第11章:暴かれた陰謀と、辺境に咲く誇り高き選択
カレンの告白は、エドワード王子にとって決定的なものだった。彼女の純粋な性格を知るエドワードは、その言葉が偽りでないことを瞬時に悟った。彼の心にあったアメリアへの疑念は完全に晴れ、代わりに宰相ザカリーへの激しい怒りと、自身が利用されていたことへの屈辱が沸き起こった。
「宰相ザカリー……必ず、真実を暴いてやる!」
王都に戻ったエドワード王子は、すぐさま宰相ザカリー・ブラックウッドへの秘密裏の調査を開始した。王子の威光と、カレンの勇気ある証言が加わり、これまで隠蔽されてきたザカリーの悪行が次々と暴かれていく。彼の巧みな権力掌握の企て、王子の影響力を削ぐためのヴァレンシュタイン公爵家の失墜計画、そしてアメリアをスケープゴートにした全ての陰謀が、白日の下に晒された。ザカリーがこれまでいかに多くの貴族や商人を欺き、国を蝕んできたのか、その全貌が明らかになったのだ。
国王は、その報告に激怒した。ザカリーは即刻捕縛され、公の場で罪を裁かれることになった。聖女カレンは、自身の役割として、アメリアを陥れた真実の全てを、国民の前で勇気を出して証言した。
「アメリア・フォン・ヴァレンシュタイン様の無実は、完全に証明されました。よって、公爵令嬢の地位を回復し、王都への帰還を命じる」
国王の勅命が、グリムロック村に届けられた。アメリアの潔白は証明されたのだ。これで、あの華やかな王都へ、かつての公爵令嬢として戻ることができる。多くの者が、その報せに喜びに沸くだろうと想像した。しかし――。
「国王陛下には、心より感謝申し上げます。ですが、私はこの勅命を辞退させていただきます」
アメリアの返答に、勅使も、そしてその場にいたレオンハルトや村人たちも、驚きを隠せなかった。
「お嬢様……?」
レオンハルトが不安げにアメリアの名を呼んだ。アメリアは、そのレオンハルトの瞳を見つめ、優しく微笑んだ。
「王都での貴族社会に、もはや何の未練もございません。私が本当に生きたい場所は、このグリムロック村でございます」
アメリアは、国王の勅使に向けて、はっきりと、しかし揺るぎない声で続けた。
「ここで、レオンハルト様や村人たちと共に、この土地を豊かな大地に変え、美味しい作物を育て、そして『アメリアの庭』で人々に笑顔を届けること。それが、今の私の真の望みでございます」
追放された当初は、王都への復讐心も、理不尽さへの憤りも確かにあった。しかし、土にまみれ、作物を育て、人々と心を通わせる中で、アメリアは本当の幸福とは何かを知ったのだ。それは、虚飾に満ちた王都の社交界では決して得られない、土と、汗と、笑顔から生まれる真の豊かさだった。アメリアの心は、もう王都にはなかった。彼女の未来は、このグリムロックの、温かい土の中にあった。




