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禁断のハロウィン ※舞視点

1100pt突破記念の2つ目的ななにかです。

続きはハロウィンまでに投稿したいですね(希望

 お疲れさまでした。と皆の声が合わさり、今日の収録はおしまい。

 高校2年生の時の冬に初めて翠さんとラジオで共演してもう3年になる。初ラジオの後、決まったミドリムラジオも、間に何回か休みが挟まったけれど、回数にしてもう100を超えるらしい。

 それだけ続くと、コーナーの数なんてもうわからないくらいだし、中には1回しかやらなかったものもあるしで、時々何やっているんだろうなと思うこともあるけれど、どうにかこうにか続けることができている。


 ついでにわたしの肩書も、アイドルなのか、歌手なのかわからない。一応アイドルとして名乗ってはいるけれど、翠さんの後輩のほうがアイドルっぽいことをしていると思う。

 年齢的にもアイドルというのは厳しいものが出てきたし、事務所からはどっちでもいいよ、と言われている。事務所っていうか、後援者っていうか。

 ネットでの活動も続けていて、こちらもおおむね好調だといっていい。


 難しい話は置いておいて、大学生になっても相変わらずやれているということだ。

 それで今日はミドリムラジオの収録があって、もうすぐハロウィンだねってことで、企画を考えてから帰ることになった。

 相変わらず、適当なスタッフだと思うけれど、企画を考えること自体は結構楽しい。

 何故か抑えられていた一室に移動して、折り畳みの椅子と机を使って翠さんと企画の話をするのだけれど、当然のように桜ちゃんと希さんがいる。


「今から舞ちゃんとのイチャイチャタイムが始まるのに、なんで当たり前のように2人がいるの?」

「嫌ですね翠さん。遊びに来たからに決まっているじゃないですか」

「そうだよ翠。たまたま収録日が重なってたから、遊びに来ただけだよ。

 それに収録に乱入するのは我慢してたんだから」

「普通は乱入しないよ!」


 大声を出したせいか、単純に興奮しているのか、翠さんがぜーぜーと息を切らせる。

 今に始まったことではないので、慣れたやり取り。わたしは苦笑いで眺めているだけなのだけれど、日常的な雰囲気があって嫌いではない。

 でも、放っておくとこのコントはいつまでも続くので、ひとまず終わらせることにしよう。そもそも、収録現場に入ってこられた時点で、スタッフというか上の人公認なのだ。


「それでハロウィンの企画ですけど、どうしましょう?」

「ベタなのは仮装して放送することですよね」


 話を振れば、すぐに桜ちゃんが乗ってきてくれる。それなら最初から、話を逸らさなければいいのにと思わなくもない。

 そんな桜ちゃんの提案に、翠さんが首を傾げた。


「映像があればいいんだろうけど、ラジオだと音声だけだから、私達が楽しんでいるだけになるよね。

 舞ちゃんの仮装というか、コスプレはぜひ見たいけど。それだけで、1回分の尺使っていいくらい語るけど」

「それなら、普通に映像付きでやったらいいんじゃない?

 ネットラジオだから、出来ると思うよ。機材はあるはずだし」

「駄目です。舞ちゃんの露出度高いコスプレを一般公開するわけにはいきません」

「露出度高いコスプレはしないです」


 翠さんの変なスイッチが入ったので、きちんと釘を刺しておく。

 とぼけた顔で「しないの?」と聞いてくるので、「しないです」と再度繰り返せば翠さんは引き下がる。

 引き際はしっかり見極めてくれるので、こういったやり取りも楽しくできる。

 だいぶ遠慮がなくなってきたのも、本当だけれど。


「コスプレといえば……」


 そんな楽しい雰囲気に流されて、ついそんなことを口走ってしまった。

 ちょっと思うところがあったのもそうだし、桜ちゃんがいるから都合がいいなとも思ったけれど。

 でも、桜ちゃんが相手だと、どうしても言ってみたで終わらなくなりそうで怖くもある。

 そしてわたしはすでに、桜ちゃんにロックオンされてしまったようだ。もの言いたげな目が、こちらをとらえて離さない。


「コスプレといえば、どうしたんですか?」

「去年は何もしなかったなって」

「違いますよね?」


 一応抵抗はしてみたけれど、逃げられなかった。諦めて自白する。


「コスプレともちょっと違うんだけど、遊馬君の女装ってちょっと見てみたいなって。

 でもそれを遊馬君やユメちゃんに言うのは、デリケートな問題だから」

「ハロウィンにかこつけようと思ったわけですね」

「ほら、ユメちゃんが男の人の格好をしているのってたまに見るけど、遊馬君がっていうのはないから」

「あー、それはちょっと気になるね。遊馬君の女の子バージョンはユメちゃんだけど、遊馬君に女の子の格好っていうのは気になるね」


 翠さんがわたしの意見に賛同してくれるけれど、嬉しい半分困った半分といったところ。

 希さんは「見たい、見たい。でも、見たらいけない気もする。どうしよう」とつぶやいている。


「やってくれるかは本人に尋ねてみないとわかりませんが、説得できないこともないでしょう。

 いっそ、ハロウィン企画ということで、女装させた遊馬先輩を連れ歩きますか?

