R15な魔法しか載ってない魔導書を見つけた。〜尿意を操る魔法〜
それは、梅雨が始まり校舎の不快指数が急激に高まっていたある放課後のことだった。
僕は、図書委員として閉架書庫の清掃と整理を行っていた。
閉架書庫と図書委員は呼ぶが、この部屋の正式名称は図書準備室。
教室の半分ほどの広さの部屋に本棚と段ボールが並ぶ。半分物置のような部屋だ。
僕はそこで、見たことのない仰々しい装丁の本を見つけた。
『少し叡智な魔法の使い方』
本に書かれた文字は日本語でも英語でもない、初めて見る言語だった。
それなのに、本に触れた瞬間、僕はそこに書かれた文字の意味を理解できた。
その本の放つ奇妙なオーラに導かれるように、僕は本を開いた。
表紙を捲ると前書きがあった。
これも見知らぬ文字だったが、なぜかスルスルと意味が読み取れた。
そこにはこう記されていた。
「この本を最初に手に取った幸運な君へ。
この本には、私がこの異世界へ渡ってから数十年をかけて編み出した数々の叡智な魔法の使い方を記す。
私はこの世界で十分楽しんだ。
どうか、私から見て元の世界に暮らす君も。この本をうまく使ってくれることを願う。
この本を使えば、君の欲望を満たす事は容易いだろう。たとえ君がどんな変態であっても、この本はその望みを叶えることができるはずだ。
だが、度を超えて世界の均衡を破ってはいけない。
度を超えた魔法は、君の世界を危うくするだろう。
だから、この本を使った行為ははあくまでも15禁に留めること。
もし破ったら、それ相応の罰が、君は降りかかるだろう」
誰かのイタズラかと思ったが、それだと見たことのない文字を読めるというこの現状の説明がつかない。
さらに読み進めていくと、この本がどういうものなのか何となく理解できた。
叡智な魔法とはつまりエッチな魔法ということだ。
この本には、少しエッチな魔法がたくさん書いてある。前書きでは15禁までと書かれていたが、使い方によっては余裕で18禁になってしまいそうな魔法もたくさんある。
これがもし本物の魔導書なら僕の平凡な高校生活が大きく変わるかもしれない。
誰もいない蒸し蒸しとした閉架書庫で、僕は小さな興奮が胸の奥で灯ったことを感じながら、『少し叡智な魔法の使い方』を夢中で読み進めた。
読み進めるとすぐに、"読めないページ"が現れた。
元々見たことがない文字なのでそれが当たり前なのだが、さっきまでは書かれている文字の意味が頭に流れ込んできたのにそれがパタっと途絶えたのだ。
慌てて目を動かすとページの隅にメモ書きがあった。
【より高度な叡智魔法を使うには、まずは初歩的な叡智魔法をマスターしなければならない】
つまり、今の僕にはまだ使えないということか。
裏を返せば、読めたページの魔法は本当に使えるのかもしれない。
「試してみるか」
僕は興奮の火が大きくなるのを感じながら、魔導書を閉じて鞄に仕舞った。
頭の中では、この魔法をどこでどう使うか、誰に使うのかそのことだけがぐるぐると巡っていた。
*****
『少し叡智な魔法の使い方』を拾ってからの数日間は、何をしててもこの本のことが頭から離れなかった。
早く試したい。という気持ちが溢れていたが焦ってはいけない。
もしこれが本当の魔法の書であれば大スクープだ。
SNS全盛のこの時代に、僕が魔法を使えるとこがバレればどうなるか想像もつかない。
初めて使うシチュエーションは、慎重に考える必要があった。
そんな風に、数日間悶々と過ごしていた。
そしてその機会は不意に訪れた。
その日は土曜日だった。
うちの図書室は自習する生徒のために土曜日も朝9時から夕方16時まで開放している。
基本的には教師が持ち回りで施錠の管理をするのだが、その日は担当だった教師のお子さんが熱を出し、昼過ぎに帰ってしまった。
僕はその日、ほかの魔導書がないかを調べる為に登校していたのだが、帰り支度をする教師に見つかり、図書委員だからという理由だけで施錠の管理を任されてしまった。
ちなみに、その日は夕方まで閉架書庫をくまなく探したが同じような本を見つけることができなかった。
そろそろ図書室を閉める時間になったので閉架書庫を出ると、図書室には1人の女子生徒が残るのみだった。
女子生徒の足元を見ると赤色の上履きを履いていた。
うちの学校は学年ごとに上履きの色が違う。
