第6章:古き廃墟の息吹、新たな夢の萌芽
アメリアの農業技術と、彼女が作る料理の評判は、あっという間にグリムロック村全体に広がった。これまで瘴気のせいで作物さえ育たないと諦めていた村人たちは、アメリアの畑の豊かさを目の当たりにし、希望の光を見た。
「アメリア様、私にも手伝わせていただけませんか?」「こんなに立派な作物が育つなんて……!」「私も、種を分けて欲しいです」
自ら志願して、アメリアの畑を手伝いに来る村人が増えた。彼らは土に慣れており、鍬の扱いや作物の世話も手慣れたものだった。アメリアは彼らに惜しみなく知識を伝え、共に汗を流した。結果、村全体の作物の生産性は飛躍的に向上した。グリムロック村は、かつての瘴気に覆われた不毛の地から、みるみるうちに豊かな緑に包まれた、生命力あふれる土地へと変貌を遂げていった。
豊作は喜ばしいことだったが、新たな問題も生まれた。収穫しきれないほどの余剰作物が、村中に溢れ始めたのだ。新鮮な野菜は日持ちせず、このままではせっかくの恵みが無駄になってしまう。どうすれば、この恵みを最大限に活かせるだろうか。アメリアは思案に暮れた。
そんなアメリアに、レオンハルトがある提案をした。
「お嬢さん。あなたの屋敷は、今では村の中心だ。そこで、採れたての作物を売る小さな店を開いてはどうだろうか。余剰作物も、ここで販売できる」
レオンハルトの提案は、アメリアにとって目から鱗だった。確かに、村人たちはアメリアの料理のファンになっていたし、収穫したばかりの新鮮な野菜は、どこに出しても恥ずかしくない品質だった。アメリアはすぐに廃墟だった屋敷の一部を改装し、小さな直売店を兼ねた食堂を開いた。
最初のうちは、村人たちがお昼を食べるために集まるだけの場所だった。しかし、アメリアが提供するシンプルながらも素材の味を最大限に生かした料理が、次第に評判を呼ぶようになる。隣村の住人が、さらに隣の街からやってきた商人が、そして遠く離れた街からも、噂を聞きつけた客が秘密裏に訪れるようになったのだ。彼らは皆、アメリアの料理を口にするたびに、驚きと感動の声を上げた。
「こんな野菜、初めてだ!」「一体どこで手に入るんだ、このトマトは!」「このスープは、魂に染み渡る……」
客たちの顔には、幸福な笑顔が満ち溢れている。それを見て、アメリアの心に、ある壮大な夢が芽生えた。「この恵みを、この感動を、もっと多くの人に届けたい」――。アメリアは、この小さな直売所を、本格的な「レストラン」にしようと決意した。かつての荒れ果てた廃墟を、美食の殿堂へと再生させるのだ。それは、この辺境の地で、アメリアが自らの手で築き上げる、新しい王国にも等しい夢だった。




