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やけくそテイマー、勇者御一行をテイムする   作者: 成若小意


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5/10

5

「では、今回の配置を説明します」


「何を勝手なことを。俺の作戦に何の問題があるっていうんだ。さっきの戦闘も問題なかっただろ」


「説明しなくても強制できるみたいだけど、どうします?」


 アデルが反論するが、レベッカの一言でみんなブンブンと音が鳴りそうなほど首を振る。


「まず、最前衛はリアナ。物理的攻撃はダフね。メリッサちゃんは私といましょう」


 これには、リアナから「そんなの無理よ!」と悲鳴が上がる。ダフも難しい顔をして腕を組んでいる。メリッサはほっとしつつも微妙な表情で「レベッカの隣……」とつぶやいている。


 一番戸惑っているのはアデルだ。


「そんな無茶苦茶な配置、できるわけないだろう。リアナは弓使いだ。後方支援が定石だぞ。それに主戦力の俺はどうするんだ」


「アデルは後衛。取りこぼしを退治する役ね」


「な……、俺が、後始末要員だと」


 呆然とするアデルを放置して、戦闘が始まる。



「まずはリアナ。あの魔獣のいる洞窟をよく見て。ボスは奥のほうにいるけれど、こちらを観察するために、絶対こちらが見える位置にいる。つまり、逆を返すとこちらからも見える位置にいるのよ。そこを正確に射って」


「そんな難しいこと、できないわよ!」


「大丈夫。あなたにならできる」


 最初は不審に思っていたレベッカのことだったが、なんだか親が諭してくれるような安心感を感じるリアナ。反抗的な気持ちもなぜかほどけてきて、自分にはできるという気がしてきた。


 後ろには一応指示通りに待機するダフとメリッサもいる。黙って成り行きを見守る二人と違っていつまでも文句を言っている勇者はいったんレベッカに黙らされていた。


 深呼吸をし、弓を構える。日ごろ獲物(恋愛の)を見つめる真剣なまなざしが、今はハントに生かされている。


 矢から指が離れた瞬間、矢は吸い込まれるように洞穴の中を通り抜け、コーン……という音を響かせた。


 一瞬の静寂の後、小さな蝙蝠型魔獣が洞穴から湧き出す。しかし、いつものような統率が取れていない。


「ボスを無事倒せたようね。これで無駄な戦闘は減るわ。小さいのはきっと逃げていくから、混乱して襲い掛かってきた奴だけ倒しなさい」


 ダフに向かってそう指示を出すレベッカ。



 レベッカの言う通り、狂乱状態の魔獣のほとんどは散りじりに逃げていく。そして、よくわからないまま運悪く一行の目の前に来てしまった魔獣を、ダフが手斧を振り回して退治し、上空から襲ってくるものはリアナが弓矢で撃ち落とす。


 アデルはおまけのように後ろで黙々とこぼれた敵を退治していた。



 そして戦闘は、あっけなく終わる。


「びっくりしました」


 少し離れた場所で戦闘を見ていたメリッサが、集まってきた仲間に珍しく話しかける。戦闘後は大小の怪我をメリッサに治癒してもらうのが流れになっているようだ。


 一言こぼしたあとは黙々と治癒をしていたが、「怪我が……ほとんどない」と、いつもより早く終わった作業のあとに呟く。


「そうね。なんか、連携がうまく取れていたような、言葉を発さなくてもコミュニケーションが取れていた気がするわね。弓を向ける方向も、みんなを見てなくてもわかったのよ」


「ボスがいなかったってのもあるが、それにしてもあっけなかったな」


 リアナとダフがやや興奮気味で話す。


「そうね。これがテイムのメリットみたい。テイマーは特性を見抜いて適材適所に置くだけじゃなく、基礎力向上や、連携補助ができるみたいね」


 戦闘の様子やみんなの意見を聞いて、レベッカは手帳に追記しているようだ。


「だから、アデルの声掛けがなくてもなんとかなったのね!」


「まあもともと、アデルの発言は指示じゃないのも多かったからな」


「ところでアデル、今日はとても静かだったわね。指示を出されるのも快適だったのかしら?」


 リアナとダフが好き勝手に言い、メリッサはウンウンと頷いていたが、思い出したかのように三人してアデルの方に振り返った。


 その言葉に、目を見開いて大げさに手を振りまわすアデル。何かを訴えているようだ。


「あ、アデルの口、まだ封印したままだったわ」


 黒狼が、ツッコミをいれるようにアオーンと鳴いた。


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