赤は三年生が使っている色なのでこの女子生徒は、先輩という事になる。
「あの、そらそろ閉めますよ?」
後ろから声をかけたが反応はない。
ヘッドホンのせいか、問題集に集中しているせいか、僕のことに気づいていないようだ。
仕方なく貸し出しカウンターに座って様子を伺う。
貸し出しカウンターからは女子生徒の横顔が見えた。
その顔には見覚えがあった。図書室の常連の一人だ。
学校の図書室なんて場所は、生徒の大半には用がない場所であり、図書室に通うような生徒のほとんどは図書委員になっている。
だから、図書委員でもないのに図書室に通う生徒というのは、それだけで目立つ。
僕も何度か貸し出し手続きをしたことがあるので名前を覚えていた。
確か森崎先輩だ。
とても可愛らしい人だが、小柄でおとなしい雰囲気のせいで目立っていない印象がある。
(この人になら試せるかもしれない)
僕の中の欲求がムクムクと起き上がってくるのを感じた。
僕は廊下に視線をやり、人が入ってくる気配がないことを確認すると、カバンから魔導書を取り出した。
はやる気持ちを抑えながらも、慎重にどの魔法を試すかを考える。
今の僕に読める呪文はそう多くない。
選ぶのにかかった時間は数秒だった。
魔法を決めたらあとはそれを使う決心を固める時間だ。
少し叡智な魔法は、かけられた人にとっては愉快でないものだろう。
そんな魔法を無差別に使うのは、小市民的な僕の良心が許してくれなかった。
どんな些細な事でもいい、僕には,この魔法を使ってもいいという大義名分が必要だった。
僕は図書室の時計を見る。
あと一分で十六時だ。
「もう閉めるので片付けて出てください」
さっきよりも気持ち大きめの声でもう一度呼びかけた。だが、勉強に集中している森崎先輩には届かない。
(困った。
僕は何度も呼びかけているのに立ち上がってくれない。
肩を叩くか?
いや、いきなり男子が女子の肩を叩くのは今の時代どうだろうか?
うーむ困った。
森崎先輩が自発的に立ち上がって図書室を出てくれないだろうか?
あ、今僕が手にしている『少し叡智な魔法の使い方』にはちょうどいい魔法が載っているではないか!)
と、頭の中で一人芝居を打つ。
これで免罪符ができた。
僕は図書委員としての職務を全うする為に、彼女に速やかにご退室頂かなければならない。
けれど、彼女の耳に僕の言葉は届かない。
だから!
不本意ながら!
やむを得ず!
この本に頼らせていただく。
このシチュエーションにもってこいの魔法。それは、
【尿意を操る魔法】
異世界からやってきた魔導書を使って一番最初に試す魔法がこれか……と思わなくもないが、こんな魔法ばかりが載っているので仕方がない。
それに、この魔導書が本物かどうかを確かめるにもちょうどいい。
森崎先輩が尿意を催し自発的に出ていってくれれば大成功だ。
それに、この魔法なら、森崎先輩にもそんなに迷惑がかからないはず。
頭の中で何十にも言い訳を重ねて僕はようやく魔法を使う決意を固める。
僕は魔法が書かれたページに手を置き、念じた。
そうする事が魔法を使う儀式だと本に書いてあったからだ。
すると、本に触れていた指にわずかな電気が流れた。そしてそれと同時に頭に情報が流れてきた。
その情報は、二つのことを決めろと僕に告げる。
この魔法を誰に使うか?
尿意をどうするのか?
僕は頭の中で答える。
『あそこで勉強している女性の尿意を上げる』
するとまた指に小さな電気が流れる。
が、何も変化はなかった。
RPGで魔法を放つ時みたいに光を発することもなく、風が巻き起こることもない。
まぁ目立ちたくはないのでそれは一向に構わないのだが。
問題は、勉強している女子生徒にも何の変化も表れていないという事だ。
急に尿意が増して来たら何らかの反応があってもいいと思うのだが、問題を解き進めるシャーペンは止まる気配がない。
僕はもう一度尿意を操る魔法を使った。
『あそこで勉強している女性の尿意を上げる』
けれども変化はない。
僕の欲望のムクムクが、急速に萎む。
何を浮かれていたんだ。やっぱり魔法なんでないじゃないか。
そんな気持ちを抱きながら、もう一度だけ唱える。
『あそこで勉強している女性の尿意を上げる』
ん?シャーペンを持つ手が止まった。
問題に行き詰まったのか?
