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F*ther  作者: 采火
本編

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103/153

夜響会館に集う人

城の敷地内にある、騎士団区画。近衛騎士を輩出する中央騎士団の駐屯所の他に、小さいながらも他騎士団の出張所もある。そして今回、リコリス騎士団長主催の交友会が行われるのは、夜響会館っていう騎士団の多目的用ホールだった。たぶん、参加者が多くてアレックスが国から借りてる屋敷では無理だったのね。

城に入るためには身分証が必要。サリヤとカリヤは魔法使いと騎士っていう身分があるけど、私達にはないからどうするつもりなんだろうって思っていたら、どうやら主催者の直筆サイン入りの招待状がそれの代わりになるらしかった。弛くないかしら、警備。

馬車に乗ったまま入城し、騎士団区画まで進む。騎士団区画は南側の城門から割りと近いところにあるのよね。時間をかけずに夜響会館にまで着いてしまう。

グレイシアも、この夜響会館でダンスを踊ったことがある。もちろん相手はお父さん。あれはそうね、騎士団入団式の後に行われた記念パーティだったかしら。季節も、そう、これくらい……


「ほらニカ。手」


馬車の中のお姫様に手を差し伸べるのは、あの時の王子様じゃない。お姫様も、あの時とは違うの。


「ありがと」


フィルの手を取って、そっと馬車から降りる。ドレスの丈は短くて、昔のように踏んづけたりはしない。長かったドレスを着るのは、まだ先の未来。

フィルのエスコートでホール内へと進む。私たち二人の前にはサリヤとカリヤが並んで歩く。玄関ホールで受付が行われていた。


「おっ? カリヤ。珍しいな、兄弟か?」

「ああ、バッカス。貴殿は今、こちらの期間だったか」


三十代くらいの、ちょっとニヒルな雰囲気の騎士がカリヤに話しかけてくる。腕章の紋はリコリス騎士団のもの。

騎士は地方と中央と行ったり来たりする。中央騎士団から地方に派遣されることもあれば、地方から中央へ派遣されたり。どういった理屈かは騎士団組織の規則がややこしいから割愛。カリヤは騎士団の所属を変えて、今リコリス騎士団にいるわけだけど、派遣なら騎士団の所属を変えることまでしなくていい。何か事情あっての事なのかしら?


「おい、後ろの二人は?」

「騎士団長の客だ」

「ほー、団長の。これまた可愛い客だな」


ぱちんっと綺麗なウインクを飛ばされた。……あ、うん、突然のことで面食らったわ。


「そういやあ、カリヤ。お前聞いたか?」

「何をだ」

「おいおい、知らねーのかよ? お前じゃなかったけ? 十数年前に死んだ魔法使いについて調べてたのよぉ」


あ、なに。カリヤとサリヤって結構なり振り構わずに調べてたの?


「……まぁ、そうだな。俺の主が調べていたのを手伝っている」

「主って言っても、お前の兄弟じゃねぇか。かーったくるしいねぇ!」


バンバンッ!て思いっきり背中を叩かれるカリヤ。びっくりしたようにちょっとつんのめってる。あはは、面白い。


「笑うなニカ。つられて笑いそう」

「笑いたいなら笑えば良いじゃない」


フィルと二人であのカリヤが良いように扱われてるのを見て、顔を真面目に取り繕うとするけど、やっぱり駄目。カリヤに睨まれちゃったわ。

すすすと二人でカリヤの視線から逃れようとちょっとだけ距離をとった。


「それで、バッカス。何か言いたいことがあるんだろう」

「おうおう、そうだった。お前知ってるか。『光失千里の魔法使い』」

「こうしつせんり?」


カリヤが反芻する。こうしつせんり……なんか聞き覚えのあるような、無いような……硬質戦利の魔法使い?

フィルも首を傾げてる。その中でサリヤだけが一人分かっているように口を開いた。


「参加者名簿を見て目を疑ったけど、やっぱり来るんだね。エルヴィーラ・ケーンス。隣国派遣されていた魔法使いだよ」


エルヴィーラ・ケーンス? ……エルヴィーラ? こうしつの? ……光失千里の?


「え、ええええええええええ!!?」

「うっわ、びっくりしたじゃねーか」


まずいまずいまずい!! エルヴィーラいるの!?

アレックスよりヤバイのがいるなら、私こんなところ来ないわよ!!


「なに? ニカ・フラメル、彼女知ってるの?」


知ってるも何も……あ、いや、うん、言えないから。これグレイシアのだから。

え、でも今更叫び声あげちゃったし、えええ、どうしようっ。

ううう、お願い帰らせて!! 切実に!! 帰りたいの!!


「彼女は国の中でも数少ない光属性。盲目であるけれど、精霊との契約と、生まれながらの能力で人の心が読めるんだ」


ひぃぃぃぃぃ、帰らせてぇぇぇぇぇ!


「……なぁサリヤ」

「なーにー?」

「さっきからニカの様子がおかしいんだけど。ぱくぱくと魚みたいに口開けてる」

「面白いからほっといたらー?」


いやあ! 帰らせてぇっ!

ほんと駄目よ!! あの人に捕まったら最後、どれだけ弄り倒されからかわれることやら……! あぁ、想像しただけでも恐ろしい!

グレイシアが生きてるうちに隣国に使者として派遣されて以来、音沙汰なくて存在事態も脳内から抹消しかけたのよ……。うぅ……グレイシア時代のあれこれが思い出されるぅ……。


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