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強面騎士様に嫌われていると思ったら、大型犬ごと懐かれていました  作者: しぃ太郎


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7/10

第7話 強面騎士は嫉妬に気づかない


 ――グレン視点――



『そういやさ。この前……副長と事務員のモーガン嬢を見た――』


 ――ダンッ!


 食堂のテーブルにヒビが入ってしまった。

 思い切り突き刺したフォークをゆっくりと抜く。


『あー……。副長、例のテンプレ結婚コースかな――』


 ――ガンッ!


 大変だ。またしても穴が空いてしまった。

 フォークは曲がって使い物にならない。


 昼食を摂ろうと目を向けるが、食欲が湧かない。

 口に入れても砂を噛んだような、ジャリジャリとした味しかしなかった。


 あの日から、モーガン嬢と接点が無くなった。

 団員は、軍犬を仲間として見ているから怖がることもない。

 最初からこうすればよかったんだ。


 ただ、ポピーが。

 俺の膝に頭を乗せている大型犬を撫でる。


 ――ポピーが彼女を大好きだったから、断れなかっただけなんだ。


 ◇◇◇


『今日の隊長の体調はどうだ?』

『いや、隊長の体調は絶不調だ』

『体調管理がなっていないな、どうしたんだ隊長』


 団員たちの声が遠くから聞こえるが、答えるのも面倒だった。


 号令をかけ、訓練を開始させる。

 俺も参加していたが、何故か途中で部下に両脇を抱えられていた。


「隊長!備品を全部壊す気ですか!?木剣も、的もすでに壊れてるんですが!」


 手元を見れば、木剣が真っ二つに折れている。

 演習場は既にボロボロで、酷い有様だった。


 ――これは始末書ものだ。

 しかし、すべてが面倒に感じる。


「すまない。少し頭を冷やしてくる。後片付けを頼めるか」


 髪をかき上げて折れた木剣を投げ捨てる。

 部下に全部任せるのは気が引けるが、今の自分が役に立つとも思えなかった。


「あ!グレン隊長!ちょっとお話がありまして」

「トーマス副長。後にしてくれるか、とりあえず早く汗を……」


 トーマスの言葉を断って部屋に戻ろうとすると――、


「俺、有給申請したいんですよ。どうしても断れないお見合い話がありまして」

「……わかった。執務室へ行こう」


 やはり噂は本当だったのか?

 いや、しかし、お見合い話?

 それなら。


 トーマスの相手は他に――。


「偶然にも、相手が、サラ・モーガン嬢で」

「ああ……。それで――」


 その後のことは、記憶に残らなかった。

 望んでいたことだ。

 彼女が幸せそうに微笑むことを願っていた。


 ――くぅん。


 ポピーが鼻を俺に押し付けてくる。


「サラさんも驚いてましたけど、お互いに気が合いそうですし。今度、彼女と前回行った喫茶店で本格的にお見合いを――」


 これ以上聞いていられなかった。

 無理やり話を途切れさせる。


「よかったな。これでお前も念願の所帯持ちか……」


 トーマスの顔を殴ってやりたい衝動を覚える。

 いつもの事だ。

 しかし、ここまで殺意に似た感情を抱くのは初めてだった。


 そのまま、黙って執務室まで向かった。

 

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