彼女の顔を見るが、特に変わった様子はない。
『あそこで勉強している女性の尿意を上げる』
今度は明確に肩をビクンッと振るわせた。
よく見ると耳が赤い。
顔も何かを堪えるように歪んでいる。
その表情が、僕の中のナニカを強く刺激する。
土曜の校舎には人の気配がない。
遠く離れたグランドで運動部が部活動に勤しむ声が聞こえるが、それすらもこの図書室の孤立感を強める要素にすぎない。
『あそこに座っている女性の尿意を上げる』
僕は、苦悶の表情を浮かべる森崎先輩にさらに魔法を重ね掛ける。
森崎先輩は、とうとうスカートの上から下腹部を押さえ始めた。
きっと尋常ならざる尿意に戸惑っているのだろう。
真っ赤になった耳から、首、頬へと赤が伝播する。
ここまで来てようやく、彼女はテキストを閉じ帰り支度を始めた。
だが、不用意に動いた事がさらに尿意を加速させるのか、少し動いては止まり少し動いては止まるを繰り返す。
呼吸は荒くなり、ひたいには汗も浮かんでいるようだ。
二人しかいない図書室に、熱を帯びた呼吸音が響く。
『あそこで悶えている女性の尿意を上げる』
「ッんん!」
初めて声が出た。
なりふり構って居られなくなったのか、下腹部にあった手がさらに下に降りる。
内腿をピッタリと閉じて擦り合わせる。
それだけ見れば、何か別の行為に見えなくもない。
僕はそんな彼女を見ながら二つの興奮に震えていた。
一つは魔法が本当に使えた事に対するもの
もう一つは、女性が尿意を我慢する姿は対するものだ。
今僕の目の前には、真面目に問題集に取り組んでいた女子生徒の姿はない。
そこにいたのは、なりふり構わずスカートをくしゃくしゃにして握りしめて、内腿をしかりに擦り合わせながら、熱い吐息を吐き出す、うっすらと汗の浮かんだ肌と、涙が浮かぶ目をした女性だ。
尿意という一つの欲求だけで人はここまで変わるのか。と思った。
尿意を我慢する彼女の姿は、僕の中のナニカの新しい扉を開けた気がする。
尿意を我慢する森崎先輩は、それほどまでに魅力的に映った。
初めて使った魔法としては十分だろう。
この魔導書が本物であることが分かり、僕の中で新しいナニカが芽生え、おしっこを我慢する森崎先輩という素敵なものを拝むことができた。
今日のところはこの辺りで切り上げよう、と再度7『少し叡智な魔法の使い方』を開き、今かけている魔法を解こうとした。
だが、森崎先輩の膀胱は僕の想像よりもかなりギリギリの状態だったらしかった。
あるいは、僕が魔法を無邪気に重ねがけしたのが良くなかったのかもしれない。
僕が魔導書を開く際、パタンと音がした。
小さな音だったが、静寂に包まれていた図書室には殊の外響いて聞こえた。
その音に反応して先輩が勢いよく立ち上がり、こちらの方を見た。
いや立ち上がりかけたところで腰が止まった。
両手をつき、お尻を椅子から数センチ浮かせた姿勢で固まる。
まるでお尻を突き出したかのような姿勢の森崎先輩と、目と目が合う。
彼女の目は今にも泣き出しそうに潤んでいた。
普段なら女性の目をしっかりと見る事なんてないしそもそもできない。
けれど今日はなぜかその目から視線を外さなかった。
彼女の方も、僕の存在に驚きながらも目は外さなかった。
その状態のまま、消え入りそうな声でこう告げた。
「お願い、見ないで……」
その声と同時に彼女の方がビクンッと跳ねた。
「あぁ、ダメ」
口では否定の言葉を発しながら、どこか恍惚とした表情を浮かべる。
もう一度、二度肩がビクンッと跳ねる。
今度は肩と同時に突き出したお尻が小刻みに震える。
その突き出した部分のスカートの色が濃くなる。
その次にスカートから伸びる白い脚に、何本ものも液体の道ができる。
くるぶしを覆っていた白い靴下が、淡い黄色に染まる。
その液体が上履きにまで到達すると、最終的に図書室の床に大きな水たまりを作った。
立ち上がってからここまで数分ほどかかったか、あるいは数秒の出来事だったか分からない。
全てを出し尽くした彼女は力無く椅子に座り直すと、ようやく僕から目線を外し、机に顔を埋めて泣き出した。
「高校三年生にもなってお漏らしなんて…」
お漏らしをして泣きじゃくる森崎先輩を見て、僕の中のナニカが弾けた。
そのナニカは、常識とか理性とかその類のものだったと思う。
恥ずかしがる森崎先輩があまりにも美しく見えたのがいけないのだ。
僕はどんな手を使ってももっと恥ずかしがる彼女の姿を見たいと望んでしまっていた。
僕の脳は、まるで魔導書に導かれるように、森崎先輩を最も辱める方法を最大出力で計算していた。
僕は急いで魔導書にもう一度触って、さっきとは違うページの呪文を念じてから、開いていたページを閉じると、泣きじゃくる森崎先輩の元へ近寄り、できるだけ平静を装った声で話しかけた。
「大丈夫ですか?気分とか悪くないですか?
