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やけくそテイマー、勇者御一行をテイムする   作者: 成若小意


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8/10

8

「さあ、気を取り直して出発しましょう!」


 一人元気なレベッカの後ろを勇者御一行はトボトボついていく。先ほどの爆炎が目に焼き付いて離れないのだろう、若干レベッカにおびえているようで、距離が開いている。


 さすがのアデルも若干元気がない。


「なあ、ダフ。お前何かいい案はないのか?」


「……あるにはある」


「え! あるの? それなら早く教えなさいよ」


 ダフの発言に少し元気を取り戻したリアナはダフの腕を引っ張って催促するが、ダフはレベッカの様子を慎重に観察して、しばらくは口を開かなかった。


 メリッサも、少し離れて歩きながら密談する三人を心配そうに見つめる。その心配は仲間に向けられたものなのか、それとも親しくなりつつあるレベッカに向けられたものなのか。


 少ししてから、声をひそめてダフが話し出す。


「まず、俺たちが上級にならなければいい。そもそも今日中になんてかなり難易度が高い話だ。連携がうまくいっていようが、奇跡的にレア魔獣をうまく倒せでもしない限り、そうやすやすとレベルアップなどしないだろ」


「そういえばそうだな。奴の行動に流されていたけど、普通に考えりゃ今日中に昇給なんて、魔女の石でも持ってこなけりゃ無理だ」


 アデルは腕を組んでうんうんうなずいていたせいで、先にさっさと進んでいく仲間に置いて行かれそうになり、慌てて追いかける。


「もう一つの方法は」


 何とかダフがしゃべる前に追いついたアデルが、「もう一つの方法は?」と繰り返すと、ダフは何でもない風にこう言った。


「うまく裏切る」





「あの、レベッカさん! このままいくと今日中に上級者になるのは難しいと思うんです」


 ピリピリした空気にいたたまれなくなったメリッサは、先を歩くレベッカの横へ駆け寄り、背の高いレベッカをみあげて精一杯声を張り上げる。もはや憧れの先生に話しかける生徒のようだ。


「ああ、そうね。普通にやってたら難しいわ。でも、秘密の手段があるのよ!」


「秘密の手段? ……そういえば、私たちはどこへ向かっているのですか?」


 ふと四人が気が付く。あたりの風景が一般的なフィールドのそれとは違ってきていることに。


 向かっていく道の先に広がるのは、瘴気が目に見えて立ち込める密林。


「あの、ここは禁猟エリアでは」


 メリッサがこわごわとレベッカを見上げる。


「そうよ! でも、猟をしなければいいのよ」


 レベッカと勇者御一行が向かっていた先にあったのは、ギルドが指定する禁猟エリアだ。フィールドには多種多様な地形があるが、死亡率が高いエリアや狩り取った獲物の素材の加工自体が、毒などでリスクが高い場合に指定される。


 レベッカとは少し離れた位置だが、その声はアデルたちのところにも届いていた。


「え、ホントにここにはいるの!?」


「猟をしなければって……ハント目的ではないのに、こんな見るからに危険そうな場所に入っていく意味なんかあるか?」


 顔を見合わせたアデルたちに答えるかのように、レベッカは優雅に密林を手で示す。


「ここを通れば、魔女の石にすぐたどり着くの!」



 光がほぼ通らないほど密生した植物。かすかに、だがあちこちから聞こえてくる魔獣たちの唸り声。時折肌に張り付くよく分からない植物。


 勇者御一行が無言で歩くのと対照的に、レベッカは鼻歌を歌いながらご近所を散歩するかのように歩いていた。さすがの勇者たちもここでレベッカと離れては命の危機だと本能的に察し、距離を置かずに歩く。


「私は昔から人付き合いが苦手だったの。だからここにきてよく魔獣ちゃんたちと遊んで癒されていたのよ。ここはとても居心地がよくって。緑があふれているし、静かだし、モフモフがたくさん出迎えてくれるの!」


 ご機嫌なレベッカは身の上話を始めていた。顔色を失っているアデルたちが返事をせずとも話は止まらない。


 禁猟エリアの危険度は認識していたつもりだが、頭で考えるのと肌で感じるのとでは、その命に迫る緊迫感がはるかに異なる。


 そして、そんな場所でも自然体でいるレベッカの異様さも。


「そんな場所をウロウロしていた時に見つけたのよ。魔女の石の情報は公開されてたわよね? 正規ルートは山の向こうからぐるっと迂回するでしょ? でも、こちらからだとすぐにたどり着くの」


 常人の理解を超えた思い出話が延々と続いていた。だがその話には最初の話とのつながりがあるのだと徐々に気付いた四人は、レベッカの顔を見、ついでレベッカが指さすほうへ顔を向ける


「ほら!」


 とレベッカが示した先には、先ほどまでのうっそうとした木々の光景とは全く異なり、開けた空間に光が差し込んでいた。


 彼らがいる場所からはかなり高低差があり、唐突に大穴が空いたような地形になっていた。そこへどこか化から流れ込んだ水が滝となり、その滝の水しぶきが光を反射して、この空間の神秘的な魅力をさらに彩っていた。


 そして、目の前の岩の、ちょうど舞台のように張り出した場所には、キラキラと輝く宝玉が。


「魔女の石……本当にたどり着いちゃった」


 本来なら冒険者たちが飛び上がって喜ぶようなこの瞬間。能天気なレベッカ以外、青い顔を通りこして土気色をしていた。


 あっけなく目の前に現れた伝説の宝玉。あまりにも想定外の展開に、底知れぬ不安を感じてしまったのだ。


 その中でダフだけが何とか口を開く。


「……第二案でいくぞ」

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