなら良いんじゃないの」

「そっかぁ? この屋敷に住みたいって思ったのは確かに俺だけどさ、他人の財産貰うのはさすがに違う気も……」

「大家であるお父さんから許可も貰ったんでしょ。なら良いじゃない。そもそもあなた研究一つで生きていくつもりのようだけど、それじゃあ生活できないし研究資金も出ないわよ。生計を立てるために何か生業持たなきゃ」


 フィルは国から認められた正式な魔法使いじゃないから、国家予算から研究費がでるわけがないのだけれど……。自分でどうにか稼いで貰わないといけないことに気づいているのかしら。


「あー……そっか、腰を落ち着けるには生業持たなきゃいけねーのか……」


 案の定、気づいてなかったか。というか、あなた今までの旅費の資金どうしてたのよ。別に聞かないけど、ちょっと気になるじゃないの。


「畑もあるし、私が今まで続けてきた仕事を続ければ最低限の生活費はどうにかなるけど、さすがに研究費までは出せないわよ」


 うーん、とフィルは唸る。そうよね、突然生業持てって言われても困るわよね。でもそうしないと生きていけないし。

 私は一つ、今片づけていた赤い宝石達の中からガーネットをつまみあげた。それをフィルに放り投げる。


「うぉりゃっ!!」

「ぐふ」


 放り投げるっていうか直球(ストレート)入れてみた。


「何すんだよニカっ!!?」

「手が止まってるから」

「そーゆーのは口で言え!?」

「それ、加工の仕方分かる?」

「加工?」


 それができないと研究も何も進まない。


「魔法の研究って色々あるけど、宝石が触媒になるってことが多いの。グレイシアがこれだけ溜め込んでるってことは、彼女の研究も宝石が触媒になるものが多いってこと。そうなると宝石の加工の仕方も覚えなくちゃね。安定した収入が得られるまではここにある宝石を使わなくちゃ、あなたのやりたい事は続かないわよ」


 研究をしないでただ住むだけなら私の収入だけでもなんとかやってはいけるけど、触媒である宝石は消耗品。研究に使うなら資金が必要。少しの間なら今ここにある分で足りるだろうけど、ね。

 これからのフィルの課題は一つ。安定した収入を得ること。

 それさえできれば後はもう好きなようにどうぞ。





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