なぜ?
僕は、碌な人ではなかった。
碌な人ではないと言っても、人を殺したとかそんなことをしたわけではない。遅刻をしたり提出物を出さないなどだ。しかし、それに加え僕はよく嘘をついた。
いつからそうなったかは覚えていないが、小学生の頃には既に”自分を守るための嘘”を考えるのが当たり前になっていた。
怒られるようなミスをしたとき、まずバレないようにどうすればいいか、追求されたらどう嘘をついて回避すればいいか。そればかり考えることが上手くなっていった。友達や教師、両親にも、自分が悪く捉えられないように、自分は悪くないよと、しょうがないねと、思ってもらうために。
嘘をつく事への罪悪感など無かった。だって、怒られて失望されることのほうが苦しかったから。
自分で原因を作っているくせにおかしな話だよね。
大学生の時、寝坊してもう2限目も間に合わない様な時間に起き、母にはいかにも間に合ってますよ、遅刻じゃないですよ、という顔をして「いってきま〜す!」といい、カフェなどに行き時間を潰して帰る、ということを何回もしていた。その度に自分は何をしているのか、頑張ると言って入らせてもらったのにこのざまはなにか、と自分を責め立てた。そんなことを思っていたはずなのに、なのにまたやってしまう。
あのときもそうだった。
「行ってきます。」
そう言って向かうのは、いつものカフェ。母にはいつも道理また、嘘をつく。もう今日は大学に行く気がないのに。
カフェで2時間程時間を潰し、もう少し時間を潰すためおばあちゃんの家へ向かおうと思いカフェを出る。
その道中また自己嫌悪に陥る。
あぁ、またやってしまった。
こんなことを考えてもどうせまたやるんだから意味もないのに、もういっそ死んでしまいたい。
大学を辞めるにも、辞めて何をする?何も思いつかないくせに。
頑張ると信じてくれている両親はどうなる、また裏切るのか。
そんな意味もないことを頭の中でグルグルと考えていると、突然後頭部に強い衝撃を受けた。何が起こったか分からないまま前に倒れ、次は背中に衝撃が来た。その後も、色々な所に何回も衝撃が来る。僕はぼやけた思考で、あぁ、死ぬんだ、と悟った。
母さん、父さん迷惑かけてごめんなさい。死に逃げることを許してください。でも、コレで楽になれます。さようなら。
ん?何だろう、眩しい。病院か?というか、瞼が開かない。あ、手は動く。何か騒がしいな。
あの~、すみませ〜ん!
「ぉんぎゃぁぁぁぁぁぁあ!!」
え…?まさか…?
…、あ〜〜!
「ぁ゙ぁ゙ああぁぁぁぁ!」
……、あぁ、神よ何故ですか?どうしてですか?それも、記憶までも継がせて。僕はもう終わりでいいのです。僕には無意味で無気力な生き方しか出来ないのです。存在するならば僕の人生を見ていたでしょう?そんな僕を、
――――なぜ、転生などさせたのですか?