表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界から聖女が召喚された途端に「運命の恋を見つけたんだ」と婚約破棄……ですか?〜別にいいですけど、後のことは知りませんよ〜  作者: As-me・com


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

2/2

2:聖女様が……ですか?

「……えーと、きがe「そうか!そこまで言うなら答えてやろう!」……あー、はい。どうぞどうぞ」


 かなりかぶせ気味でペラペラと語り出す王子の姿に諦めて肩を落とした。着替えは無理そうなので噴水から出て修道服の裾を絞るとボタボタと水が滴り、足元に水溜りができていく。今日の水、けっこう冷たいんだけどなー。


 再びため息が出そうになった私と違い王子はうきうきと楽しそうだ。よっぽど聞いて欲しかったんだろうけど、私としては決してそこまでして聞きたい内容ではない。王子がどこの誰と恋してようが興味なんてないんですけど。はっきり言ってこの王子に好感などミジンコほども持っていないので婚約破棄自体は全然まるっとオッケーなのだ。慰謝料はくれるなら欲しいところだが。



「水遊びばかりしているお前でも、先日、異世界から聖女が召喚された事くらいは知っているだろう?」


「(ピクッ)………………モチロン、シッテマスヨ?」


 私は無理矢理口角を吊り上げて“ニゴォッ”と笑顔を作って返事をした。え、引きつってるって?だろうね。


 ははは、やだなぁ王子ったら。聖女?知っているに決まってるじゃないか。────だって国王から依頼されて、その聖女召喚の祈りをしたのは私ですからぁ!


 というか、私の後ろにお前おったやんけ!なんてツッコんだらまた話が長くなるので敢えて黙秘することにした。私がどんな表情をしているかなんて気にもしていない王子は「聖女はいい匂いがしたんだ……」と呟き、ポッと頬を赤らめる。匂いを嗅いだのか、キモい。


「俺はその召喚された聖女を見た瞬間、わかってしまったんだ。あの美しい人こそ俺の運命の相手だと!……それに、聖女はプロポーションも良かったしな」


 王子はびしょ濡れの修道服が張り付いた私の体のラインをチラリと見てから何を思い出したのかニヤニヤとだらしなく鼻の下を伸ばしている。いや、こっち見んなし。


 他にもダラダラと語っているが、要は異世界の聖女様に一目惚れしたから私との関係を《《なかったコト》》にしたいようだ。しかし私との婚約は(一応)王命だったはずである。王子が勝手に騒いでいるだけとか……いや、この王子の自信満々な態度から見ても根回し済みだろう。つまり国王陛下も王家の嫁にするならば巫女より聖女様の方が“優良物件”だと乗り気になったということだ。


 いやいや、自分たちから申し込んでおいてさらに条件が良い相手がいたからってそんな簡単に乗り換えるとか人としてどうなの?最低な事をしてるんだから、せめて謝るとか……うん、この王子とその親だしなぁ。やっぱり慰謝料もらおう。


「聖女様と言えば……」


 古代より伝承として伝えられている“異世界の聖女”とは、その名の通り別の世界から召喚される存在だ。しかも召喚の儀式をするにも色々と制約があり、今回やっと全ての条件が整ったのである。ちなみに私の神聖力もごっそり持っていかれてしばらく寝込んだくらいだ。お見舞いなんて期待していなかったが、心配するどころかその間に聖女様をつけ回していたのだろう。



 私としてはまさか本当に聖女様が召喚されるとは思っていなかった。だが、光と共に魔法陣から現れた長く艶やかな黒髪と黒曜石のような瞳をしたとても可愛らしい少女の姿を目にした途端に「ああ、この方こそ聖女様だ」と無意識に思ったほどである。


 この国に黒髪黒目の人間はいない。身につけていた衣服も見たことのない“せぇらぁ服”というものらしく、本当に異世界からやってきたのだとその場にいた人間がざわついていたのを今でもよく覚えている。特に王子(コレ)が。



 確かに“聖女様を召喚した国には幸福が訪れる”、なんて伝承があるくらいだから、その聖女様を王妃に出来れば国としては万々歳なのだろうけれど……。







 私はちょっと疑問に思うところがあり、聖女様がどんなに美しく儚げでいい匂いがしていてこの世界で不安そうにしている彼女を支えられるのは自分しかいないのだという事を長々と語り続ける王子の言葉を遮った。と言うか、聖女様からどんな匂いがしたかなんて心底どうでもいい。



「えーと、確認したいんですけど。あの、それは聖女様も王子の事を同じように想っていらっしゃるということですか?」


 思い出したことがあったのでつい首を傾げてしまった。それは、無事に聖女様を召喚した後にお役御免だと遠ざけられてしまう前に聞いた聖女様の第一声だった。だって確かに私は聞いたのだ。見目麗しい聖女様が──。



『ぃよっしゃ、異世界召喚キタァ────!ここから始まるあたしの無双冒険譚ってやつよね?!チート万歳!いっぱい勉強しといてよかったぁぁぁ!!』と叫んでいた事を。



 はっきり言って不安げというよりはめちゃくちゃ楽しそうだった気がする。確かにとても美しい人だったが、儚げ?というよりは、生命力に溢れていたような印象なのだ。まるでこれから人生をやり直すかのような勢いで元気ハツラツとしていた…と思う。



 さらに私の記憶が確かならば、聖女様は『どこぉ?!あたしの推しはどこぉぉおっ?!ハァハァハァ!』と血走った目でキョロキョロと辺りを見回していたが、すぐ目の前にいた王子は興味なしとばかりにスルーされていた気がするのだ。たぶんその場にいたことすら気付かれていなかった気がする。



 そんな聖女様がたった数日で……本当にこの王子を“好き”になったのだろうか?聖女様が探していた“推し”とやらが《《何か》》はわからないが、この王子では無い気がしてならない。



 すると王子はまたもや鼻息を荒くして得意気にニヤリと笑った。やっぱりキモい。



「ふん!そんなのこれからプロポーズするに決まっているだろう!?俺を見つめる聖女の瞳を見れば、その気持ちなんて手に取るようにわかるんだ!だが、聖女がお前の存在を知れば気にして素直になれないかもしれないだろう?なんといっても聖女は優しいからな!だからこそ、お前と婚約していたなんて恥ずかしい事実をさっさと抹消するんだろうがぁ!これで俺は自由で清い身だ!」


 そして何を想像しているのかは知らないが、「ぐふふぅ」と笑い声を漏らしながらニヤニヤと鼻の下を伸ばしている。自由になってくれるのはいいのだが……やばっ、マジキモい。


「とまぁ、そんな訳だから婚約は破棄だ!ついでに聖女がいれば“平民の巫女”など必要ないと父上から言付かっているからお前はクビだ!クビになった巫女なんて何の価値もないからな、これで国費も節約出来るし万々歳だ!あぁでも、俺と聖女の幸せを祈る大役だけは任せてやる、最後のおつとめだからしっかりやれよ!」



「えぇー……」



 あー、やっぱり国王陛下もグルですか。というか、もう私に給金払うのが嫌になったってこと?まぁ、毎回嫌そうにしてたのはわかっていたけどね。でも散々利用したくせに、やっぱり“平民の巫女”だからってすぐ切り捨てるんだと思ったら……ほんのちょっぴり残っていたはずの“情”もきれいさっぱり消えてしまったのだった。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