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強面騎士様に嫌われていると思ったら、大型犬ごと懐かれていました  作者: しぃ太郎


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8/10

第8話 強面騎士は妄想で自爆する


 ――グレン視点――



「ポピー。今度、モーガン嬢が結婚するらしい……。しかも相手がトーマスだ」


 大型犬をブラッシングしながら、ゆっくりと語りかける。

 少し寂しそうに見えるのは気のせいだろうか。

 モーガン嬢に会えないからか。


 ――騎士は反対だが……トーマスならば……。

 穏やかな性格で、協調性もある。

 女性を裏切るような人物ではない。


「結婚式に呼ばれるな、きっと」


 ポピーは俺の膝に頭を乗せてこちらを見あげてくる。


「花嫁姿の彼女……の隣に……」

 

 きっと美しいドレス姿だ。

 そこに別の男が並ぶのか??

 さらには誓いのキス?

 

 彼女が――。

 将来を誓い合い、ずっと誰かと一緒に暮らす。

 しかも、俺の部下と??

 

 衝動的に身体が動いた。


「ポピーいくぞ!駄目だ!よくわからんがトーマスでも許せない」

「ワン!」


 滅多に吠えないポピーが俺の背中を押してくれている。場所は把握済みだ。まだ間に合う。

 俺は、ポピーのリードを持って家を飛び出した。  


 ◇◇◇


 私とトーマス副長は、苦笑いで席に着いた。

 断る前提でのお見合い。

 少し面白い状況に、自然と笑みが浮かぶ。


「そういえば、最近のポピーはどうです?」

「あぁ、元気そうです。ただ、飼い主の方がね……。死にそうなんで……」


 あまりの発言にテーブルに両手をついた。


「死にそう!?何かあったんですか」


 いくら、危険と隣り合わせの騎士でも王都勤務の今の状況で……。

 何かの病気だろうか。

 不安と後悔が胸に押し寄せ、もっと詳しく聞かなければ納得できなかった。


「最近は、あまり食事も取れず、不眠症状まで出ているようです。……あれは重症ですね」

「そんな……!」


 私が避けている間に、そんなことになっていたなんて。

 こんな事ならば、身を引くんじゃなかった。

 嫌われても疎まれても側にいたかった。


 膝の上で拳を握りしめる。

 お茶なんてしている場合ではなかった。

 早く、様子を見に――。


 席を立とうとした、その瞬間。


「その見合い待ったーー!!」


 聞き慣れた低い声が耳に響いた。

 いや、店中に。


「キャーー!」

「うわーー!!!」


 ――軍用犬を連れた大柄な騎士が店に乱入してきたのだ。

 大パニックだった。


 トーマス副長は、手で目元を覆い――すぐに、グレン隊長の所に向かっていった。


「あんた馬鹿だわー!!さすがにここまでの大惨事を引き起こすと思わないですよ!」


 私も口元を覆って、周りを見渡す。

 テーブルや椅子がひっくり返り、カップや皿、料理が床を汚していた。


 この惨状。

 目眩を起こしそうだ。


 思わずフラリと倒れ込みそうになると、グレン隊長が走ってきて支えてくれた。


 しかし私は、今まで溜まっていたものが一気に噴き出したかのように、彼に詰め寄っていた。


「今まで避けてたのに、なんなんですか!?」


 あれ……。なんで私、こんなに腹立たしくて泣きたい気持ちになるの――。

 そんな疑問が頭をよぎるが、今は怒りが勝る。


「騎士が民間の店に突入するなんて問題になります!それに、お見合い!?私のことなんて嫌っていたじゃないですか!」


「違うんだ……。君が、俺なんかを相手にするわけがないと思っていた」


 グレン隊長は、そこでトーマス副長を指差した。


「こいつと結婚するくらいなら、俺のほうが……!」

「「しませんよ?」」


 静まり帰った店のなかで、ポピーの元気な息遣いだけがやけに大きく聞こえた。

 

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