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中距離恋愛

作者: 友千

「おやすみ。バイバイ。」

「うん。おやすみ。バイバイ。」


プープープー


この電話を切ったあとの音が嫌いだ。

今の今まで話をしていたのに

急に現実に戻され

無性に寂しさを覚える。


電話の相手は

もうすぐ付き合って1年になる彼氏だ。


彼は誰にでも優しい。でも、人の頼み事を断るのが苦手で、人との付き合い方が不器用で、話すのが苦手だから、私といる時は大概私が話をしている。

物を選ぶ時の品定めが長い。私は服でもなんでも一度これと決めたらすぐに買うのだが、彼はもしかしたら他に良いものがあるかもしれない。と店の端から端まで見る。

私が食事やお弁当を作ると全て平らげる。だけど、何が食べたい?と聞くと何でも食べるよ。と一番困る回答が返ってくる。

びっくりした時の顔が目が飛び出るんじゃないかと思うほど目を丸くする。


私が一年間見てきた彼の姿だ。

いいところも悪いところも見てきた。

でも、それを全部含めて私は彼が好きだった。



転機は突然やってきた。


彼が転勤になったのだ。

勤務先はここから下道で二時間程、高速だと一時間くらいかかるところだ。


私たちが付き合っていることを知ってる友だち達はそんな距離は遠距離とは言わないよ。と励ましなのか、なんなのかわからない言葉を私に掛けてくれた。


出発日は四月一日。

それまでに遊んだりする時間を彼が作ってくれると思っていた。勿論、彼もそう思ってくれているだろうと思っていた。


四月一日の一週間前くらいまで

仕事が忙しいのか

あまり連絡がとれなかった。

仕事のことしか今は考えられないから

遊ぶとか考えられない。と言われた。


だから、やっと仕事の落ち着いた三月二十六日に連絡がとれた。


いつ会えるかな?


引っ越しの準備があるだろうから

遊べる日は限られているだろうな。と思いつつ聞いてみた。


明日は前々から仕事仲間と焼き肉に誘われてたし、次の日は家具を見に行くし、二十九日は一度勤務先に顔出しに行くし、三十日は車の部品を変えなきゃ行けないし、三十一日は引っ越しだから…


彼からの返事に私は言葉を失った。

やっと発せられたのは


わたしのじかん…は?


その答えは返って来なかった。

何も考えていなかったのだろうか…

沈黙を破ったのは私だった。


私も前々から『遊べる?』って聞いていたよね?

私のこと何も考えてなかったの…?

ねぇ

答えてよ。


ごめん。


彼の言葉からは

言い訳でも、遊べる日を作るという答えでもなく

ただの謝罪だった。


なんで謝るの?

遊べる日作ればいいじゃん!


ごめん。


ただただそれしか言わなかった。

その時は誰かが背中を押した気がした。

それは決断の時だと…


別れようよ。

今でもこんな近くにいても気持ちは遠いのに

遠くにいって、もっと気持ちが遠くなるなんて耐えられないよ。

私、形だけの彼女になりたくないよ。


…。


今まで楽しかった。

ありがとう。

バイバイ。


あ…


何か言い掛けたのは分かっていた。でも、私は携帯を切った。


その日、私は寝ることもなく泣いていた。

大好きだった。ただ好きだった。

別れたくなかった。

もっと一緒にいたかった。

泣いて泣いて泣きやむことはなかった。



次の日から私は仕事にのめり込み、日にちだけはどんどん過ぎ、気がついたらもう彼が旅立つ日だった。

三十一日は日曜日で私は仕事もなく、ただボーッとしていた。


昼食作るかな


冷蔵庫を開けたが、何も入ってなかった。


そういえば、買い物行ってる時間なくて何も買ってない。スーパーにでも行くしかないな。


外に出ると春風がそよそよと吹いていた。


あの人とお花見に行った日もこんな天気だったよな。


なんて考えてるうちに滴がポタっと落ちた。自分の涙だとは気がつかなかった。

空は晴天だった。


なんでこうなってしまったのだろう。

なんで別れるという選択しかできなかったのだろう。


ついにしゃがみ込んでしまった。

その時、肩をトントンと誰かが叩いた。

振り返ると同時に期待で胸が高鳴った。

だが、振り返るとそこには幼なじみの友だちが立っていた。


「どうしたの?こんなところで?」


もう幼なじみにしがみつくように


「もう直也には会えないの。もう直也の笑顔みれないの。直也が私から離れていくの。」


意味のわからないことを言っていることはわかっていた。


「なおくんとどうかしたの?今日なおくん引っ越しでしょ?」


「別れたの。でも会いたいの。私から言ったのに、まだ付き合っていたいって思っちゃうの。でも、もう直也は私から離れていくの。」


溢れていく言葉をただ放った。


「千尋。どんな別れ方したかわからないけど、本当にこれでいいの?前にさ、千尋話してくれたじゃん。『直也は話聞くだけ、あまり話してくれないんだよね』って。私たちの前ではそんなふうに見えないくらい、話するよ。でも、それって千尋には無理して話してないんだよ。千尋の前では素のままのなおくんなんだよ。そのなおくんとどんな話した?ちゃんと話した?」


ハッとした


『あ…』

のあとなんて言おうとしたんだろう。

なんで最後まで聴かなかったんだろう。


今度は優しく幼なじみが背中を押してくれた。


「行ってきな。」


「ありがとう!」


涙を拭って、走って直也の家に向かった。

走らずにはいれなかった。

ただただ直也に会いたかった。

直也の話を聞きたかった。


直也の住んでいるアパートには

もう直也の車もカーテンもなかった。


遅かった…。

直也は行ってしまった。


ハァハァ出る吐息を抑えながら

家に戻ろうとした。

目の前をピンクの物が舞った。


そういえば、二人で来たお花見はこのちかくだったな。


自然と足がそちらに向いた。

桜は満開だった。

去年はもう葉桜に近くなってて

『来年は満開の桜が見たいね』

と話したな。


歩いている先に私と同じく桜をじっと見ている人がいた。

直也だった。


直也は近づいてきて


「今年は満開の桜見れたよ。」


そう言って私を見た。


「なんで、ここにいるの?

引っ越したんじゃなかったの?」


「忘れ物しちゃって。

この満開な桜を。」


「じゃあ、もう行くんだね?」


「満開の桜を見てたら思ったんだ。

あの時のお弁当がすごく美味しかったって。また作ってくれない?」


「…うん。」




「もしもし?」

「もしもし?今日は何かあった?」

「今日はね…。」

私が実際に体験したことを少しロマンチックにしてみました。付き合うってことは辛いことが多い。今回みたいに遠くに離れてしまったり、二人の意見が合わなかったりして悩むことが多々あるでしょう。でも、相手の話をよく聞いて、二人で解決していけたらいいなっと私は思います。因みに私自身今中距離恋愛してますが、ラブラブです( ´艸`)

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