第7話 強面騎士は嫉妬に気づかない
――グレン視点――
『そういやさ。この前……副長と事務員のモーガン嬢を見た――』
――ダンッ!
食堂のテーブルにヒビが入ってしまった。
思い切り突き刺したフォークをゆっくりと抜く。
『あー……。副長、例のテンプレ結婚コースかな――』
――ガンッ!
大変だ。またしても穴が空いてしまった。
フォークは曲がって使い物にならない。
昼食を摂ろうと目を向けるが、食欲が湧かない。
口に入れても砂を噛んだような、ジャリジャリとした味しかしなかった。
あの日から、モーガン嬢と接点が無くなった。
団員は、軍犬を仲間として見ているから怖がることもない。
最初からこうすればよかったんだ。
ただ、ポピーが。
俺の膝に頭を乗せている大型犬を撫でる。
――ポピーが彼女を大好きだったから、断れなかっただけなんだ。
◇◇◇
『今日の隊長の体調はどうだ?』
『いや、隊長の体調は絶不調だ』
『体調管理がなっていないな、どうしたんだ隊長』
団員たちの声が遠くから聞こえるが、答えるのも面倒だった。
号令をかけ、訓練を開始させる。
俺も参加していたが、何故か途中で部下に両脇を抱えられていた。
「隊長!備品を全部壊す気ですか!?木剣も、的もすでに壊れてるんですが!」
手元を見れば、木剣が真っ二つに折れている。
演習場は既にボロボロで、酷い有様だった。
――これは始末書ものだ。
しかし、すべてが面倒に感じる。
「すまない。少し頭を冷やしてくる。後片付けを頼めるか」
髪をかき上げて折れた木剣を投げ捨てる。
部下に全部任せるのは気が引けるが、今の自分が役に立つとも思えなかった。
「あ!グレン隊長!ちょっとお話がありまして」
「トーマス副長。後にしてくれるか、とりあえず早く汗を……」
トーマスの言葉を断って部屋に戻ろうとすると――、
「俺、有給申請したいんですよ。どうしても断れないお見合い話がありまして」
「……わかった。執務室へ行こう」
やはり噂は本当だったのか?
いや、しかし、お見合い話?
それなら。
トーマスの相手は他に――。
「偶然にも、相手が、サラ・モーガン嬢で」
「ああ……。それで――」
その後のことは、記憶に残らなかった。
望んでいたことだ。
彼女が幸せそうに微笑むことを願っていた。
――くぅん。
ポピーが鼻を俺に押し付けてくる。
「サラさんも驚いてましたけど、お互いに気が合いそうですし。今度、彼女と前回行った喫茶店で本格的にお見合いを――」
これ以上聞いていられなかった。
無理やり話を途切れさせる。
「よかったな。これでお前も念願の所帯持ちか……」
トーマスの顔を殴ってやりたい衝動を覚える。
いつもの事だ。
しかし、ここまで殺意に似た感情を抱くのは初めてだった。
そのまま、黙って執務室まで向かった。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。
もし物語を楽しんでいただけましたら、
★やブックマークで応援していただけると励みになります。




