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強面騎士様に嫌われていると思ったら、大型犬ごと懐かれていました  作者: しぃ太郎


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3/10

第3話 強面騎士は距離の取り方が下手


「……あ!グレン隊長、ポピーはまだ訓練場に……」

「……」


 彼と目が合ったので、話しかけたが――、そのまま遠ざかっていく。


 最近はいつもこうだ。


「私、何かしちゃったかしら……」


 時計を見ると、騎士団の退勤時間が近い。

 ポピーを迎えに行って、グレン隊長に手渡して……。


 ――嫌われたのか、それとも、お節介だったのか。


 私は、自分の行動を何度も振り返りながらポピーを迎えに行った。


 軍用犬の訓練場では嬉しそうに寄ってきてくれるポピー。

 撫でて欲しいと言うようにお腹を見せて転がった。


「ポピーは赤ちゃんの頃から私に懐いてくれてるね。……でも、あなたのご主人様には嫌われちゃったみたい……」


 そのお腹を、わしゃわしゃと撫でてあげる。

 鼻を鳴らして喜んでくれた。


 ――何年か前に、生まれたばかりの子犬を預かった事がある。

 訓練前の子犬を預かるボランティアだった。

 その時の子がポピーだ。


 だから――あの日、ポピーを処分するという決裁書。

 それを取り上げていった彼に、自分も救われた気がしたのだ。


「仲良くなりたかったのにな」


 ◇◇◇


 ――グレン視点――



 モーガン嬢から、ポピーを引き取ってきた。

 ――やはり、彼女の前では何を話していいかわからなくなる。


 すると、トーマスが待ち構えてたように声をかけてきた。

 本当に迷惑な奴だ。


「サラさん、健気ですね」

「……彼女には感謝している」


 ――さっきの彼女の言葉。

 それをこいつも聞いていたのか、と溜め息をついた。


「団員にも結構人気あるんですよね。優しいし美人だし。狙ってるやつも多いでしょうねぇ」

「さっきから、煩いぞ」


 何故か心が落ち着かない。

 ――騎士と彼女が?


「いやー、ポピーは素直でいいですね。飼い主は捻くれてるのに」


 それに答えるようにポピーがトーマスに尻尾を振る。


「別に捻くれてはいない。……どうしていいか全然わからないだけだ」

「うわ……。隊長って歳いくつでしたっけ。悩みが思春期みたいでこっちが恥ずかしいです」


「彼女には騎士なんてもったいないだろう。野蛮な脳筋ばかりだぞ」

「ふーん。じゃあ、お上品な貴族か文官ならいいんですか?でも、独身の騎士の為に上層部が女性を多く雇ってるみたいですし」

「………」


 想像しかけて、無理やり頭から引き剥がす。


 ――今日の訓練は少し厳しくするか。

 浮ついた考えの部下も多いらしい。


「そんな事にうつつを抜かす余裕がないように、スケジュールを変えるか……」

「うわ、見苦しい男の嫉妬。いや……縄張り争いかな?」

「何か言ったか」


 トーマスは、慌てて首を振った。


「いいえ、浮ついたやつはぶん殴り候補ですね!」

「ああ。久しぶりに俺が直接指導しよう」


 今日の訓練内容を組み立てていると、横でぼそりと呟かれる声。


「……それ、もう恋ですよ。拗らせも大概にしないと、サラさんに嫌われますからね」


 見透かすような発言をするのが気に食わない。

 俺と関わって、彼女の仕事に支障が出ないように――、

 少し離れた距離を保っているだけだ。


「――モーガン嬢は尊敬できる人物だ。そんな軽い感情じゃない」


 そう。『恋』なんて、軽くて曖昧なものではない。

 しかし、そこでトーマスが肩を竦めた。

 ポピーにも、なぜか溜め息をつかれた気がする。


 ――その日の演習場は、阿鼻叫喚だった。

 

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