■○○○○の場合■
読み終わった小説を机の上に置いた。
強張っていた身体を伸ばし、少し唸った。
気が付けばもう深夜帯だ。
窓の外も暗くなっている。机の上を照らすスタンドライトも、一段と明るく感じる。
改めて小説の表紙を見た。題名通りの小説だった。そう単純に思った。
話の内容も単純だ。
主人公が替わっていく短編小説で、それぞれが体験した恐怖体験が描かれていくミステリーだった。
読み終わったばかりの小説を思い出し、目を瞑った。
そういえば……ある疑問を感じ、再度小説を開いた。
読んでいる途中に気が付いたのだが、主人公七人の苗字に共通点があった。
それが気なっていたのだ。
そこに何か隠されているのでは? 直感でそう感じた。
一人一人の苗字を確認した。
それだけじゃわからなかったので、引き出しから出したノートに、それぞれの苗字を書いていく。
やっぱり共通点はあった。でも何も隠れているように感じない。
気のせいだろうか。
それでも何か気になって、何気なく苗字をひらがなに変換して新たに書いていってみた。
何も見つからない。
試しにひらがなにした苗字の頭文字を並べて読んでみた。
でも何も無かった。
気のせいだったのか。
頭に両腕を回し、天井を見た。そして、もう一度、小説を思い返してみた。
……そうだ。そうだった。苗字以外に、共通点があった。
そう思い、改めて自分で書いたひらがなを見つめなおした。
そう、小説の題名。この小説は題名が表す通り、それぞれの物語は後ろや背後に関係する恐怖体験を描いていた。
だからこの苗字の頭文字を後ろから読んだら……。
謎に気が付いた。
その瞬間恐怖を感じた。
そして、知ってしまった事に後悔した。
急に自分の背後に気配を感じた。
振り向くのが怖かった。
振り向いたら、自分自身がこの小説の主人公達と同じ結末を歩むように感じた。
恐怖を拭い去るように頭を振った。
そしてゆっくり後ろを振り向いた。
完
最終話に出てくる小説は、この小説です。
だから主人公は…。