7
「いいか。いったん状況を整理しよう」
レベッカが黒狼の餌やりとやらに行っている間に、勇者御一行は作戦会議をすることにした。
「ここまでなし崩しに、言われるがままついてきたが、あの女をこのままテイマーにしてはいけないというのはここの全員賛成なはずだ」
「でも、レベッカさんって別に悪い人ではない気がするのですが……」
最後のほうは尻すぼみになってしまったが、精一杯レベッカを庇うメリッサ。
それを聞いてアデルは眉をひそめる。
「悪人ではないが、善悪の基準がずれているんだよ。そもそも倫理的に人をテイムするだなんて認められているのか? 法律はどうなっているんだ」
「そうよね。違法なんじゃないの?」
リアナがアデルの横にくっついて小首をかしげる。それに対してメリッサが爪をいじりながら必死で言葉を紡ぐ。
「ヒーラーの資格を取るときに、この国の法律も学びました。その中にはテイムする対象に関する法律はなかったかと……」
「専門に学んだわけではないんだろ?」
「いや、俺もメリッサと同意見だ。金稼ぎの手段になるかと思って法律をかじったことがあるんだ。テイマーの項目は緩い内容が多かったと記憶してる。テイマーとやらは根が純粋な奴らが多いだろ? だからかと思って割とよく覚えている」
メリッサの言葉に食ってかかるアデルだが、意外なことにダフが加勢してきた。
「そうよ! テイマーって普通もっとホワンとしていて、動物とかに優しい奴らばかりだったわよ」
「レ、レベッカさんもフワッとしてて優しいです……」
「魔獣に対する優しさはあるだろうよ。問題はそこだ。あいつの基準で魔獣のほうが上、俺ら人間様は下なんだ」
「それで? どうするの? レベッカは違法ではないけど倫理に悖る行為をしてますっていう路線でギルドマスターに訴えてみる? 今の拠点のギルマスは人格者だって評判よ。訴えてみる価値はあるかも」
リアナが立ち上がって主張する。
「……そうだな。それも手段の一つにとっておこう。だが、ギルドについてあいつがテイマーになるための申請をするのと、こちらがギルマスに会って訴えるのでは時間が読めない。そもそも行動制限をされているわけだから、自由に動けるとも限らない。ギルド本部に着く前にあいつをあきらめさせるか、それともテイムを解消するか」
「そうよ! テイムを解消させればいいのよ。なんでこんな単純なことに気が付かなかったのかしら」
リアナの同意を得られていつもの調子が戻ってきたのか、アデルは立ち上がって演説を始める。
「そもそも前提がおかしい。テイムとは強者が弱者を従える技だ。テイマーは相手が自分より下の存在であると認め、テイムされる側は相手が自分より上の存在であると相互認識して初めて術が完成する。俺たちは中級とはいえあと一歩で上級の冒険者だ。つまり中の上だぞ! しかも4人もいる。何かのからくりがあるはずだ。実力でいえば問題ないはずなんだ。みんなで倒そう、レ」
そのアデルの演説が終わるか終わらないかの瞬間に、アデルの後方から轟音とともに爆風が。
髪がひっくり返り吹き飛ばされたアデルの後ろでは数本の木がなぎ倒され、不自然にできた空き地から、黒煙を背に平然とした顔のレベッカがやってきた。
「クロちゃんのご飯を追いかけていたらまた燃やしすぎてしまいました……。加減って難しいですね」
見たことのない破壊を繰り広げたレベッカを前にして、勇者御一行は並んで正座し、先ほどの作戦を頭から消去するのであった。




