動き出す現実、胸のざわめき
週の中頃、事務所に一通のメールが届いた。
件名は「地域連携ポスター企画、コンペ形式実施のお知らせ」。
「……コンペ?」
父がメールを読み上げながら、思わず顔をしかめる。
「今度のポスター案件、商店会の主催が急に変わって、正式に“提案型”になったらしい」
「それって……」
「いわゆるコンペだ。複数の会社や団体が案を出して、採用されるかどうかが決まる」
「そっちの方が燃えるな」
俺が笑うと、父は苦笑いで返す。
「でも相手がちょっとな……」
父が画面を回してくる。
そこに書かれていた参加企業の一つ――
『クロス・リンク合同会社』
その名前を見た瞬間、背筋に冷たいものが走った。
──あの時と、同じ感覚。
「蓮、どうした?」
「……なんでもない。ちょっと、見覚えがあって」
口ではそう言いながら、心の中ではざわつきが止まらなかった。
『クロス・リンク』。表向きは地方の広告支援会社だが――
【鑑定 起動】
───《鑑定結果》────
団体名:クロス・リンク合同会社
代表者名:黒澤 蓮司
業務内容:若手支援・地域起業コンサル事業
外部評価:広告表彰歴あり/SNS戦略で急成長
裏の素性:前世で蓮を裏切り死に至らせた人物と極めて一致する特徴を持つ
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心臓がひときわ強く脈打った。
まさか、こんなにも早く……“あの男”と再び交わることになるなんて。
俺は、机の縁をぎゅっと握りしめた。
“信じていた者に、背中を刺された記憶。”
“今度こそ、守ると決めた仲間たち。”
「……面白くなってきたじゃん」
俺はそう呟いて、口元をわずかに引き締めた。
このコンペ、絶対に負けるわけにはいかない。




