俺の名前はカイル!!!!
皆さんよかったら☆評価お願いします””
翌日。
ギルドの扉を押して中に入った瞬間、空気の中にわずかな“視線の偏り”を感じた。
昨日ほど露骨ではない。けれど、確実にこちらを知っている者の目だ。
依頼掲示板の前にいる冒険者、受付横で雑談している二人組、奥のテーブルで食事をしている連中――それぞれ一瞬だけこちらを見て、すぐに逸らす。
だが、その一瞬が妙に揃っていた。
(……またか)
昨日の一件が尾を引いているのは間違いない。
面倒だな、と内心で小さく息を吐く。
目立つつもりはなかったのに、結果だけ見れば完全に目立っている。
気にせず掲示板へ向かおうと足を動かした、そのときだった。
「お前!!やっぱり来たな!!」
横合いから勢いよく声をかけられる。
振り向くと、昨日壁にもたれてこちらを見ていた男が、まっすぐ歩み寄ってきていた。
同じくらいの年頃。無駄のない体つきで、軽装の装備もよく手入れされている。
昨日は静かに観察している印象だったが、今日は打って変わって感情が表に出ていた。目が妙に輝いている。
(……テンション高いな)
「何か用?」
できるだけ淡々と返す。だが男はまったく気にせず、ぐいっと距離を詰めてきた。
「昨日のことだよ」
少しだけ声を落とす。
「お前、やばかっただろ」
(……やばい、ね)
「別に」
短く返す。だがカイルは首を横に振った。
「いや、分かるって。強いやつって、ああいう空気になるんだよ」
(……いや、それは違うだろ)
内心で軽く突っ込む。
(あいつらが勝手に寄ってきただけだ。しかも理由はだいたい想像つく)
昨日、妙に距離を詰めてきた連中の顔が浮かぶ。
(どうせ“女だから”って軽く見て、様子見に来ただけだろ)
少し動いたら態度を変えただけ。
(都合いいな、本当)
カイルの言葉とは少しズレている。
けれど――
「周りがざわついてるのに、お前だけ全然違った」
一歩だけ引いて、全体を見るようにこちらを眺める。
「なんていうか……余裕があるっていうか、慣れてるっていうか」
少し考えて、結局そのまま言い切る。
「――ああ、こいつ強いなって思った」
(……直感か)
雑な言い方だけど、的外れではない。
さっきの連中みたいな軽さもない。
ただ“そう見えたからそう言っている”だけの目だ。
(……まあいいか)
「で?」とだけ返す。
「だから気になった」
カイルはあっさり言った。
「――ああ、そうだ。言ってなかったな」
軽く顎を上げる。
「俺の名前はカイル」
短く、まっすぐな自己紹介だった。
「……ユーナ」
一応返す。
カイルは満足そうにうなずいた。
「よし」
(何がよしなんだ)
そして少しだけ真面目な顔になる。
「それでさ。よかったら、一緒に依頼やらないか?」
さっきまでの勢いとは違う。
少しだけ落ち着いた、まっすぐな誘い方だった。
(……なるほど)
ただのノリじゃない。
ちゃんと見て、判断して、声をかけてきている。
それでも答えは変わらない。
「断る」
即答。
カイルは一瞬だけきょとんとした顔をしたが、すぐに苦笑した。
「まあ、いきなりは無理か」
あっさり引いた……ように見えたが、目はまだ諦めていない。
「でも、また声かけると思う」
「やめて」
「善処する」
(やめる気ないな、これ)
そのとき。
「ユーナさん!」
明るい声が響いた。
振り向くと、ミアがこちらに手を振りながら近づいてくる。その後ろにはレンもいた。
「おはよー!」
「……おはよう」
軽く返す。
ミアはカイルに気づいて、足を止めた。
「えっと……誰?」
「カイル。昨日ちょっと話した」
簡潔に答える。
カイルは軽く手を上げた。
「どうも。ちょっと興味あって声かけただけ」
さっきより落ち着いたトーンだ。
(外面いいな)
ミアは「ふーん」と言いながら、こちらとカイルを交互に見る。
「で、何の話してたの?」
「一緒に依頼やらないかって」
レンが少し意外そうに眉を上げる。
「へえ」
ミアは少し考えてから、にやっと笑った。
「じゃあさ、せっかくだし勝負しない?」
(嫌な予感しかしない)
「勝負?」
カイルがすぐに食いつく。
「同じ依頼受けて、どっちが成果出せるか。シンプルでしょ?」
一瞬の沈黙。
「……面白そうだな」
カイルが素直にうなずく。
(乗るのかよ)
ミアはさらにこちらを見る。
「ユーナさんも参加ね」
「断る」
即答。
だがミアは気にせず笑う。
「一回だけでいいから!ね?」
レンも苦笑しながら肩をすくめた。
「まあ、経験にはなると思うよ」
(……面倒だな)
正直、乗る理由はない。
でもここで完全に避けると、余計に絡まれそうでもある。
少しだけ考えて、息を吐く。
「……一回だけ」
折れる。
ミアがぱっと顔を明るくする。
「やった!」
カイルも満足そうにうなずいた。
「じゃあ、軽めのやつにしよう。無茶しても意味ないしな」
(最初からそれで来い)
四人で掲示板の前に立つ。
紙の束の中から、ミアが一枚を指さした。
「これどう?」
近郊の魔物討伐。難易度は中程度。
レンが内容を確認してうなずく。
「妥当だね」
カイルも同意する。
「うん、ちょうどいい」
自然に話がまとまっていく。
(……もう決定か)
小さく息を吐く。
完全に巻き込まれた形だが、悪くはない。
「じゃあ受付行こ!」
ミアが先に歩き出す。
カイルも続き、レンもその後ろへ。
少し遅れて歩きながら、私は周囲をもう一度だけ見た。
さっきまで感じていた視線は、いつの間にか薄れている。
(……まあいい)
前を向く。
昨日とは違う、少しだけ騒がしい日。
それでも――
(退屈はしなさそうだな)
そう思いながら、私は三人の後を追った。
皆さんよかったら☆評価お願いします””




