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「さあ、着きましたよ。皆さん、まずはいつも通りの戦いを始めてください」
そう言ってレベッカが連れてきたのは、中級者向けの魔獣の住処。
「クソ、訳が分からないがとにかくやるしかない。これも俺のような人間に降りかかる運命というやつだ。みんな、行くぞ!」
何だかんだいいながら物分かりのいい勇者がメンバーに指示を出す。
「まずはダフ。いつも通り突撃から始めるぞ。メリッサは後ろで控えていろ。リアナ、弓の援護頼む!」
アデルの身振りが大げさすぎて逆にわかりにくいが、メンバーは慣れた配置らしく、すぐに定位置につく。タンクのダフが先頭。続くのはアデルで、少し後方から弓のリアナ。メリッサは戦闘には加わらず、後方で待機。ひし形に近い平行四辺形のフォーメーションだ。
雄叫びと共にダフが巨大な盾を持って突撃。
「ダフにとって盾は防具ではなく武器のなのかしら」
レベッカはメリッサの隣でブツブツ呟きながらメモを取る。
硬い巣穴の土壁を壊され、中からコウモリのような魔獣が出てくる。それをダフが背中に背負ったハンマーを取り出して手当たり次第潰していく。
「くそ。数が多い!」
ダフの横をすり抜けてきた魔獣に攻撃を受けながらも、着実に切り落としていくアデル。
「動きは悪くないわね。キレがあるわ。でも、何かしら。無駄な動きが多い気がする……」
攻撃をするのも、攻撃を受けるのも、いちいち動きが大きい。そのせいでアデルを飛び越えていく魔獣がかなりいる。
それを必死で撃ち落とすリアナ。
ちなみにメリッサはとっくに姿の見えないところまで撤退して隠れている。
矢も尽きてとうとう短剣での戦いを余儀なくされたリアナは、一瞬防御が遅れて魔獣の攻撃をモロに受けてしまう。
「きゃあ!」
その叫び声を聞いて、アデルが振り向く。
「リアナ! 大丈夫か!? 今助けに行くからな」
アデルは必死の形相で後退して、リアナのところに戻っていく。
「リアナ! 俺が来たからもう大丈夫だ。安心しろ」
「……アデル! そんな、私のために傷を負ってまで戻ってきてくれたのね」
敵の最中、手を取り合って見つめる2人。
「ここで寸劇が始まってる、のかしら」
そんな二人を邪魔するものが平穏な眠りを邪魔された魔獣。おそらくボスなのであろう、ひときわ大きなコウモリが、二人の上空を舞う。
「クソ。ここまできたってのに、ついてない。こんな見たこともない魔獣を呼び寄せちまうなんて、やはり主人公補正というやつなのか。……アレを使うときがきたんだな」
そう言い、ゆらりと立ち上がるアデル。
「アデルは魔獣の知識があまりない、と」
メモに追加するレベッカ。
「アデル……!」
巨大な敵に立ち向かうアデルの手にすがりつくリアナ。
「必殺奥義、龍神の舞うこの太刀をうけ……」
「おう、悪い。ちょっとそこどいてろ」
アデルが必殺技名を言い切る前に、どこから取り出したのか今度は巨大な手斧でもって魔獣のボスをダフが斬り倒す。
「ダフは、身体に傷もほとんど負っていない。スタミナもさることながら、手数の多さも戦闘センスも長けていそうね。なんでこのチームにいるのかしら」
そんなレベッカのつぶやきとともに、戦闘は終わる。
「ひとまず、辛勝ね」
「なにを! 誰も欠けず、準備もろくにしないままでもボスを倒したではないか。これのどこが辛勝なんだ」
あたりを指示して反論するアデルに見向きもせず、レベッカは手元の手帳を見つめて顎をこする。
「う〜ん。口で説明するよりも実戦のほうが早いわ。次のフィールドへ向かうわよ」
「何を言っている! 一日に二カ所だなんて無茶だ」
「そうよ!」
戻ってきたメリッサに傷を治してもらいながら訴えるアデルとリアナは涙目だ。
後ろで腕組みをして成り行きを見守るダフと上目遣いで様子をうかがうメリッサ。
「そう言われましても……。あなたたちには上級になってもらわなくては困るのです」
「上級にだって、近いうちになる予定だ!」
しかし、レベッカの次の言葉に皆黙ってしまった。
「近いうち? いえ、今日中よ」




