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強面騎士様に嫌われていると思ったら、大型犬ごと懐かれていました  作者: しぃ太郎


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2/10

第2話 強面騎士はちょっと心配性


「無事に、合格貰って偉かったね〜、ポピー!」


 私は、駆け寄ってくるポピーの背中を撫でた。

 リードを持っていたグレン隊長にも声をかける。


「グレン隊長、よかったですね。多分、ポピーが怖がられるのは最初だけですよ。きちんと評価してくれる人は大勢います」

「……ああ。しかし、その……」

「はい?」

「……怖くないのか?」


 彼の真剣な様子に、つい笑ってしまった。


「こんなに懐いてくれるのに、怖がる必要があります?」

「いや……。それだけじゃなく、……傷跡もあるだろう」


 やけに歯切れの悪い言い方に、自分も含んでいるのかと直感する。

 彼の顔にも、傷跡がある。

 そこまで目立つ場所ではないが、怖がられる一因になっていた。


 恐ろしい別名がつけられたグレン隊長だから、きっと気にしているのだろう。


「怖くないですよ」


 もう一度、彼に丁寧に伝えた。

 ポピーの顔の、その傷跡を撫でる。


「そうか」

「ええ。……意外と心配性なんですね?」

「……!」


 グレン隊長は、一瞬、視線を泳がせた。

 そして口元に拳を当てながら、咳払いをした後に――


「……感謝する。では、また退勤時に」


 私にポピーを預けて騎士団の演習場へ向かって行った。


 後ろで会話を聞いていたのか、後輩が私から後ずさりながらポピーを指差した。


「いや、本当。……サラ先輩、大丈夫ですよね??噛みつきませんよね?」

「訓練士のお墨付きあるから大丈夫よ。それに……」


 小さくなっていく彼の背中を見ながら言った。


「勇敢で強そうなタイプほど、実は、臆病で優しいのよ。リードはちゃんと持っておくし、最初は様子見でいいわよ」


 彼女は、ポピーと私からだいぶ離れて歩いていた。

 やはりまだ怖いのだろう。


「仕事中はどうするんですか?」

「訓練士さんがね。邪魔をしなければ、預けてもいいって言ってくれたの。だから、本当はそこまで感謝される事でもないのよねぇ……」

「へぇ。さすが先輩。顔が広いですね〜。しかも……あの『戦場の番犬』グレン隊長とも平気でお話出来るし。怖くて私は無理無理です」


 彼女はまだ一年目だ。

 そう思っても仕方がないかもしれない。


 ――グレン隊長は別に怖い方じゃないのにな。

 少し無口だけど、思いやりのある人だ。


「私は、物腰が柔らかくて優雅な騎士様がいいなぁ。早く理想の騎士様とゴールインしたい……!」

「あぁ、この前の子もそうだったわね」

「ええ!羨ましかったですよ、本当に」


 騎士に憧れて、この職場に配属希望を出す女性事務員は多い。

 その度に一から教え直すから大変だ。


「この職場は結構、雑用も多いから。自然とそうなるわよ。

 ――じゃあ、預けてくるわね」

「はい、先に事務室へ行ってますね!」


 ポピーを連れて、犬の訓練場へ足を向けた。


「みんな本当の姿をまだ知らないだけよ、きっとこれから人気者になっちゃうわよ?」


 嬉しそうについてくる軍用犬。

 その姿が、なぜか彼を連想させたのだった。





 

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