Ⅶ. True Fairy-tale
第7話 「真実のお伽話」
《ストーリー上、R15の暴力・流血、エロティックな表現、好ましくない言葉遣い、宗教的な描写などが一部含まれることがあります。と言っても、マイの書くものなので大したことはないとは思いますが……念のため。これらが苦手な方はご注意下さいませ》
聖書はフィクションファンタジーのベストセラー本である、と言ったのは、何処の誰であっただろうか。
けれど、もし仮にそれが……その内容が真実だったとしたら――?
きっと、これまで知っていたお伽話は、酷く変質してしまうことだろうね。
† True Fairy-tale
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人間は神と悪魔の間に浮遊する。
パスカル
気の遠くなるような古の時代。“天地創造”の時。
そこに、「神」という存在がいたとして――。
事の起こりは、一つの世界が、「天界」、「人間界」、「地獄」――三つの世界に分けられたことから始まる。
その原因はいたって単純明確。
天と“魔”の「戦争」だ。
神に最も愛されていたとされる大天使が、その慢心から神に成り代わろうと反旗を翻したのである。
しかし、最後はこの戦いに敗れた裏切り者とそれに従じた者達は“悪魔”として、果て無き地の底の世界へ落とされることとなり、神は戦場から離れた。
こうして三つの世界に分裂したのである――この時、人間界にはその戦いの痕跡として、神の加護を受けた“白の一族”、魔の力を宿した“黒の一族”と呼ばれる人間達が生まれたが、それはこの際省くことにしよう――だが、完全に切り離せた訳ではない。
今尚、この三つの世界は遮断されながらも重なり合うようにして存在しているのだ。交わるように横一列に三つの円を並べたのと同じく。
天にも地にも通ずる人間界は特に、あらゆる規則や制約が設けられ、それによって守られている。人間である“一族”でさえもこれに縛られている。
例えば――。
天使は偏向を避ける為に、人間界への物質的な干渉は出来ない。
だが、現状を良しとし、律儀に守っているのはせいぜい彼らくらいのものだろう。
では……悪魔は?
悪魔の第一の制約、それは「人間界への不可侵」だ。
ところが、郷に入っては……が守れない輩がいるのが世の常。
悪魔は人間界に入り込み、恐怖、絶望、背信、悪心、狂気を殖やし、殺戮と血肉の饗宴でその腹を満たして力を得ようとしている。
「戦い」の傷跡から極稀に生じる、狭間の歪みに紛れ込んで。
そしてやがては、人間界を再び我が物にしようとさえ――。
とは言っても、高位の悪魔が通れる程の巨大な歪みが生じることなど皆無に等しく、仮に下級悪魔程度が侵入出来たとしても、そう思惑通りにいくものでもない。
「人間界でのあらゆる危害の禁止」。
「人間界での魔力の抑制」。
これらにより、事実上無力に等しくなってしまうのである。ホラー映画に出てくる幽霊と大差はない。
そうなれば、いずれは勝手に消滅してしまう。数少ない同胞内での共食いで力を蓄える強者もいるにはいるが……。
だが――いかなる法律にも掟にも、「抜け道」は存在するものだ。
その方法は二つ。
一つ目。
“イデア界”。
言うなれば、どの世界とも隔絶された異空間である。
そこでは、人間界の規則も制約も通用しない――人間界ではないのだから。
つまり、イデア界の中では、悪魔は本来の魔力を取り戻し、この世に在らざる者達を召喚し、人間を喰らうことも可能となる訳だ。
しかし、イデア界を創れる者――“支配者”の素質を持つ者も、その莫大な負荷に耐え得る者も、どの世界においてもそういるものではないのが現実だ。
と、ここで問題の二つ目だ。
それが――“結界”である。
擬似的なイデア界と言えば、分かり易いだろうか。
魔法陣。
祭壇。
生贄。
これらによって、主に“結界”は形成される。
しかしながら、大いなる時間と手間と知識が掛かる割には、限定的で、不安定且つ脆い。勿論、構築者の個々の能力による差異は多分にあるが。
例え瞬間的であってもこの“結界”の中に紛れ込んだ、あるいは喚び寄せられた悪魔達は、人間を引きずり込み、あるいは取り憑き、そしてあるいは害為すことを可能とするのである。
それが、今の人間界の見えざる裏の側面なのだ。
悪魔は、確かに此処に存在しているのである――。
格言はこちらから引用させて頂いております↓
『世界傑作格言集』http://kakugen.aikotoba.jp/human.htm
※『クレアシオン』……天地創造、この世界の始まり。
まさかの説明回でした\(^q^)/世界観とか設定とかの説明って、どう書くか、作中のどこに入れ込んでいくか、毎回悩みます。コメディ要素を入れ込む余地もない!(笑)