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F*ther  作者: 采火
本編

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102/153

皆さんお似合いですね

本を読んでいれば、パーティーの時間はすぐにやって来た。夕方からという話だったけれど、ドレスの着替えとかの諸々の準備で、昼過ぎからはすっかり気分がパーティーに向かっていた。

たった一日で私のために仕立て直されたドレスは、昨日のよりもしっくりと体に馴染んだ。

ブラウンとイエローの、ウエストでふんわりと膨らんだドレス。丈は膝まで、アシンメトリーになっていて、片側にフリルが重なっていた。頭にはレモンバームのヘッドドレス。

お化粧もしてもらって、髪を結ってもらう。嬉々としたアーシアさんとロッティさんに飾り立てられて、少し疲れたのはここだけの話。

着飾り終わったらもう屋敷を出る時間だった。背伸びをするくらい高いヒールをはくのは本当に久しぶりで、歩き慣れずにふるふると生まれたての小鹿のような歩き方になってしまう。

四苦八苦しながら玄関ホールまでたどり着くと、着飾った男性陣が私を出迎えた。


「へぇ、やっぱり女の子のドレスは華やぐねー」


サリヤは魔法使いの正式ローブ。深い藍色のロングコートのようなローブの上から、属性を表す、あの火山の地肌のようなマント。樫の杖を携えて、これぞ魔法使いという雰囲気をかもしているわ。


「馬子にも衣装か」


端的に言い放ってきたカリヤは騎士の正装。赤を基調とした白の衣装に、リコリス騎士団の紋章を刻んだスカーフと腕章。

騎士団の衣装は東西南北中央騎士団によって色が決まってる。東のリコリス騎士団は赤色ね。団の名前が変わるごと、つまり騎士団長が変わるごとに紋章も変わるけれど、それはスカーフと腕章、それから簡略衣装用のピンバッジに刻まれる。騎士団長が変わるごとに紋章が変わるなんてめんどくさいけれど、きちんと意味があるんだってことを昔、アレックスから聞いたわ。


「…………」

「……言いたいことあるなら言えよ!?」


じとーっとフィルを見たら、フィルは困った顔で抗議の声をあげてきた。うーん、なんか、ね?

フィルは白のタキシード。蝶ネクタイがわりのスカーフは黄色で、袖口とか襟元には金の刺繍が入ってる。なんか夜のお店で女の人を接待してる人みたい。


「お父さんの方が絶対かっこいい」

「言うに事欠いてそれかよ」


えー、私フィルの隣歩くの嫌だなー。変な注目浴びそう。


「さっさと馬車に乗れ。遅れるぞ」

「はいはーい」


カリヤの急かす声に乗り気なのはサリヤだけ。私やっぱり行くのやめたいー。アレックスに会いたくないー。


「おら行くぞニカ」


ぐいっとフィルが強引に私の腕を引っ張る。慣れないヒールの私はそのままバランスを崩して、フィルの方へと倒れこんだ。おっと、と呟いて私を抱き止めたフィルに、見送りに来ていた数人のメイドさんから黄色い声が。

なんなのよもー、王都の人たちってばフィルのお顔好きなの? 移り気ねぇ。ちょっとむかつく。

むかたいたついでに、いつもより高くなった慎重を活用してフィルの鼻をつまんでやる。


「いでででで」


赤くなるまでつまんでやれば、フィルは涙目で鼻を手で覆った。


「あにしやがるんだよっ」

「ふーんだ、お父さんよりかっこよくないのにちやほやされるからよ」

「なんだそれ理不尽!」


理不尽じゃないわよー。理にかなってるわよー。ただし私のみだけどね!!


「貴様ら、さっさと乗れと言ったのが聞こえなかったのか」


短気なカリヤに急き立てられて、馬車に乗り込む。今回は御者台にはカリヤだけ。フィルは私とサリヤと一緒に箱形の中へ引っ込んだ。


「さささ、カリヤ行こーよー」

「分かっている」


カリヤがメイドさんたちに留守を頼むと言付けて、馬に鞭を打つ。ゆっくりと歩き出した馬と一緒になって、馬車の車輪が音を立てる。

ちょこんと座席に座ってその振動に身を揺らしていると、サリヤが出発して間もなく話しかけてくる。


「どう? 進んでる?」

「一日二日で何ができるのよ」

「まぁ、そーだよねー」


聞くだけ無駄じゃない。

一拍間を置いて、サリヤは言葉を繋げる。


「僕もさぁ、ここんとこあちこちに顔を出してたんだよねー。研究資金の融通のこともあったけど、それ以上に結界系統の魔法使いとか神話研究者とか。今まではグレイシアが鍵を握ってるって思ってその身辺を探っていたけど、自分達で情報を掴め始めたからさ」


うっわ、グレイシアの身辺調査とか……いやまぁ、死んでるけどさ、一応私よ? 本人の前で貴方のストーカーしてました、って言われるようなものよ? なんだか気持ちのいいことではないわよね。それについて言及しても、意味のないことだからしないでおくけれど。


「今日の参加者には多岐にわたる専門家が沢山いるよ。だから、できるだけ多くの人と言葉を交わしてみて」


あ、はい、そゆこと。

なんか色々と手はず整えてくれるのねと思ったら、これも情報収集の一環なのね。これはカリヤの心遣いだけではないということ。サリヤと打ち合わせでもしていたのかしら。だから多少なりとも強引に話を進めたのね。

はいはい、分かりました。


「私はフィルと行動していれば良いのかしら?」

「うん。たぶんキミのお父さんの名前を出せばだいぶスムーズに話ができると思うよ。有名人らしいし?」


あんまりお父さんの名前を語りたくはないのだけれど……でもま、正体不明の魔法使いに誰も自分の手の内を見せたくはないものね。

仕方ないから、フィル。頑張りましょ。

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