 確かこの辺りでもイベントありますよね」

「本人がやって良いっていうなら、良いんだろうけど……」

「了解です」


 わたしの言葉が終わらないうちに桜ちゃんが携帯を取り出し、どこかに電話をかける。

 遊馬君のところにかけているのだろうけれど、不用意な発言から、どんどん話が進んでいく。というか、桜ちゃんが進めてしまう。

 遊馬君が断れば無かったことになるし、黙って成り行きを見守ろう。


「はい。そうです、桜です。ええ、ええ。お久しぶり……ってほどでもないと思いますけど。

 それで電話した理由なんですが、もうすぐハロウィンじゃないですか」


 電話している桜ちゃんを、わたし達3人がじっと見守っているという、不思議な状況。

 何か電話している人の話を聞くのは、いけないことをしているような気分になる。特に電話の向こうが気になる相手ならなおさら。

 でも何を話しているのかとっても気になる。


「それでラジオでハロウィン企画をすることになったんですけど……はい、丸投げされまして。

 いろいろ案は出たんですけど、遊馬先輩の女装を見たいということに決まりました。

 いえ、桜じゃないですよ。舞さんが気になるって話です」


 確かにそうだけど、わたしから言い始めたけれど、それを遊馬君に伝えるのはやめてほしい。

 抗議したいけれど、してもボロを出すだけだろうから、桜ちゃんをにらみつける。けれど全く堪えたような様子はない。

 当然なのだけれど、釈然とはしない。わたしに出来ることは、数分前のわたしを恨むことくらいだ。


「遊馬先輩なら嫌っていうと思っていましたけど、確か後輩ちゃんがいたんですよね。桜たちと同い年だったと思いますけど。

 で、色々と面倒なことになっていましたよね? それなら、今回のことを使って、ある程度誤解を解いてしまえばいいんです。

 ええ、はい。桜のせいってことで良いですよ。そもそも、勝手に人のカバンの中身を見る方が悪いですから、何とでも言いくるめられますしね。

 なるほど、それは確かに当然の話です。すべてにおいて全力を出しますので、覚悟していてくださいね。

 それでは、今から準備を始めないと間に合いそうにないので、これで失礼します。また数日後に遊びに行きますので、その時にどうなったかお教えします」


 わたし達が見つめる中、桜ちゃんが電話を切る。

 翠さんが「どうなったの?」と尋ねるけれど、聞くまでもなく遊馬君は丸め込まれてしまったらしい。

 その代わりに何かしら、条件を付けられたみたいだ。


「とりあえず了承してくれました。ということで、全力をもって遊馬先輩を可愛くしたいと思います」

「「おおー!」」


 翠さんと希さんが片腕を突き上げて、嬉しそうに叫ぶ。

 希さん、吹っ切れたのか。吹っ切れかたが遊馬君のためにならないとは思うけれど、わたしとしては最初から気になっていたので、何も言わない。


「ただし、桜達もコスプレすることが条件です」

「それは仕方ないね。さすがに遊馬君1人だけ女装させて、私達が私服っていうのも変な話だし。

 そもそも、イベントに行くのであれば、周りも仮装しているはずだから私達が浮いちゃう」

「翠って割とこういう話には、好意的に乗っかるよね」

「そりゃあ、これで合法的に舞ちゃんにコスプレさせることができるんだよ?」

「そう考えると気持ちはわかる。遊馬君のコスプレはお金を払ってでも見てみたい」

「わたしとしては、女装した状態でユメちゃんになったらどうなるんだろう、みたいな好奇心とかありますけど」

「遊馬先輩で遊ぶ話はあとでゆっくりしますよ」


 話が盛り上がりかけたところで、桜ちゃんに止められる。

 そういえば、これは企画会議だったっけ。何とか形にして、番組側に許可を貰わないといけない。


「もう1つの条件として、遊馬先輩の後輩を連れてくるかもしれません」

「後輩って言うと、例の泥棒ちゃん?」

「間違っていないですけど、舞さんの中ではそういう認識なんですね」

「なになに? 泥棒ってどういうこと?」


 翠さんが妙な食いつきを見せるので、簡単に教えてあげる。

 わたしもユメちゃんに聞いただけだけれど、要するに新しくサークルに入った後輩が間違って遊馬君のバックを開けちゃって、そこにユメちゃんの下着があったから気が動転したらしく持って帰っちゃったと言うだけだ。

 それから反応がぎこちなかったりするから、要らぬ誤解を招いているんじゃないかと心配していた。


「確かに男子大学生の持ち物に有っていいものではないよね」

「だからと言って、持って帰ってそのまま誤解するっていうのは、あたし的には嫌かな。

 遊馬君の事情的に話せないかもしれないけれど、あらぬ疑いをかけられるってそれだけで、結構ストレスになるし」

「でもまあ、男性相手に女性ものの下着を返すっていうのも、難易度は高そうだよね」

「それは確かに。でも直接じゃないにしても、返せはすると思うよ」


 この話において、翠さんは中立、希さんは遊馬君よりというところか。まあ、事情を知っている側からすると、遊馬君に同情するところだと思う。

 むしろ翠さんは、希さんを暴走させないために中立に回ったのだと思う。


「これ、被害者はユメ先輩なんですけどね。とりあえず、その後輩が来るかもしれません。

 この辺りは確定した段階で連絡を入れますね。といったところで、企画書ができたので読んで持って行ってください」


 いつの間に書いていたのか、確かに企画書が出来上がっている。

 なんだかハロウィンが来るのが楽しみなような、怖いような、そんな不思議な感じで企画書を持って行った。

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