Lv1
恐らく皆様初めまして。こんなところまでご足労いただき感涙の極みです。
もしも自分の作品を読んだことがあるという方がいらっしゃいましたら、この物好きめどうもありがとうございます。
今回はラノベっぽさに重点を置いてきっといつも通りになるそんな予感がしますが、どうぞよろしくお願いします。
「会えない夜に嘆くより 会える時間を想い眠ろう」
女の子の歌声。遠距離恋愛をしている女の子の気持ちを歌っているそれは歌詞に合う寂しくも明るくふるまおうとしている声。それでもとても楽しそうで、かと言って音を外れる事はない。
バックに聞こえる伴奏のレベルも高く、恐らく初めて聞いた人ならプロと聞き間違うだろうが全員が高校生と言うのだから驚きだろう。
「会えない時間が不安でも 大きく首を振って笑おう」
俺が言うのもなんだが、全員が上位クラスだと言っても差支えない。
キーボードを弾いている二年生の志原綺歩は面倒見の良さそうな雰囲気。
一緒にいるだけで安心することができる、このバンドのお母さん的立ち位置のふんわり美人。
ぱっちりと大きな目。白い肌には毛穴一つ見つからず、平均的な身長で髪の毛が長く腰辺りで一つに結ばれている。
これが俺の幼馴染なのだから世の中何があるのかわからない。
二人いるギターは対照的で、一人はややつり目で気が強そうな二年、志手原稜子。
百七十を超える身長も相まってとてもスタイルがいい。
スーっと高い鼻に、キリっとした釣り目で、男子だけに留まらず女子にまで、むしろ女子の方に人気があるカッコいい系美人。
綺歩の友人で男と言うものを下に見る節があるが、ギターの腕も一流で、このバンドに置いて少し腕が劣ってしまうもう一人を補って余りある。
また、実力があれば男であれ一緒に演奏することを許すあたり、音楽への情熱が感じられる。
ただし、採点はかなり厳しい。
ギターの二人目。今までの二人よりも一つ年下の一年生で、このバンド内で下手な部類でも超高校級の腕を持っている初春鼓。
童顔で中学生、下手すると小学生にも見られる彼女の身長は百五十センチほどでそれに見合ってその他いろいろな部分が小さい。
でも、その小さい体でギターを扱うアンバランスさに一部からとても人気だったりする。
大きくクリクリとした垂れ目は小動物を思い起こさせる。
綺歩がこのバンドの安らぎなら、鼓ちゃんはこのバンドの癒し。
四人目はベースの忠海桜。鼓と同じ高校一年生だが、身長は綺歩と同じくらい。
稜子とはまた違った猫のような釣り目。
ふわふわとしたセミロングの髪は柔らかい印象を受けるが、時折見せる表情は小悪魔と言っても差支えない。
むしろ、先輩に対しても毒舌を躊躇わない辺り、小悪魔どころではないが、曰く可愛いから可だと言う意見をよく聞く。
ドラムをやっているのは二年の御崎一誠。
やや暑苦しい感じもするが、ほどほどに筋肉がついていて顔も悪くない。
軽い性格も相まって女子にも男子にも友人が多いようなイケメン。
現在このバンドにおいて唯一の男子と言っても過言ではない、荷物運び第一号。
ドラムの腕としては稜子に認められている男子と言うだけあって随一。
それから最後にボーカル。
身長は鼓ちゃんより少し高い程度で、華奢な身体。
表現力、歌唱力とも上の上。何よりも歌うことを愛しているこの子は何故かダボダボな男子の制服を着ている。
いや、何故かではない。何せ今ボーカルをやっている美少女。それこそが俺、三原遊馬だからだ。
音楽室に最後のギターの音が響き曲が終わる。
全員が全員やりきったという様子でお互いの顔を見合わせていたかと思うと、ギターをやっていた稜子が肩にかけていたギターを背中側へとくるりと回し抱きついてきた。
豊満な胸の感覚が俺を襲うが、少なからず嫉妬心も覚えてしまうのは俺のせいではない。
「やっぱりユメは最高ね。どこかの男とは大違い」
「わたしがそのどこかの男なんだよ?」
「でも、あいつそのものってわけじゃないんでしょ?」
稜子が俺を離すとそう言って、釣り目の目を細めて尋ねてくる。
「ううん。もともと一緒だったんだからそのものって言っても差支えないと思うよ? それに説明したと思うけど、感覚共有しているから抱きついたりすると遊馬にもその胸の大きさ伝わっちゃうよ?」
自分がAカップだと言う事で、ユメは恨めしそうに稜子のそれを見ると睨みつけるように上目遣いをして稜子に言う。
言われた稜子は何とも言えない困った顔をして「そうなのよね」と腕を組む。
「ユメ先輩のは小さいですもんね。つつみんほどじゃないですけど」
後ろの方から声がしたので、首がそちらの方に動くとそこには桜ちゃんがいて大きいとは言えないが形の良いそれを隠さずに悪戯っぽい笑顔を浮かべていた。
「桜ちゃん、いま、あたしは関係ないでしょ?」
「そうよね。おいで鼓ちゃん」
桜ちゃんの言葉に頬をハムスターのように膨らませ、少し顔を朱に染めて怒る鼓ちゃんをユメが呼ぶ。
トコトコと寄ってきた鼓ちゃんをユメは守るように抱きしめながら頭を撫でるわけなのだが、先ほどもユメが言っていたようにその俺に伝わっている。
要するに女の子の柔らかさが直で伝わってくるのだ。
相手が華奢だと言って馬鹿にしてはない。
女の子と言うものは男とは一線を画すまでに柔らかいものだ。
『俺に伝わってるの忘れてやしないか?』
俺自身鼓ちゃんの柔らかさを堪能し終わったところでユメに対してそう言うと、ユメが慌てて鼓ちゃんを離す。
「どうしたんですか?」
「ごめんね。遊馬に伝わってるの忘れてて」
驚いた顔で尋ねる堤ちゃんにユメが謝る。
鼓ちゃんも先ほどの稜子のように困った顔をしたが、首を振って口を開いた。
「正直よく分かっていないんですけど、ユメ先輩は女の子なんですよね?」
「まあ、そうね」
「それなら、大丈夫です」
そう言って花が咲いたように笑う鼓ちゃんをもう一度撫でまわしたいと思うのは俺自身の意思かそれともユメの意思か。
まあ、俺がそう思ったってことは殆どの場合ユメもそう思ったということなのだろうが。
「それにしても、元が遊馬だとは思えないほどの美少女だよな」
今度は一誠がそう言って俺……と言うかユメの目を近い距離でじっと見つめる。
男に見つめられたところで俺は嬉しくないし、恐らくユメも一誠に見つめられても困るだけだろう。
「まあ、その意見には同意だが、俺も見てるんだからユメ見つめんな」
主導権の戻ってきた身体で一誠を叩く。
「ちぇ、もう十五分経ったか」
一誠は悪びれずそう言うと、ユメに合わせて屈んでいた身体を起こす。
その様子を綺歩がスクスクと笑いながら見ていた。
当たり前のようにも感じるが、俺の中にユメが生まれてまだ数日ほどしかたっていない。