今拭くもの持って来ますね」
手早く掃除用入れから雑巾とバケツを取り出すと、床にできた水たまりに雑巾を放り投げた。
「や、だ、大丈夫です。自分で!自分で片付けますから」
僕の行動に面食らったのか、泣き腫らした顔を上げて叫び出す。
近くで見るとかなり小柄だ。
小動物のような顔と仕草は、僕の心の中の嗜虐心を大きく揺さぶる。
僕はできるだけ事務的な口調と表情を心がけながら彼女の顔を覗き返す。
「いえ、図書室の清掃は図書委員の仕事なのでお気になさらず。
それより体調は大丈夫ですか?濡れた格好のままだと風邪をひきますよ。
服を脱いだ方がいいんじゃないですか?」
「え、あ、そうか!そうですよね」
盛大なお漏らしをして気が動転していたのか、彼女は僕の目の前で、勢いよくスカートを脱ぎ始めた。
ほっそりとした真っ白な太ももと、高校三年生の女子高生にしてはやや幼女趣味的な綿のパンツが顕になる。
白地のそのパンツは、前側を中心に黄色く変色していた。
初めて女性のパンツを、それも至近距離で目の当たりにして、逆に僕の方が動揺した。
「あの、見えてますよ!」
思ったよりも大きな声が出てしまった。
下半身パンツ一枚になった森崎先輩は、その格好のまましばらく固まるとその場にしゃがみ込んだ。
「もうやだ…」
本人としてはパンツを隠したつもりなのだろうが、床の水たまりを拭く為に床に手をついていた僕の目線からは、濡れたパンツがピッタリと張り付いた1番大切なところがはっきりと見えてしまっている。
これを指摘したらさらに泣いてしまうのだろうな。
そう思って、あえて黙っておいてあげることにした。
パンツがピッタリと張り付いた局部を観察しながら、雑巾で水たまりを拭く。
他人の尿を触るのは初めての経験だったので、手をつける時、一瞬躊躇ったが思い切って触れる。
「あったかい」
ほのかに黄色いその水たまりは、微熱の時のような熱を持っていた。
その熱を持つ液体を雑巾にしっかりと吸い込ませてバケツに絞る。
ジャァァァァ
集められたおしっこが勢いよくバケツを叩く音が、静かな図書室に響く。
「ごめんなさい」
パンツ丸出しでうずくまる女子生徒が、消えいりそうな声で呟く。
「気にしないでください」
僕は、さっき大声を出したことを挽回する為、努めて平静な声で答える。こぼした水を拭いているかのように。
彼女が、自分のおしっこを黙々と拭いている見知らぬ男子生徒という僕の存在に違和感を抱かないように、今この行為が当たり前のものだという顔をして黙々と掃除を進める。
「それよりも、そんな格好だと本当に風邪をひいてしまいますよ。
あそこの本棚の陰なら死角なので、そこで濡れたものを脱いできたらどうですか?」
掃除をしながら僕がそう提案すると、うずくまっていた女子生徒は慌てて立ち上がった。
「そ、そうだよね。ご親切にありがとう」
そういうと、丸出しのパンツを振りながら本棚の陰に移動した。
その様子を見ながら僕の中の醜い感情がさらに元気になる。まさかこんなに上手くいくなんて。
僕は席を立つ際に使ったもう一つの魔法のを思い出す。
【多少無茶な理屈でも言いくるめる魔法】
森崎先輩のような気の弱そうな子には効果のありそうな魔法だと思っていたが、ここまで思い通りの行動をしてくれるとは嬉しい誤算だ。
僕はあくまでも提案をしているだけで、最終決定を下しているのが本人だということも、僕好みなシチュエーションだ。
僕は笑みを抑えながら彼女の移動した先をみつめる。森崎先輩の移動した先は、確かに本棚の陰で死角になっている。
だがそれは、彼女の目線の高さの棚だけ。
本棚の下側、彼女の下半身のあたりには今、本が入っていない。その本棚は背板がないタイプのもの。
するとどうなる?
