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女のときだけ人生がうまくいく件 〜拾った指輪でTSした俺の二重生活〜  作者: 生家事


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薬草採取の依頼

ギルドを出た俺たちは、町の外れにある森へ向かった。


朝の空気は少し冷えていて、吐く息がわずかに白い。

石畳を抜け、土の道に変わると、足裏に伝わる感触も変わる。


(……いつも通りだな)


ただ一つ違うのは、体の軽さ。

歩幅、重心、視界――微妙にズレている。


横ではミアが元気よく歩き、レンは地図を見ながら進んでいる。


「ユーナさん、ちゃんとついてきてね!」


「大丈夫だって。迷うほどの道でもないし」


そう返すと、レンが少しだけ意外そうな顔をした。


「結構余裕あるね」


「まあな。慣れてるから」


軽く肩をすくめて、俺は前を見る。


(……いつも一人で来てた場所だしな)


森に入ると、空気が変わる。


湿った土の匂い。

葉が擦れる音。

遠くで鳴く鳥。


全部、馴染みのあるものだ。


ミアはきょろきょろと辺りを見回している。


「なんか緊張するね……」


「最初はそんなもんだよ。すぐ慣れる」


少しだけ言い方を柔らかくして返す。


自分でも、ちょっと意外だった。


足元を確認する。


落ち葉の沈み方。

踏み跡。

折れた枝。


(……人は少ない。魔物も今日は浅いところにはいないな)


そのまま進むと、目的の薬草が見えてきた。


青緑色の丸い葉。


「これだな」


しゃがみ込み、根元を掴んで引き抜く。

土が軽く崩れ、甘い匂いが立つ。


「うわ、ほんとに甘い匂いする!」


ミアが顔を近づけてくる。


「根まで取らないと意味ないからな。途中で切るなよ」


「了解!」


レンも頷いて作業に入る。


しばらく、静かな時間が流れる。


――カサッ


横の茂みが揺れた。


ミアの肩がびくっと跳ねる。


「な、なに……?」


「ただの小動物だろ」


言った直後、リスが飛び出してきて木に登る。


「……ほら」


「いや、わかっててもびっくりするって!」


ミアがむくれる。


俺は苦笑して、もう一本薬草を引き抜いた。


(……騒がしいけど、これはこれで悪くないな)


そのまま採取を続けていると――


足元が沈んだ。


(……穴か)


踏み抜く前に体を引く。


……が、


コートの中でバランスが一瞬だけズレる。


(まだ慣れないな)


体勢を立て直す。


「大丈夫か?」


レンが声をかけてくる。


「ああ、問題ない」


そう言いながら立ち上がると、ミアがじっと見てきた。


「やっぱりすごいね……動き、全然ブレてない」


「いや、今ちょっと崩れたぞ」


「え、あれで!?」


思わず笑いそうになる。


しばらくして、薬草は十分な量になった。


「こんなもんでいいだろ」


袋の中身を軽く確認する。


「うん、これなら依頼分は足りてるね」


レンが頷く。


「初依頼にしては上出来だな」


そう言うと、ミアがぱっと顔を明るくした。


「ほんと!?やった!」


帰り道。


小川に差しかかる。


石を踏んで渡るだけの場所だ。


ミアが先に進む。


「よっと……」


その瞬間、足を滑らせた。


「っ、きゃ――」


反射で動いていた。


腕を掴んで引き寄せる。


軽い。


そのまま、ぐっと引き戻す。


「っと」


体勢を立て直したミアが、俺の腕を掴んだまま固まる。


距離が、近い。


「……大丈夫か?」


「あ、え……」


ミアの顔が一気に赤くなる。


「だ、大丈夫……!あ、ありがとう……」


慌てて手を離す。


俺も何事もなかったように離れる。


「足元見て歩いてよ?」


「う、うん……」


さっきまでの元気が少しだけおとなしくなる。


レンが横でニヤっとしている。


(……やめろ、その顔)


三人で渡りきり、森を抜ける。


町が見えてきたところで、ミアが大きく伸びをした。


「はー!終わったー!」


「思ったより順調だったな」


レンも笑う。


俺は空を見上げる。


(……まあ、悪くない)


「ユーナさん、ありがとね!」


ミアが少し照れたまま言う。


「さっきの……助かったし」


「気にすんな。近かったから手出しただけだ」


少しだけ軽く言う。


「でも、それができるのがすごいんだよ」


レンが続ける。


俺は少しだけ視線を逸らす。


(……こういうの、やっぱり慣れねえな)


「また一緒に行こうよ」


ミアが言う。


さっきより、少しだけ声が柔らかい。


俺は少し考えてから、


「まあ……タイミング合えばな」


と返した。


町へ戻る道。


二人は次の依頼の話で盛り上がっている。


その横を歩きながら、俺はぼんやりと思う。


(……一人の方が楽なのは変わらないけど)


ちらっと二人を見る。


(こういうのも、たまには悪くない)


胸の違和感も、視線も、まだ慣れない。


でも――


それでも少しだけ。


今までとは違う日常を、悪くないと思えた。

ユウ「これが男だった場合ビンタされてたな」

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