第2話 強面騎士はちょっと心配性
「無事に、合格貰って偉かったね〜、ポピー!」
私は、駆け寄ってくるポピーの背中を撫でた。
リードを持っていたグレン隊長にも声をかける。
「グレン隊長、よかったですね。多分、ポピーが怖がられるのは最初だけですよ。きちんと評価してくれる人は大勢います」
「……ああ。しかし、その……」
「はい?」
「……怖くないのか?」
彼の真剣な様子に、つい笑ってしまった。
「こんなに懐いてくれるのに、怖がる必要があります?」
「いや……。それだけじゃなく、……傷跡もあるだろう」
やけに歯切れの悪い言い方に、自分も含んでいるのかと直感する。
彼の顔にも、傷跡がある。
そこまで目立つ場所ではないが、怖がられる一因になっていた。
恐ろしい別名がつけられたグレン隊長だから、きっと気にしているのだろう。
「怖くないですよ」
もう一度、彼に丁寧に伝えた。
ポピーの顔の、その傷跡を撫でる。
「そうか」
「ええ。……意外と心配性なんですね?」
「……!」
グレン隊長は、一瞬、視線を泳がせた。
そして口元に拳を当てながら、咳払いをした後に――
「……感謝する。では、また退勤時に」
私にポピーを預けて騎士団の演習場へ向かって行った。
後ろで会話を聞いていたのか、後輩が私から後ずさりながらポピーを指差した。
「いや、本当。……サラ先輩、大丈夫ですよね??噛みつきませんよね?」
「訓練士のお墨付きあるから大丈夫よ。それに……」
小さくなっていく彼の背中を見ながら言った。
「勇敢で強そうなタイプほど、実は、臆病で優しいのよ。リードはちゃんと持っておくし、最初は様子見でいいわよ」
彼女は、ポピーと私からだいぶ離れて歩いていた。
やはりまだ怖いのだろう。
「仕事中はどうするんですか?」
「訓練士さんがね。邪魔をしなければ、預けてもいいって言ってくれたの。だから、本当はそこまで感謝される事でもないのよねぇ……」
「へぇ。さすが先輩。顔が広いですね〜。しかも……あの『戦場の番犬』グレン隊長とも平気でお話出来るし。怖くて私は無理無理です」
彼女はまだ一年目だ。
そう思っても仕方がないかもしれない。
――グレン隊長は別に怖い方じゃないのにな。
少し無口だけど、思いやりのある人だ。
「私は、物腰が柔らかくて優雅な騎士様がいいなぁ。早く理想の騎士様とゴールインしたい……!」
「あぁ、この前の子もそうだったわね」
「ええ!羨ましかったですよ、本当に」
騎士に憧れて、この職場に配属希望を出す女性事務員は多い。
その度に一から教え直すから大変だ。
「この職場は結構、雑用も多いから。自然とそうなるわよ。
――じゃあ、預けてくるわね」
「はい、先に事務室へ行ってますね!」
ポピーを連れて、犬の訓練場へ足を向けた。
「みんな本当の姿をまだ知らないだけよ、きっとこれから人気者になっちゃうわよ?」
嬉しそうについてくる軍用犬。
その姿が、なぜか彼を連想させたのだった。
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