僕の目線からは、彼女の下半身だけが丸見えになる。
森崎先輩はそのことに気がついていないのか。気が付いていてもそれどころではないのか分からないが、本棚の陰に隠れると急いでパンツを脱ぎ出した。
濡れたパンツは脱ぎづらいのだろう。
半脱ぎの状態で四苦八苦しながら、なんとか脱ぎ切る。
僕はその一部始終を目に納める。
初めて目にする女性のその部分に目を奪われ、脳は沸騰し、今にも鼻血が吹き出しそうだ。
森崎先輩は、僕の目線に気付かず靴下と上履きも脱ぎ、下半身は生まれたままの姿になった。
普段服を着て生活している空間で半裸になる事に羞恥心を覚えたのだろうか?僕から隠れているはずだと思っていても、両手で局部を隠している。
森崎先輩は、その姿勢のままモジモジと体を捩る。
「あ、あの」
「あ、もう少しで拭き終わりますよ」
「ありがとうございます。
でも、そうではなくて……」
本棚のせいで顔は見えないが、真っ赤に赤面していることがわかる声で、森崎先輩は言う。
「私、服を脱いだはいいんですけど、着替えがなくて」
「ああ、それは大変ですね」
着替えのことを考えずに服を脱ぐなんて、魔法が効いているのか、それともこの人が特別おっちょこちょいなのか分からない。
「じゃあ僕のジャージをお貸ししますよ」
今日は初めから閉架書庫を捜索するつもりだったので念のためジャージも持って来ていた。結局使わなかったが、こんなところで役に立つとは。
だが、ただ貸すのではもったいない。
僕はまた内心ほくそ笑みながら、平静を装った声で告げる。
「僕の鞄に入ってます。今手が離せないんで、自分で取ってもらっていいですか?」
「え、あ、はい」
いけた!
僕の鞄は図書室の入り口である。女子生徒のいる本棚の陰から取りに行こうとすると、僕の真横を通るとこになる。
下半身裸の状態で。
普通なら拒否する。と言うかそんな提案をする僕のことを変に思うはずなのだが、魔法のおかげでスルスルと話が通る。
「失礼します」
森崎先輩は、なぜか一言謝ってから僕の前を通り過ぎる。
僕は、掃除に集中している風を装いながら、その姿を一部始終目におさめる。
当然、僕の目の前を歩く際は両手で大切な所を隠して歩く。
だが、僕の鞄からジャージを取り出す時はそうはいかない。
「あ、あのファスナーが」
「開けちゃっていいですよ」
きっとファスナーがしまっていることを理由に、僕に開けてもらおうとしたのだろう。
僕の返答にあからさまに落胆しながらも、いつまでも下半身裸のままではいられないと思ったのか、思い切って下半身を隠していた手を離して鞄を漁り始めた。
僕のジャージは鞄の一番下にしまってある。
その上には今日借りた本(魔導書ではなく普通のエンタメ本)が5、6冊入っているはずなので、丁寧にしようと思うとかなかなスムーズに取り出せないはずだ。
案の定森崎先輩は、他人の荷物を乱暴に取り扱えるような人ではないようで、丁寧に本を取り出してからジャージを取り出そうとしている。
だが丁寧になればなるほど、当然下半身が顕になる時間は増える。
僕は、鞄を漁るたびに小刻みに左右に揺れる白いお尻を眺めながら床掃除の最後の仕上げに取り掛かった。
*****
「今日は本当にご迷惑をおかけしました。
ジャージまで貸していただいて本当にありがとうございます」
駐輪場で、森崎先輩はこれで何度目かわからない謝罪の言葉を口にした。
僕はその言葉を恐縮しつつ受け取る。
僕の魔法が全ての原因なので、こんなにも真摯に謝られるとさすがに罪悪感が強くなる。
あの後、僕のジャージを履いた森崎先輩はわずかに平静を取り戻した。
僕らはなんとか荷物の片付けと、水たまりの処理を終えて二人で図書室を後にした。
鍵を職員室に返すので先に帰っていいと告げたのだが、森崎先輩は職員室まで着いてきて僕が鍵を返すのを待っていた。
僕としては一刻も早く家に帰ってさっき見た光景を反芻したいと思っていたのだが、森崎先輩を振り払って走るわけにもいかず、人より少し狭い幅の彼女のペースに合わせて歩いた。
そしてそのまま二人で駐輪場まで歩いてきたのだった。
その間、森崎先輩は顔を赤くしながら謝り続けていた。
