第8章:美食の伝説、王国を彩る輝き
『アメリアの庭』は、開業するや否や、瞬く間に王国全土で話題をさらうこととなった。辺境の小さな村にあるにも関わらず、その評判は瞬く間に王都へと届き、秘密裏に高位の貴族や美食家たちが馬車を連ねて訪れるようになる。
料理は、アメリアが育てた奇跡のような新鮮な食材を、ルイスの卓越した技術が昇華させることで、唯一無二の存在となっていた。瑞々しいレタスで作られたサラダは、まるで宝石を散りばめたかのよう。深い甘みを持つトマトのパスタは、一口食べれば故郷の温かい情景が浮かび上がるようだった。鹿肉のローストは、野趣あふれる香りと繊細なソースが絶妙に絡み合い、食べた者の心を深く揺さぶった。どの料理も、素材本来の力を最大限に引き出し、食べた者の心と身体を癒やし、満たすものばかりだった。
「これは、奇跡の味だ……」「王都のどのレストランも、これには及ばない」「こんな美食が辺境で生まれるとは……」
客たちは口々に感動を漏らし、予約は常に数ヶ月先まで埋まるほどの人気となった。『アメリアの庭』は、辺境のグルメスポットとして、確固たる地位を築き上げていく。
レストラン経営者として、アメリアもまた大きく成長していた。かつて貴族社会で疎まれていた完璧主義は、今や『アメリアの庭』を運営する上での細やかな気配りとして活かされていた。客の要望に耳を傾け、従業員の意見を取り入れ、常に最高のサービスを追求する。かつての高慢さは跡形もなく消え去り、その眼差しには優しさと、揺るぎない自信が満ち溢れていた。グリムロック村の皆は、アメリアのことを尊敬と愛情を込めて「お嬢様」と呼んだ。彼女は、もはや辺境の村に追放された公爵令嬢ではなく、この地を豊かにする、真のリーダーへと変貌を遂げていた。
『アメリアの庭』の成功は、王都の貴族たちの耳にも届き始めた。しかし、その報告に、王国の宰相ザカリー・ブラックウッドは苛立ちを隠せないでいた。彼こそが、アメリアを陥れた真の黒幕だったからだ。ザカリーは、自らの権力拡大のためにエドワード王子を傀儡とし、邪魔なヴァレンシュタイン公爵家を失墜させるため、アメリアをスケープゴートにしたのだ。彼の計画では、アメリアは辺境で衰弱し、やがて忘れ去られるはずだった。それがまさか、このような形で名を轟かせるとは。ザカリーは、アメリアの存在を、自身の企てを脅かす危険な芽として警戒し始めた。
そして、アメリアの噂は、当然ながら王子エドワードの耳にも届いていた。「辺境の荒れ果てた土地で、信じられないほど美味しい料理を提供するレストランがある」と。彼は内心、大きな疑問を抱いていた。自分が追放したはずの公爵令嬢が、なぜ辺境でそのような成功を収めているのか。彼女は、本当にあの時告発されたような悪女だったのか? エドワードの心の中で、かつてアメリアを断罪した罪悪感が、じわじわと広がり始めていた。




