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F*ther  作者: 采火
本編

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126/153

お兄ちゃんはお見通し

馬車の中で話をしようと思ったら、サリヤに屋敷に戻ってからと言われたので、私もフィルも大人しく馬車に揺られてマッキー家の屋敷へと戻った。

途中、サリヤが持つ布にくるまれた大きな棒のような物が気になってそれは何かと聞いてみたんだけれど、家に着くまでのお楽しみと言われてはぐらかされた。もう、教えてくれたっていいのにね?

そんな感じでマッキー家の屋敷に戻ると、荷物を片付けるようにサリヤから指示が飛んできた。私とフィルは渋々、あてがわれた部屋から荷物を片付けた。とはいっても、もとから散らかしていなかったし、お師匠のところで滞在していたわけだから、荷物はほとんど片付ける必要がなかった。それを終わらせると、メイドさんが馬車に積んでおきますねと言って持っていってしまった。もしかしてサリヤ、今夜中に王都を出る気?

荷物を奪われて呆気にとられていると、別のメイドさんがやって来て、私たちを客間へと案内してくれた。造りのしっかりとした扉が開かれると、ちょっと前、王都にきたその日と同じような光景が広がっていた。


「ささ。夕飯まで時間があるからちょっと作戦会議をしようかー」


にこにこと上座で待ち受けているサリヤの隣にはカリヤが控えている。私とフィルは部屋へと踏み出してティーカップの用意された席へと腰かけた。


「さて、ニカ・フラメル。真っ先に聞かなくちゃ話を進められないんだけど、これで必要なカードは全部揃ったかなー?」

「ええ、ほとんど」


私は堂々とうなずいた。


「封印の解き方も、呪いの解き方も予測はついてる。後はこれを精査して使えるかどうか、理論を現実に置換するだけ。でもその前に」


私はマッキー兄弟に聞きたいことがある。

特にサリヤ。あなたに対して。


「サリヤ、あなたのお陰でこうやって手札が揃ったのは感謝しているのよ。だからこそ、あなたがペルーダの封印の継続ではなく、解放を選んだ理由を教えて」


そう、サリヤはあの日記の存在を知っていた。封印方法も分かっていた。だからルギィを探して封印の継続をすれば終わりだった。なのにどうしてわざわざ私たちに同調して解放を選んだの?

ルギィが嫌がっていても、彼は頼み込んだら同意してくれるはず。わざわざ成功するかどうかも分からない可能性にかけるなんて、どうかしてるわ。

私の問いに、サリヤは不敵に笑った。


「継続なんてものは永遠じゃないってことだよ、ニカ・フラメル」


サリヤは椅子の背に重心をかける。


「封印もいつかは絶える。それが僕らの代だった。精霊が先に僕らを見放したんだから、本来なら僕らにはもう関わりがない。でも、これはマッキー家の最後の意地なんだよ。マッキー家と、後はラウス家の約定でもある」


サリヤの言葉にフィルが反応した。


「ラウス?」

「アーシアの家だよー。アーシアのご先祖様はペルーダ使いの一族なんだー。ペルーダ最後の一匹が滅ぶまで、マッキー家はラウス家を保護しなければならない」

「まだめんどくさいのが残ってたのかよ」

「こればっかりは形骸化してて何の意味も残ってなかったんだけどねー。マッキー家がラウス家の血を絶やさないよう、良き縁組みをすべし。これ、マッキー家の義務なんだよー」


やれやれといった体でサリヤは首をすくめる。まだ話は終わらないようで、更に言葉は続く。


「んでー、ペルーダの事を知ったときにこの謎義務の理由も分かっちゃったわけだから、もうこの際に古い因習を立ち切っちゃおうって思ってー。そうしたらアーシアもお見合いとかしなくていいしー、何よりカリヤくんにも一縷の望みが見えるかなーっていうお兄ちゃんの策略もあるわけー」


あは、と間抜けた笑みを浮かべるサリヤ。さらりと聞き流そうとしたけれど、なんだか面白いことが最後に加わった気がする。

その証拠に、カリヤがガタガタガタっとたたらをふんで近くにある机やら椅子やらにぶつかってる。


「さ、ささささささりや!!? 何を言って……!?」

「あ、バレてないとでも思った? カリヤがアーシアに恋煩いしてることくらいお兄ちゃんお見とお……」

「口をふさげサリヤッ!!」

「もご」


顔を真っ赤にさせたカリヤが慌てふためきサリヤの口をふさいだ。だけど時すでに遅し。空中に放たれた言葉を捕まえることはできなくて。

私とフィルは互いに顔を見合わせると、思い思いのことを口々に述べる。


「だからカリヤはアーシアさんに弱いんだ」

「むっつり騎士だったか……」

「貴様ら、覚悟は良いな……?」


殺気全開のカリヤがスッと剣を抜く構えをとった。私はすまし顔、フィルも苦笑しただけ。必死にカリヤは理性で剣を抜くのを抑えているようで、体中ぷるぷると震えている。

そんなカリヤを見てて、ふと気づいた。あれ、普通の剣じゃないわ。


「ねぇカリヤ、その剣なぁに? なんか普通の剣と雰囲気違うけれど」

「……これか」


チッと舌打ちをして、カリヤは体勢を戻す。それから腰に佩ていた剣を机の上にそっと置いた。うん、やっぱり普通の剣と違う。

なんというか、騎士の剣ほど装飾が……いや、嘘。装飾はあるみたい。でもすごく目立たない。いやでもこれ技術的には相当すごいものでは……


「ちょっと抜いてみていい?」

「……傷つけるなよ」


フィルも好奇心を刺激されたみたいで、触って良いかとカリヤに聞いてるし。オッケー出たし。

フィルが剣をすらりと抜いてみる。出てきた刀身は……ん? これ片刃?


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