「このジャージは新しいのを買って弁償します」
森崎先輩は、自分が履いている僕のジャージを握りしめて言った。
「え、いいですよ。洗濯だけしてくれれば」
「でも私、パンツを……
それで、あの、さっきから結構擦れて……」
そこまで言って言い淀む。
森崎先輩の言いたいことはわかった。
彼女のパンツはおしっこで汚れてしまったので、いま彼女はノーパンのままジャージを履いている。
大事なところが直接触れてしまったことを気にしているようだ。
「僕は気にしないんで大丈夫です。
それに予備もあるので急がなくてもいいですよ」
「じゃあせめて何かお詫びを。
あとお借りしたものを返す連絡もしたいので、連絡先交換してもらってもいいですか?」
連絡先の交換については素直に受ける。
こんなに可愛い人の連絡先を入手できる機会を逃す手はない。
「山田くんって言うんですね」
交換したSNSのアイコンを見ながら、森崎先輩が俺の名前を呼んだ。
「それじゃあ僕はこれで。
帰り道お気をつけて」
連絡先を交換したらもうすることは無い。
一刻も早く家に帰るために自転車にまたがる。
「あの!」
そのタイミングでまた森崎先輩に話しかけられた。
「今日のことなんですが、できれば先生方には内緒にしていただきたくて」
何かと思えばお漏らしの件をチクらないでほしいと言うことらしい。
元々、魔法の効果を確かめるために僕が起こしたことなので当然誰にも話すつもりはなかったのだが、森崎先輩があまりに不安そうな顔をするので思わず嗜虐心が湧き上がる。
「そうは言っても、僕も先生の留守を任されていたのでその間に起こったことは報告する義務があるので……。
先輩からの頼みでもそれはできないですよ」
「そこをどうかお願いします。
私は恥ずかしいから黙っていて欲しいわけでは無いんです。あ、いや普通に恥ずかしいは恥ずかしいんですけど」
森崎先輩は僕のジャージを握りしめる。
「私には年の離れた弟が3人います。親が共働きなので、平日の夕飯やお風呂の世話は私がやっていてあまり勉強する時間が取れていないんです。
休日は手はかかりませんが、3人とも騒がしく遊んでいるのでとても家で勉強ができる状況じゃありません。
学校で勉強ができなくなると、その、とっても困るんです」
なるほど。
時間いっぱいまで図書室に残って勉強していたのにはそう言うわけがあったのか。
「事情は理解しました。
けど、また同じようなことがあるといけないので」
「そんな!今日みたいなことは初めてなんです!
今日はたまたまキリがいいところまで終わりそうで、そしたら急に尿意が」
「これまで起こらなかったことが今日起きたってことは、次が起こらない保証はないですよね?」
「うう……」
ジャージを握りしめた森崎先輩が泣きそうな顔になる。
先輩ではあるが、小柄なその姿はついついいじめたくなってしまう雰囲気を纏っている。
とはいえこのまま返すのは少し忍びない。
それに、今の会話からちょっとイイコトを思いついた。
「わかりました。
先生への連絡は保留にしておきます。
その代わり、次に図書室で勉強するときは必ず僕に声をかけてください」
叡智な魔導書が本物であることは今日のテストではっきりした。
だがうまく使いこなすにはもっともっと練習が必要だろう。
だがこの魔導書に書かれている叡智魔法は、ほぼ全て対人魔法。
一人で練習することはできない。
今日の反応を見るに、森崎先輩は【多少無茶な理屈でも言いくるめる魔法】が効きやすい。
練習台になってもらうのに好都合だろう。
「ほんとに?ありがとう。
次図書室に行くときは必ず連絡するね」
森崎先輩はこちらの思惑など気づかない様子で、ホッとした笑顔を見せた。
*****
森崎先輩と別れ家に帰り、ひとしきり今日の出来事を振り返り一息ついたあと、僕は『少し叡智な魔法の使い方』を開く。
読むことができるページに変化はない。今日一回魔法を使ったくらいでは、新しい魔法を使えるようにはならなかったようだ。
だがまぁいい。
それでもまだ使っていない魔法はたくさんある。
一つづつゆっくりと試していけばいい。
『少し叡智な魔法の使い方』がある日常はまだ始まったばかりなのだから。




