信じるしかないという罠
夕食後、リビングに残っていた父と母が何やら真剣に話していた。テレビはついているが、誰も見ていない。
「……鷲尾さんの言ってた新しいプラン、どう思う?」
母の声が、静かに響いた。
「正直、魅力的だった。助成金もほぼ通る見込みらしいし、広告費の前払いも……ただ、少し引っかかる部分がある」
父の顔には迷いが浮かんでいた。
普段は頑固で自信に満ちているあの父が、こんな表情を見せるのは珍しい。
> 【名前】:天城 浩一
> 【年齢】:47
> 【表情】:迷い(本心)
> 【心の声】:「でも断ったら、もう後がないかもしれない……」
俺は隣の部屋のドア越しに、そっと鑑定を起動した。
母にも同じように不安がにじんでいた。
> 【名前】:天城 美奈
> 【年齢】:45
> 【表情】:不安(本心)
> 【心の声】:「浩一が判断を誤らないように……信じるしかないわ」
……両親も、決して無警戒ではない。むしろ、崖っぷちだからこそ「信じるしかない」状態になってるんだ。
このままじゃ、本当に押し切られる。
俺は深く息を吐いて、自分の部屋に戻った。
ノートを開き、現時点で掴んでいる情報を整理する。
・偽造の可能性がある契約文言
・実績のないコンサル名義
・SNSに過去のトラブルらしき書き込みあり(早坂調べ)
・「権限委譲」の仕掛け――
「あと一歩。あと一つ決定的な証拠があれば……!」
俺はスマホを握りしめた。
この手で、必ず家族を守ってみせる。




