迫る影、試される力
月曜の朝。事務所に届いた一通のメールが、空気を変えた。
「……コンペの運営から通達が来た。事前の進捗確認に、“中間評価”が組み込まれることになったらしい」
父の声が硬い。
会議室にいた俺と早坂、光、美月の顔にも緊張が走った。
「え、それってどういう……?」
「プレゼン前に、チームの進捗・方向性・構成内容を、商店会の担当者と中間審査員に見せて判断される。
見込みがないと判断されたら、その時点で失格。企画提出のチャンスすら与えられない」
重い沈黙が流れた。
父が、資料の束を机に置きながら続ける。
「正直、社内としては“若い目”に賭けている。
けれど、商店会の中には“経験の浅いチームに任せるのは不安”という声もある。
君たちが所属している天城企画はプロだが――若手主体の構成に対して、警戒されているのが現実だ」
「クロス・リンク側、先に動いてるな」
早坂が低く呟く。
俺はスマホを操作して、地元特化型の口コミアプリを開く。
地元掲示板の投稿には、こんな文面があった。
『学生チームで作るって本当?』
『失敗したら誰が責任取るの?』
『地元のイベントに“実験”はやめてほしい』
名指しではない。だが、あきらかに俺たちを指している。
「これ、わざとだよな……」
「内容的に、おそらく関係者だろうな。会合か内部LINEで話が出て、それを“外部の声”に偽装して流してる」
「……本気で潰しにきてる」
光が、資料の端を強く握る。
「プレゼンまで、あと五日。ここが“本当の勝負”だな」
俺はホワイトボードに「残り5日」と書き込んだ。
───《状況解析:クロス・リンク》────
動向:商店会幹部への接触/口コミサイトでの印象操作
狙い:若手チームの信頼低下 → 審査段階から外す
対策:提案内容の完成度+“姿勢”と“誠意”の伝達が鍵
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「やってやろうぜ」
早坂の声に、全員が頷いた。
これは、“俺たち”の存在を賭けた試練だった。
勝たなきゃ、次はない。




