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F*ther  作者: 采火
本編

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112/153

秘匿とされて

お師匠様が私を支えたまま、アレックスの方を見た。


「リコリスの孫、せっかくのご招待でしたが、急用ができましたので帰らせていただきます」


仕方がないですねとアレックスはぼやきつつ、場を見渡した。


「分かりました。帰り際にもう一度声をお掛けください。馬車を用意させますので。では異常がないと言うならば私は退散します。会場の方が少しざわついているようですし」


では、と立ち去るアレックスを見送った後、お師匠は順繰りに私たちを見渡す。


「火鳥の子らと……貴方がこの子の連れですか?」

「そうだけど」


つっけんどんに言い返すフィルだけど、サリヤがその後ろでわなわなと震えてる。なにあの人、挙動不審じゃないの。


「ちょ、フィルレインっ! 君、その方が誰か知ってるの!?」

「は?」

「うわぁー、それ絶対気づいてない反応じゃないかっ。さてはリコリス団長殿の言った名前を聞き取ってなかったなーっ」

「エルヴィーラ?」

「だったら僕の話を聞いてないのかなーっ」


あー……まぁ、うん。ご愁傷さまです、サリヤ。

あはは、勘の良いフィルだけど今回はその勘も働かなかったと見える。まぁ、人間だしね。


「ニカ。明日、私のもとへ訪ねてきなさい。その足で。分かりますよね?」


その意味を察してため息をつきそうになる。

まだお師匠は私を見定めたいの? 別に良いけれど……


「あ、あのっ」


突然サリヤが自己主張をするかのように声をあげる。お師匠がサリヤの方に顔を向けた。


「なんですか」

「エルヴィーラ教授ですよね? 初めまして、僕はサリヤ・マッキー。少し聞きたいことがあるんだけど」

「何を対価に払います?」


えっ、とサリヤがたじろぐ。


「知識や情報は高い価値を持つものです。他の者から教授願いたいと思うほどの希少価値なら対価が求められるものですよ」


うん、すっごいいじわるだけどそれがお師匠だから。意地汚いというわけじゃなくて、自分で調べられることは自分で調べなさいっていう暗示。それでも知りたいなら、それなりの相応の努力を示しなさいという。

お師匠はふっと表情を和らげる。


「質問によりけりですが、その質問とやらは本当に私に聞かなければ分からないことですか?」


言われたサリヤは一度口をつぐんだけれど、すぐにお師匠の顔を真摯に見つめた。


「魔法使いグレイシアの師であるエルヴィーラ教授に聞きたいのです」

「はい」

「グレイシアは本当に人間でしたか」


───え?

ぱちくりと目を瞬かせてしまう。それって、どういうこと。


「とうとうあの娘も人間性を疑われ始めましたか」


ちょっとお師匠、聞こえてますよ。

じとっと睨み付けてやりたいけれど、妙な動きはしないように我慢我慢。


「……グレイシアについて調べました。出自が抹消されてました。これの意味は」

「あら。私以外に聞いてみましたか?」

「出自の抹消は地位の高い人間にしかできない。リコリス団長に探りをいれてみたりもしましたが、なかなかうまくいかないんですよねー」

「双剣の子にも聞きましたか?」


双剣の? とフィルが首をかしげる。サリヤも一瞬きょとんとしたけれど、すぐにああっと思い出したようだった。


「聞いても良いですけど、僕ら嫌われてるみたいですから」


苦笑するサリヤにお師匠がはて、と首をかしげる。

お師匠はもう二十年近く国を離れていたから、その間にあったことがわからないのよね。だけどお師匠はそのことには触れないでただ、淡々と言った。


「私が何年もの間、国を離れていたことは知っていますね?」

「はい」

「私が国を離れる前、グレイシアの出自は抹消されてはいなかったはずです。アカデミー卒業後の国家資格登録の時に確認しています」


お師匠の言葉を聞いて、サリヤは難しそうな顔をする。というか私もびっくりよ。グレイシアの出自が抹消されているって初耳だわ。

お師匠の顔を見ると小さく口が知っている?と動いたので、指で小さくバツって作った。知るわけないじゃないの。

それからお師匠は思案するように考え込んだ。


「火鳥の子。明日、ニカと一緒に私の家へと来なさい。ただし道案内はニカですよ」

「ニカ・フラメル?」

「そうです。ちょっとした賭け事の途中なので」


サリヤがそれで良いと言ってうなずくと、今度はフィルの方へとお師匠は視線を向けた。


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