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追放令嬢は辺境の廃村で美食の楽園を創る〜土と炎で紡ぐ、真の幸福レストラン〜  作者: 緋村ルナ


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番外編1:レオンハルトの静かなる誓い

 俺は、レオンハルト・ストーンウォール。グリムロック村の、若輩ながらも村長を務める者だ。この村は、何百年も前、瘴気というものに覆われて、誰も寄り付かない荒れた土地になっていた。それでも、俺たちはこの土地を愛し、細々と暮らしてきた。そんな場所に、突如として放り込まれてきたのが、あの公爵令嬢だった。


 初めて会った時の、あの女の姿は、今でも目に焼き付いている。薄汚れたドレスをまとい、空腹に顔を歪ませながら、それでも懸命に土を耕そうとしている姿。最初はただの貴族の道楽だろうと、蔑んだ目で見ていた。貴族など、信用できるか。俺たちの村が瘴気に侵され、助けを求めた時に、手を差し伸べなかった者たちと同じだ、と。


 だが、あの女は違った。泥まみれになり、血が滲んでも、ひたむきに土と向き合う姿は、俺の知っている貴族とはかけ離れていた。やがて、彼女の畑からは、奇跡のように豊かな作物が実った。その作物から溢れる生命力は、村の瘴気を少しずつ晴らしていくかのように、輝きを放っていた。俺は、彼女がこの土地にもたらす可能性を、肌で感じていた。


 最初は助言すらする気になれなかったが、俺はいつしか、あの女の畑の周りをうろつくようになっていた。水場を教えてやったり、土を柔らかくする方法をそっと教えてやったり。口では冷たく突き放しても、心が勝手に動いていた。彼女の真摯な姿に、俺の中の貴族への不信感は、少しずつ溶かされていった。


 そして、彼女が作る料理を初めて食べた時、俺は確信した。彼女は、この村に、いや、この土地に、きっと必要な存在だ。食べた者の心を震わせるような、温かい、優しい味がした。その料理を囲んで、村人たちが笑顔になっているのを見た時、俺の心は決まった。この女を守る。この村を、この土地を、彼女と共に豊かにしていく。


 彼女がレストランを建てることを決意した時、俺は迷わず全面的な協力を申し出た。資材の調達から村人との調整、王都からの妨害への対処。時には危ない橋も渡った。だが、彼女の笑顔を見れば、どんな苦労も吹き飛んだ。彼女の隣で、共に困難を乗り越えていく中で、俺の心には、これまで感じたことのない温かい感情が芽生えていった。


 それは、まさしく恋だった。最初は認めるのが怖かった。貴族のお嬢さんと、辺境の村長。身分違いだ。だが、彼女はそんなことを気にする様子もなく、俺を一人の男として見てくれているようだった。そして、彼女が苦しんでいる時、俺はただ支えたいと強く思った。


「アメリア……」


 俺の口から、彼女の名前が自然とこぼれ落ちる。あの日、王都からの勅命を辞退し、この村に残ることを選んだアメリアの瞳は、これまでのどんな時よりも輝いていた。あの瞳を見て、俺は全てを悟った。


「俺は、お前と共に生きていきたい。この土地を、お前と共に守り、お前と共に幸せになりたい」


 不器用な言葉で、俺はプロポーズした。彼女の瞳には、涙が溢れていたが、その顔には満面の笑みが浮かんでいた。彼女と結ばれること。この場所で、彼女と共に生きていくこと。それが、俺の最大の幸せだと、心からそう思った。


 俺の人生は、アメリアと出会ってから、光に満ちたものに変わった。俺はこれからも、この手でアメリアを、そして俺たちの故郷を、力強く支え続けていく。

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