幼馴染との再会
昼休み、購買へ向かう廊下で、その声は聞こえた。
「れんくん?」
振り返ると、朝に視線を感じた女の子が立っていた。髪は肩まで、瞳は少し茶色がかっていて、どこか優しい雰囲気を纏っている。制服も丁寧に着こなしていて、清楚な印象だった。
「……もしかして、月島?」
記憶の糸が繋がった。小学校の頃、よく一緒に遊んだ幼馴染。引っ越しで離れてから、もう何年も会っていなかった。あの頃は男の子みたいに走り回っていた女の子が、こんなに綺麗になっているなんて。
「やっぱり! れんくんだ!」
彼女――月島詩織は、ぱっと花が咲いたような笑顔を見せた。懐かしい、あの頃と変わらない笑顔だった。
【名前】:月島 詩織
【年齢】:17
【表情】:喜び(本心)
【好感度】:+48
【心の声】:「ずっと会いたかった……でも、覚えててくれて嬉しい」
……好感度、高くない?
鑑定の数値に少し戸惑いながら、俺は自然に笑みを返した。
「詩織も、この高校だったんだな。すっかり大人っぽくなって」
「そ、そうかな? れんくんは……うん、背も高くなったね」
頬を赤らめながら、詩織は視線を少しそらした。その仕草が妙に可愛くて、俺も照れくさくなる。
「あの、入学式の日、事故にあったって聞いて……大丈夫だった?」
「ああ、全然平気。むしろ良い思い出になったよ」
「もう、笑い事じゃないよ? 心配したんだから」
詩織は少し怒ったような顔をしたけれど、その目は優しかった。
懐かしい温かさ。前世では感じることのできなかった、純粋な人の想い。
「そういえば、れんくんのお家、まだ会社やってるの?」
「ああ、相変わらずだよ。詩織は?」
「うちも元気。お母さん、れんくんのこと時々話してるよ」
他愛もない会話。でも、それがとても心地よかった。
「また、前みたいに……友達になれるかな?」
詩織の言葉に、俺は迷わず頷いた。
「もちろん。これからよろしくな、詩織」
春の陽射しが、廊下に優しく差し込んでいた。
新しい高校生活に、大切な人が加わった瞬間だった。