最初の仲間
「おーっ、おまえが“事故で伝説になった男”か? 天城蓮くんだっけ?」
にやけた表情で近づいてきたのは、黒髪を無造作に束ねた男子だった。制服のネクタイはゆるく、第一ボタンも外れている。だけど不思議と清潔感があって、目の奥がやけにまっすぐだった。
「……ああ、俺がその“伝説”です」
冗談っぽく返すと、彼は声をあげて笑った。
「やっぱ面白いやつだな。俺、早坂悠真。おまえの隣の席」
……なんとなく、この出会いは長く続きそうな気がした。
自然と鑑定の目が起動する。
【名前】:早坂 悠真
【年齢】:17
【表情】:興味(本心)
【好感度】:+12
【心の声】:「このクラス、固いやつ多すぎ。こいつなら話せそうだな」
……悪くない。どころか、けっこう“当たり”かもしれない。
「おう、よろしくな。事故の後遺症とか、ないんだろ?」
「ああ、大丈夫。頭のネジは元から緩んでるしな」
「ハハ、そいつは頼もしい」
早坂は笑いながら、俺の肩を軽く叩いた。その手の感触は、どこか懐かしくて温かかった。
担任が入ってきて、朝のHRが始まる。紹介は簡単に済まされ、俺は空いていた窓際の席――つまり、早坂の隣へと案内された。
その瞬間、もう一つの気配に気づいた。
窓側の前列、髪を耳にかけた女の子が、こちらをじっと見ている。
目が合った。
一瞬、その瞳に揺れる何かを感じた――懐かしさ? いや、まだ思い出せない。
彼女の名前はまだ知らない。だけど、なぜだか胸の奥が、少しだけざわついた。